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落雷・突風

第11回  冬の竜巻

執筆者

小林 文明
防衛大学校地球海洋学科教授 理学博士
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冬季、日本海沿岸は竜巻多発地帯!?

本コラム第9回「台風と竜巻の関係」(*1)、第10回「夜の竜巻」(*2)と説明してきましたが、今回は「冬の竜巻」です。雪国に住んでいない人も無縁の話ではありません。その実態と対処法について取り上げます。

日本における竜巻の発生原因は、温帯低気圧(寒冷前線を含む)・台風・冬型・梅雨前線など(*3)さまざまであり、冬の期間にも竜巻が発生することが特徴といえます。2007年から2013年までの竜巻データベースを基に、その発生時期、場所を示したのが【図1】です。暖候期(4~9月)と寒候期(10~3月)に分けると、寒候期に報告された竜巻は53%と過半数を超えるのです。寒候期の竜巻のうち、約8割は海上で発生したものです。すなわち、冬の竜巻の多くが日本海上で発生しています。冬季に報告された竜巻の発生原因は、約半数が西高東低の冬型気圧配置で発生し、約4割が低気圧に伴っています。

発達した低気圧と寒気の南下が要注意

これまでに、千葉県茂原市で発生した竜巻(1990年12月11日)、山形県酒田市で発生した竜巻(2005年12月25日)、北海道佐呂間町で発生した竜巻(2006年11月7日)など、冬季に発生して甚大な被害をもたらした事例があります。これらの竜巻は、発達した低気圧の通過に伴って発生しています。南岸低気圧など日本付近で急速に発達する低気圧(爆弾低気圧)(*4)は竜巻を生みやすく、日本全国どこでも竜巻が発生する可能性があります。

一方、気団変質(寒冷乾燥したシベリア気団が日本海上で水蒸気の供給を受けて雲が発生し日本海沿岸で大量の雪が降る)による日本海上の雪雲に伴っても竜巻は発生します。寒気の南下時に北陸の海岸線で観測された竜巻を例に見ると、雲底高度は500m程度と、夏に比べて低く垂れこめた灰色の雪雲の中で発生していることが分かります【写真1】。ただ、冬季でも、雲底の親雲(壁雲)とそこから地上に達した漏斗雲が確認でき、しっかりとした竜巻の構造を有しています。

このように、西高東低の気圧配置で卓越する一様な季節風下で、断続的に上陸する雪雲に伴う竜巻がしばしば観測されます。さらに、日本海上で形成される直径数10kmの小規模な渦(メソ低気圧、小低気圧などと呼ばれる)に伴っても竜巻は発生します。1991年12月11日19時過ぎに、金沢市内で発生した竜巻は、200棟を超える住家被害を生じ、少なくともフジタスケール(*5)でF2(風速50~69m/s)以上の強い竜巻でした。

スノーバーストとは

冬季、日本海沿岸では北西季節風下で断続的な降雪雲の通過に伴い突風が観測されますが、その原因は雪雲からの下降流です【写真2】。雪雲からのダウンバースト(*6)は、スノーバースト(Snowburst)と呼ばれています。降雪雲は、夏季の積乱雲に比べて水平・鉛直スケールとも小さいものの、日本海上の降雪雲は海岸線で急速に発達して、上陸時に降雪をもたらします。この時、紡錘形の雪霰(ゆきあられ)を伴い、霰による下降流強化がスノーバーストの成因と考えられています。スノーバーストは地表面で地吹雪を起こし、交通障害や航空機の離着陸に影響を及ぼします。

平均風速で10~20m/sの季節風が卓越し、断続的に降雪が繰り返される冬の嵐の中で、竜巻やスノーバーストを見出すことは容易ではありません。近年、ドップラーレーダーによる観測が実施されるようになり、日本海上で直径数kmの渦が捉えられ、竜巻との関係が議論されています。このような渦は予想以上に多く発生していることが分かり、今後研究が進めば、もしかすると冬の日本海上では数100個の竜巻や竜巻的な渦の発生が判明するかもしれません。

冬の竜巻から身を守る

冬季に報告された竜巻の大部分は、西高東低の冬型気圧配置や低気圧に伴っていますから、天気予報で「-36℃以下の第1級寒気の南下」、とか「低気圧が急速に発達」などのキーワードに気をつけることが第1に挙げられます【図2】。さらに、夏季の夕立と違って、気象状況が長続きするということが次の注意点です。冬季、日本周辺では低気圧の通過・発達 → 寒気の南下 → 冬型の持続というパターンが、数日から1週間程度繰り返されます。つまり、竜巻だけでなく、暴風雨雪、冬の雷(*7)、豪雪などのリスクが続くわけです。強い冬型時には寒気は太平洋側にまで流れ込み、日本海上だけでなく太平洋上でも筋状の雪雲が形成され、竜巻が発生しています。夏だけでなく冬季も、十分な雪・風・雷対策が必要といえます。

(*1)第9回「台風と竜巻の関係」/小林文明
(*2)第10回「夜の竜巻」/小林文明
(*3)みんなのQ&A落雷・突風「2012年5月につくば市で発生したような竜巻は、日本のどこでも発生するのでしょうか?」図3/小林文明
(*4)みんなのQ&A落雷・突風「今春、日本列島を襲った爆弾低気圧。通常の低気圧と何がどう違うの?」/小林文明
(*5)第1回「日本中どこでも起こりうる竜巻の怖さ」表1/小林文明
(*6)第2回「すさまじい下降流、ダウンバースト」/小林文明
(*7)第4回「夏の雷、冬の雷」/小林文明

(2015年1月30日 更新)