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地震全般・各地の地震活動

第11回  2014年11月長野県北部の地震

執筆者

平田 直
東京大学地震研究所教授、地震研究所地震予知研究センター長
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久しぶりの強い揺れが長野県を襲う

2014年11月22日22時8分に、長野県の長野市、北安曇郡小谷村(おたりむら)、上水内郡小川村で震度6弱、北安曇郡白馬村、上水内郡信濃町で震度5強が観測される地震が発生し、中部地方を中心に、東北地方から中国地方の一部にかけて、広い範囲で震度5弱から1になりました(*1)。東京都内でも震度2となり、ゆっくりとした揺れが感じられました。2011年3月の東北地方太平洋沖地震(東日本大震災を起こした地震)以降、最大震度が6弱を超える地震は11回発生していますが、2011年5月以降では、2013年4月13日の淡路島付近の地震と、この「長野県北部の地震」の二つだけです。久しぶりの大きな揺れでした。

この地震の震源は長野県北部で、深さ約5km、地震規模はM(マグニチュード)6.7でした【図1】(*2)。海域を含めて日本とその周辺で、M6.7 以上の地震は最近の20年間に約80回発生しています。平均して毎年4回起きていることになりますが、これらの地震がすべて強い揺れをもたらすわけではありません。震度6弱以上の強い揺れが感じられる地震は最近20年間に41回発生しました【図2】。つまりM6.7以上の地震数の約半分しか強い揺れが感じられた地震が起きていません。

震度6弱の揺れが最近3年間で2回というのは、日本全体で見れば、平均的な頻度よりやや少ないといえます。2000年には伊豆の新島・神津島近海で群発地震、2004年は新潟県中越地震(M6.8)とその多数の余震、2011年は東北地方太平洋沖地震(M9.0)の余震や誘発地震が多数発生したことで、強い揺れを感じる回数が多くなりました。一度も6弱以上の揺れを感じなかった年もありますので、大地震の余震や群発地震の発生しない年では最大震度が6弱となる地震の発生数は年に1回程度です。

2014年11月22日の「長野県北部の地震」は内陸の浅いところ(深さ5km)で発生したことが、強い揺れをもたらした原因です。10年前の2004年新潟県中越地震も浅い内陸の地震で、震度7の強い揺れが観測されました。

糸魚川―静岡構造線断層帯で発生

2014年11月の「長野県北部の地震」は、日本列島の内陸部で最も地震発生確率の高い断層である糸魚川―静岡構造線断層帯の北部で発生しました。糸魚川―静岡構造線は、日本列島のほぼ中央部を南北に横切り、本州を東北弧と西南弧に分ける地質構造の境界です。この構造線のうち、北は長野県北安曇郡小谷村付近から南は山梨県櫛形市付近に至る全長140~150kmの部分が糸魚川―静岡構造線断層帯という活断層系です。糸魚川―静岡構造線断層帯は「北部」「中部」(牛伏寺(ごふくじ)断層を含む)および「南部」の三つの断層帯から成っています【図3】。

さらに、糸魚川―静岡構造線の北部にはフォッサマグナと呼ばれる大地溝帯があり、構造線はその西縁となっています。長野県の北部から新潟県新潟市の沖合にかけては、長岡平野西縁断層帯があります。2004年10月の新潟県中越地震、2007年3月の能登半島地震、そして2007年7月の新潟県中越沖地震など、被害を伴う地震が立て続けに発生しました(*3)。これらはいずれも日本海東縁部などのひずみ集中帯と呼ばれる地域で発生しています【図4】。

建物被害と人的被害

この地震では強い揺れが発生したため、多くの建物被害が生じました。長野県全体では50棟の住家が全壊し、91棟が半壊、一部損壊は1,426棟に及び、公共建物などの非住家も110棟が被害を受けました。新潟県でも半壊住家は1棟、一部損壊は2棟でした。長野県では合計46名の方が負傷し、そのうち重症者は10名でした。幸いなことに、この地震で犠牲になった人はいませんでした(*4)。

これらの被害のうち、長野県北安曇郡白馬村では負傷者数(23名)も建物被害(全壊住家37棟)も最大で、なかでも白馬村堀之内での被害が大きく報道されました。なお、1918年の2度の大町地震(M6.1、M6.5)では、長野県大町市周辺で、家屋全壊(姫川沿いの地域で住居全壊6棟)、半壊などの被害が生じています。

同じように最大震度6弱の強い揺れを記録した地震として、2005年福岡県西方沖地震(M7.0)が挙げられます。この地震では、全壊住家が144棟、半壊住家が353棟でした。1名が犠牲となり1,204名が負傷しました。震度6弱の揺れに見舞われると、耐震化していない建物は倒壊することが多いのです。

福岡県西方沖地震は、「長野県北部の地震」より地震規模がやや大きく、福岡市は白馬村より人口が多いことが被害の規模の違いになっています。さらに、災害に対する防災力の違いがあった可能性があります。白馬村では日頃から住民の共助の意識が高く、近隣の助け合いによって倒壊した家屋から救出された人も多かったといえます。

さらに大きな地震が起きる可能性は?

糸魚川―静岡構造線断層帯は、約1200年前に白馬から小淵沢までの区間(約100km)で活動し、その地震の規模はM8程度だったと考えられています。歴史地震としては、762年の地震(美濃・飛騨・信濃)が、この地震に該当する可能性があります。牛伏寺断層を含む区間では、約1000年おきに、M8程度の規模の地震が発生してきた可能性が高いと考えられています。

ただし、現在の調査研究によると、毎回約1200年前の活動と同程度(M8程度)であった可能性と、牛伏寺断層と同時に活動した断層区間が活動ごとに変化し、地震規模もM7~8程度の範囲で、その都度異なっていた可能性の両方が考えられています。そのため、牛伏寺断層を含む区間では、現在を含めた今後数百年以内に、M8程度の規模の地震が発生する可能性が高く、今から30年以内に発生する確率に換算すると14%と大変高い数字となっています。ただし、地震を発生させる断層区間(場所)がどこまでかは判断できません(*5)。

2014年11月の「長野県北部の地震」が発生したことで、牛伏寺断層を含む活断層帯で、M8程度の地震の起きる可能性が高まったかどうかは、大変重要なことです。牛伏寺断層は、2011年3月11日の東北地方太平洋沖地震の影響で地震が発生しやすくなる力を受けていました。しかし、2014年11月「長野県北部の地震」の影響は小さく、直ちに牛伏寺断層で地震が発生する可能性は低いと考えられます。

ただし、そもそも牛伏寺断層を含む糸魚川―静岡構造線断層帯で、大きな地震の起きる可能性が高いことを忘れてはなりません。日本中のどこでM6~7程度の地震が浅いところで起きても不思議はないのですが、それと比較しても、この断層帯か、その周辺で大きな地震が発生する可能性が高いということです。日頃から、「自助と互助・共助」で備える必要があります。


参考文献:
(*1)気象庁(2014年11月23日00時00分報道発表資料)、平成26年11月22日22時08分頃の長野県北部の地震について
http://www.jma.go.jp/jma/press/1411/23a/201411230000.html ※NHKサイトを離れます

(*2)気象庁(2014年11月27日15時00分報道発表資料)、平成26年11月22日22時08分頃の長野県北部の地震について(第6報)
http://www.jma.go.jp/jma/press/1411/27a/201411271500.html ※NHKサイトを離れます

(*3)第5回 「内陸の地震」/平田直 参照

(*4)消防庁災害対策本部(2014年12月16日13時00分)、長野県北部を震源とする地震(第 20 報)
http://www.fdma.go.jp/bn/2014/detail/888.html ※NHKサイトを離れます

(*5)地震調査研究推進本部地震調査委員会(1996年9月11日)、糸魚川―静岡構造線活断層系の調査結果と評価について

地震調査研究推進本部地震調査委員会(2014)、1.活断層の長期評価 1―1.主要活断層帯の長期評価の概要(算定基準日 平成26年(2014年)1月1日)

(2014年12月26日 更新)