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地盤と災害の関係

第3回  川の氾濫と液状化の不思議な関係 ~災害に強い土地の見分け方~

執筆者

若松 加寿江
関東学院大学理工学部 教授 博士(工学)
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氾濫常襲地は液状化危険地帯

「液状化」と聞くと、海岸の埋め立て地で起こる災害と考えている人も多いようですが、必ずしもそうではありません。内陸部で起きた液状化被害の大部分は大きな川の沿岸で起きています。2011年の東北地方太平洋沖地震(東日本大震災)による関東地方の液状化発生地点の分布を【図1】に示しました。東京湾岸の埋め立て地帯に液状化地点が集中しているのは事実ですが、大きな川の沿岸の低地に多く分布しているのが見て取れます(*1)。これは、川が上流から運んできた土砂が「液状化」した証拠です。

川が流れ運んできた土砂が最も厚く広範囲に堆積するのは、本コラムの第2回で触れたように「氾濫常襲地帯」です(*2)。中でも大河川の沿岸は、特に「液状化」が起こりやすくなっています。「液状化」しやすい土である砂を大量に運べるのは大きな川だけで、小さな川には砂のように重い土粒子を押し流す力がないためです。過去に「液状化」が実際に起きた場所の地名を調べると、押切・押堀・押立など氾濫を示す地名や、川合・河合・川増・曲沢・大曲・袋など、氾濫が起こりやすい川の合流や、蛇行を表す地名が多くあります。

昔の川筋に注意!

液状化が起こりやすい河川沿岸の中でも、「旧河道(昔の川の流路)」は特に要注意です。「旧河道」では地下水位が浅く、昔の川底に堆積する砂がとても緩いためです。「旧河道」の名残の沼を、人工的に埋め立てている場所も少なくありません。このような場所には、「川底の砂+埋め立てた砂」があり、液状化に対する危険性がさらに高いといえます。

現在は農地や住宅地になっている「旧河道」の一例を【図2】に示しました。現地で眺めても、一般の土地と区別ができませんが、明治・大正期の古い地形図や1947年前後に米軍が撮影した航空写真画像で確認することができます。現在の地図でも、弓なりに曲がった道路が2本平行して走っているので「旧河道」と分かる場合もあります。2本の道路はかつての川岸の道路で、それに挟まれた内側は、周囲の地域と開発時期が異なるため、土地の区画が周囲と異なっているのが特徴です。東日本大震災では、【図2】の「旧河道」もすべて液状化して、農地や住宅に大被害をもたらしました。

利根川は、かつては東京湾に注ぐ川でしたが、江戸を水害から守るために1654年(文禄3年)から60年かけて付け替えられ、茨城県と千葉県の県境を通って銚子で太平洋に注ぐようになりました【図2】。かつての利根川の名残は、今では埼玉県の南東部を流れる古利根川のみとなりました。しかし、利根川が残した堆積物は地下に眠っており、1923年関東地震では、昔の利根川の川筋をなぞるように液状化被害が発生しました。東日本大震災でも、一部で被害が起きました【図1】。

旧河道周辺は土地が低いため洪水に対しても危険です。1947年(昭和22年)のカスリーン台風では、現在の加須市で利根川の堤防が決壊し、濁流は300年前の川筋を流れ下り、途中でいくつもの決壊を引き起こしながら東京の下町にまで達し、足立・葛飾・江戸川の3区に大被害を与えたことで知られています。カスリーン台風による氾濫域は、関東地震による液状化発生域とほぼ一致しています。

山間の盆地にもある液状化危険地帯

大河川の沿岸で液状化が起こりやすいのは、関東地方のような平野だけではありません。全国の主な平野と盆地ごとの液状化の履歴回数を【図3】に示しました。周りを山で囲まれた盆地でも、液状化が起きた履歴は多数あることが分かります。例えば、長野盆地では、1847年(弘化4年)の善光寺地震、1897年(明治30年)の長野県北部の地震、1941年(昭和16年)長野市付近の地震の3回の地震で、千曲川沿岸に「噴砂・噴水」の記録が残されています。

この地域には、武田信玄と上杉謙信の一騎打ちの舞台として知られる「川中島」をはじめとして、「島」がつく地名が多くあります。液状化の記録も「島」がつく場所に多く、2回、3回と繰り返し液状化が発生した地区もあります。「海もない山間に島?」と不思議に思われるかもしれません。「島」とは、自然堤防のように、低地の中の微高地に付けられる地名です(*2)。長野盆地の液状化の履歴は、「千曲川」の激しい蛇行に加えて、千曲川と犀川の合流に起因する河川の氾濫の産物といえるでしょう。

丘陵地帯でも液状化?

液状化が発生するのは、埋め立て地や低地が多くなっています。しかし、これまでの液状化ハザードマップで「液状化が起こらない」とされていた台地や丘陵地でも、液状化の危険性が高い場所があることが分かってきました(*1)。

丘陵や台地などの傾斜地の地形をよく見ると、斜面に谷や沢が走っているのが分かります。宅地化する場合、急斜面や谷底には家を建てられないことから、尾根などの出っ張った斜面を切り崩して、その土で谷や沢を埋め、ひな壇状に宅地を造成します。地山を削った部分は安全ですが、谷の部分は元々地下水や雨水の通り道のため地下水位が浅く、埋め土が十分締め固められていないと、地滑りや液状化が発生します。

東日本大震災では、仙台市の丘陵地帯や、千葉県や茨城県の台地を切り盛り造成した宅地で、埋め立て地と同じくらいの数の住宅の液状化被害が発生しました。造成後の地形から谷筋を見分けることは困難ですが、水路や池がある場合は、造成前は谷だったことを示しています【写真1】。詳しくは、造成前と後の地形図(等高線が入った地図)と重ね合わせて地山か盛り土かを判断します。最近では、自治体から「大規模盛土造成地マップ」が公表されている地域(*3)もあります。


(*1)第1回「良い土地と良い地盤はどう違う?~災害に強い土地の見分け方~」/若松加寿江【図3】
(*2)第2回「風景は地盤なり ~災害に強い土地の見分け方~」/若松加寿江
(*3)大規模盛土造成地マップ(国土交通省)
http://www.mlit.go.jp/toshi/toshi_fr1_000008.html ※NHKサイトを離れます

(2014年11月30日 更新)