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地震全般・各地の地震活動

第10回  超巨大地震後の余震と地殻変動

執筆者

平田 直
東京大学地震研究所教授、地震研究所地震予知研究センター長
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2014年7月に起きた2度の有感余震

2014年7月5日、岩手県宮古市で震度5弱を観測する地震が発生しました。震源は岩手県沖で、深さ約50km、地震規模はM(マグニチュード)5.9でした。この地震は、2011年東北地方太平洋沖地震(東日本大震災を起こした地震)の余震でした。震度5弱以上を観測する余震は、2013年12月以来半年ぶりのことです。さらに、7月12日には福島県沖の深さ約15kmでM7.0の余震が発生し、石巻市鮎川で17cmなど、岩手県から福島県にかけての沿岸で津波が観測されました。宮城県・福島県・茨城県・栃木県で最大震度は4となりました。M7以上の大きな余震としては9番目のものでした【図1】。

2011年東北地方太平洋沖地震はM9.0の超巨大地震でした。そのため大きな余震がたくさん発生しています。M7以上の大きな余震は2011年3月11日に3回、同年4月に2回、同年7月に1回、その後しばらくなく、2012年12月7日(M7.3)、2013年10月26日(M7.1)にそれぞれ1回ずつ発生し、9回目が2014年7月12日でした。本震の約30分後に茨城県沖で発生したM7.6の大地震が、2014年9月末現在で最大の余震です。

しかし、もうすこし小さな余震も調べると、2014年9月末までにM6.0以上の余震は113回、M5.0以上は800回以上発生し、2014年7月中にはM5.0以上の余震が3回、8月にも1回発生しています。東北地方太平洋沖地震の発生直後には、余震が頻繁に発生していましたが、時間の経過とともに次第に発生数は減ってきました。それでも、現在もたくさんの余震が起きているのです。

余震と誘発地震

3年以上たったこの時期に、なぜ余震が発生したのでしょうか? そもそも、余震とはどのような地震なのでしょうか? 地震は、ある狭い領域で短期間に複数回発生する、つまり、時間・空間的に群れをなして発生することがあります。この群れをなす地震のうち、最も大きな地震を「本震」、本震の前に発生した地震を「前震」、後に発生した地震を「余震」といいます。普通マグニチュード6程度以上の地震では、余震が多数回発生します。

2011年東北地方太平洋沖地震では、2011年3月9日(本震の2日前)にM7.3 の前震が発生し、そのほかにも1か月前から多くの前震が発生しました(*1)。群れの中で最初に起きた地震が最大の地震である時は、最初の地震が本震、その後の地震が余震になります。つまり、前震を全く伴わずに本震が発生して余震が続発することもあります。

通常、本震は前震や余震に比べてマグニチュードが1以上大きく、解放されるエネルギーは最大余震の何十倍も大きな地震です。大きな本震の後にたくさんの余震が発生するのは、本震が発生すると本震の震源断層の周辺に大きな力が加わるからです。

余震の発生する領域を「余震域」といい、本震の震源断層の大きさとおおよそ一致しています。しかし、詳しく調べると、余震の起きている領域は震源断層よりやや大きいのが普通です。震源断層のそばでは、本震の直接的な影響を受けてたくさんの余震が発生しています。そこで、震源断層を囲む領域を余震域と定義して、その中で本震後に発生する本震より小さな地震を余震ということにしています。気象庁は、東北地方太平洋沖地震の余震域を定め、その中で発生した地震を余震ということにしました(【図1】の青い長方形内)。

実際には、東北地方太平洋沖地震の影響は大きく、この余震域の外でも2011年3月11日以降、急に地震数が増えた地域がいくつかあります。例えば、新潟県や長野県では、地震数が増えました。首都圏でも地震数が増えた地域があります(*2)。余震域の外で、本震の影響を受けて発生した地震を「誘発地震」といって区別していますが、この区別は統計をとるための便宜的なものです。

東日本は、今でも東西に伸び続けている

余震や誘発地震の発生数は、本震からの時間の経過に反比例するように減っています。このため、本震後3年たった現在の発生数が半分になるには、本震からの経過時間が倍、つまりもう3年経過する必要があります。これは、大変ゆっくりとした減り方なので、完全に余震が発生しなくなるまでには、数十年かかる可能性があります。

余震の多くは、本震発生の時に震源断層面上で大きなずれが生じて、周辺に大きな力が働くことによって発生しています。地震時のずれは数分間の現象ですが、その影響は長い間続きます。さらに、巨大地震の震源断層でのずれは、地震発生の数分間に急激に発生しただけでなく、その後もゆっくりと長い間続きます。

東北地方はこの地震の前には、東西に1年間に1~2cmの速さで縮んでいました。太平洋プレートが東に進んでいるからです。それが、2011年3月11日14時46分からおよそ3分間の間に東西に3~4m伸びました。地震の発生時の現象です。さらに、その後も最初の1年は1年間に20cm程度伸びたのです【図2-1】。

10年以上続く超巨大地震の影響

このような大規模な地殻変動は本震から3年以上たった今でも継続しています【図2-2】。本震発生時の大きな断層面でのずれと、この地震後の地殻変動(余効的地殻変動)の両方の影響を受けて、余震や余震域の外部での誘発地震が継続しているのです。これらは今後10年以上続く可能性があります。

例えば、2004年12月26日に発生したスマトラ北部西方沖の地震(M9.1)では、4か月後にM8.6、約2年半後にM8.5、約5年半後にM7.5、約7年半後に海溝軸の外側(西側)の領域でM8.6の地震が発生しました【図3】。10年を経過しようとしている今でも、震源域およびその周辺では、余震や大きな誘発地震が発生しています。巨大な地震の影響は長期にわたって続いているのです。

東日本大震災は3年を経過した今でも続いています。大勢の人が今でも仮設住宅で暮らし、東日本大震災からの復旧・復興に努力しています。同時に、自然現象としての東北地方太平洋沖地震の影響も現在でも続いています。このために、東日本全体でM7程度の地震の発生の可能性は当分の間は高く、地震への備えを怠ってはなりません。

参考文献:
(*1)Kato, A., K. Obara, T. Igarashi, H. Tsuruoka, S. Nakagawa and N. Hirata (2012),Propagation of Slow Slip Leading Up to the 2011Mw 9.0 Tohoku-OkiEarthquake,Science,335,705-708, doi:10.1126/science.1215141.

(*2)Nanjo, K., S. Sakai, A. Kato, H. Tsuruoka and N. Hirata. (2013), Time-dependent earthquake probability calculations for southern Kanto after the 2011M9.0 Tohoku earthquake", Geophys. J. Int., doi: 10.1093/gji/ggt009.

(2014年9月30日 更新)