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災害食の選び方

第3回  災害時に足りない野菜 ~備蓄のコツ~

執筆者

奥田 和子
甲南女子大学名誉教授  (特)日本災害救援ボランティアネットワーク理事
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災害時に最も食べたかったのは野菜

阪神・淡路大震災の発生後、一番食べたかったものは何か。料理名を一つ答えてもらいました(1995年4月 避難所生活者270人に対する聞き取り調査―男107人、女163人、避難所数9か所―神戸市4、芦屋市3、西宮市2)。回答の料理を分類すると「野菜類」が34.4%で最も多く、魚類、肉類を上回りました(図1)。

なぜ野菜なのでしょうか。それは野菜が最も不足していたからです。同上の聞き取り調査によると、避難所入所後に約4割が便秘になり、その半数が食べ物のせいだと答えています。また入所前に体調がよかった52%は入所後に21%に減り、眠れないなどの不調を訴える人もいました。そこで神戸市は配給食に野菜ジュース、カット野菜を付け加えました。

その後、東日本大震災でも同様のことが起こります。岩手県野田村役場では、栄養士の聞き取り調査により、便秘・野菜や魚類の不足・義歯の不具合・口内炎・肌のトラブル・血圧の上昇・運動不足・不眠・疲れ・食欲不振などの問題があることを知りました。そこで便秘を訴えた人にサプリメントや野菜ジュースなどを配って対応した結果、便秘が減少しました(図2)。

災害時、なぜ野菜が不足するのか

災害時に野菜が不足する原因を、いくつか挙げてみましょう。
(1) 野菜不足の最大の原因は、私たち個々人が野菜の備蓄をしていないからです。「備蓄食品とはなにか」と尋ねると、乾パン・アルファ米・インスタント麺など主食の答えが多く返ってきます。野菜の重要性が認識されていません。自治体の市民向け広報にも、野菜の備蓄をどうすればよいか適確に伝えられていないように感じます。

(2) 自治体の救援物資に野菜がないことも原因の一つです。災害が発生すると自治体は被災地に向けて救援物資を放出しますが、備蓄内容が主食に偏っているため、野菜の加工品の救援物資はほとんどありません。内容を見直す必要があります。

(3) 交通事情の悪化、流通機能の停滞により、野菜が入手しにくく価格が高騰し野菜不足に拍車をかけます。

(4) もし生野菜が大量に送られてきたら、料理はできるでしょうか。被災地で野菜を料理するのは困難です。なぜなら肝心のライフラインがストップしているため、野菜を洗う水、煮炊きする燃料がないからです。電気がないため電子レンジも使えず、冷蔵庫も使用不可能です。

(5) 野菜料理は水分が多いため腐敗しやすく、生野菜は未加熱のため衛生管理が行き届きません。

時系列で考える野菜備蓄のコツ

周囲の食環境の変化に合わせて、野菜を次の3段階で計画的に備蓄することをお勧めします。

【発災直後3日間】水も熱源も使わず、すぐ食べられるものを備蓄しましょう。野菜ジュースは野菜にとって変わるものとして評価でき、重宝します。

【4日以降~】日常の食事に近づけるため、主食+おかずのプランで備蓄します。野菜のおかずはすぐ食べられる缶詰・瓶詰・レトルトが好ましいです。

【1か月後~】食を取り巻く周辺環境が落ち着いてくると、缶詰、レトルトに加えて長く保存できる根菜類(じゃがいも・たまねぎ・にんじん・ごぼうなど)が使えるようになります。特に根菜類は洗うのに水を多く必要としないので助かります。店が開き入手可能なら葉物野菜(レタス・きゃべつ・ほうれんそうなど)も使えますが、洗うために多くの水を必要とするのが難点です。その点果菜類(トマト・なす・ピーマンなど)は洗いやすく重宝します。これらは冷蔵庫が使えるならば保存できます。ライフラインが徐々に回復すれば、(表1)のように順次使用できる野菜が広がっていきます。

備蓄する時の野菜の分量―目安は1日350g

野菜の1日摂取量目安は1日350gとされています(厚生労働省が推奨する21世紀における国民健康づくり運動「健康日本21」の目標値)。1食は約117gです。ちなみにこれは生の分量で、廃棄部分を除いた重量です。例えば備蓄食品のマッシュポテト缶の中身は105g、かぼちゃ、にんじんなどの緑黄野菜とその他の野菜計80g使用したスープ(写真右)など、一般的に野菜の加工品の分量は100g前後です。これでは分量的に不足です。

そこで提案ですが、これに野菜ジュースを1本加えてみてはどうでしょう。野菜ジュースの市販品はいろいろありますが、1缶200ミリリットル前後で350gの野菜、しかも30種類の野菜、そのうち緑黄色野菜は120g以上使用したものもあります。野菜の備蓄が0というお粗末なことにならないよう注意しましょう。最近はレトルトカレー1袋中に、にんじんほか9種類の野菜を180g(生野菜換算)以上入れた“野菜カレー”も発売されています。これ1品で野菜が1食分以上取れるという、便利な食品です(写真1)。

野菜にはほかの食品とは異なる栄養成分、機能性成分が含まれています(表2)。野菜の体内での守備範囲は極めて大きく、その威力は大です。災害時には野菜がとりにくい環境に追いやられますが、仕方がないでは済まされない事態です。事前に準備しておくことを心がけましょう。そのためには野菜の缶詰、レトルト食品などを毎食1つ備蓄することを勧めます。それでも足りませんから、野菜ジュース缶も1食1本程度備蓄することを勧めます。体調を整え、健康維持のキーポイントを握るのは野菜なのですから。

(2014年8月28日 更新)