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落雷・突風

第10回  夜の竜巻

執筆者

小林 文明
防衛大学校地球海洋学科教授 理学博士
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日本では夜間の竜巻が多い!?

2008年3月25日21時頃、相模湾で竜巻が発生しました(写真1)。江の島のごく近傍で太い漏斗雲(ろうとぐも)を街明かりで確認することができ、発達した竜巻であったことが分かります。さらに、暗い中でも計3本の漏斗雲が認められます。しかしながら、この竜巻は上陸しなかったため、これだけ海岸線近傍で発生したにもかかわらず、気づいた人はほとんどいなかったようです。もし日中発生していたら、多くの人が住んでいる湘南海岸では、目撃者で大変な騒ぎになっていたでしょう。

日本での竜巻は、温帯低気圧(寒冷前線を含む)・台風・冬型・梅雨前線など大部分が大きなスケールの大気現象に伴って発生しています(*1)。低気圧や台風は時刻を選びませんから、それらに伴って発生する竜巻も、いつ起こってもおかしくありません。夜間の竜巻は、1990年12月11日19時に千葉県茂原市で発生したフジタスケール(*2)でF3(風速70~92m/s)の竜巻や、2013年9月15日から16日にかけての深夜に関東平野で発生した竜巻など、頻繁に起こっています。

竜巻の発生時刻

1961年から50年間に日本で発生した竜巻の中で、人的被害を生じた竜巻の時刻別発生頻度を(図1)に示します。この図を見ると、日中特に午後にピークがあり、夜間~早朝に発生した竜巻被害は少ないことが分かります。このような傾向は、報告された竜巻全体のデータを見ても同様です。ただし、夜間の竜巻は、目撃者や漏斗雲の写真などのデータがほとんど残されないため、竜巻発生の認定ができないのも事実です。

日本の場合は、F0(風速17~32m/s)やF1(風速33~49m/s)スケールの弱い竜巻が多いため(*1)、夜間家の中に居ることが多く、窓が閉められている就寝中の人的被害は、結果的に少ないだけかもしれません。竜巻だけでなく、夜間に発生する自然災害に関する対策は重要な課題といえます。

米国での現状

米国では、夜間の竜巻による人的被害数が、この50年で昼間に比べて減少していないことが指摘されています。つまり、夜間に家に居ることの危険性が軽減されていないわけです。日中発生する竜巻の場合は、学校、職場あるいは公共機関の地下シェルターに避難したり、頑丈な建物に移動したり、階下・窓の無い部屋・浴室など、より安全な場所に避難するなど、竜巻警報により避難行動を取りやすいといえます。一方、就寝中にF3(風速70~92m/s)以上の強い竜巻に襲われた場合は、避難行動も取りにくく、家屋自体が倒壊するため、家の中でも無防備といえるのです。

夜間の竜巻から身を守るためには

日本の場合は、F3スケール以上の竜巻に遭遇する確率は高くないため、少なくとも雨戸を閉めていれば、就寝中の人的被害をある程度防ぐことはできます。外の状況が分かりにくい夜間は、テレビや携帯電話、あるいは災害用エリアメールなどで、竜巻注意情報や短時間強雨などの気象状況を把握することが有効です。

竜巻では、植木鉢・玩具・自転車などが飛散し、周囲の家屋にとっては凶器となり、飛散物が飛散物を生む結果となります。エアコンの室外機が飛ばされるのも竜巻の特徴です。日頃から、台風や発達した低気圧の接近時には、ベランダや家の周囲の物を片付ける習慣をつけましょう。屋外のキャンプ時など、万一外に居た場合には、雷光や風雨の状況などから危険を察知して、早めの行動を心がけましょう。

(*1):みんなのQ&A「2012年5月につくば市で発生したような竜巻は、日本のどこでも発生するのでしょうか?」図3/小林文明

(*2):フジタスケール=第1回「日本中どこでも起こりうる竜巻の怖さ」表1/小林文明

参考文献:「竜巻~メカニズム・被害・身の守り方~」小林文明(成山堂書店)

(2014年8月28日 更新)