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災害食の選び方

第2回  災害時の炊き出し準備はできていますか?

執筆者

奥田 和子
甲南女子大学名誉教授  (特)日本災害救援ボランティアネットワーク理事
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ご飯を炊けない人が増えている

災害時、電気、ガス、水道が止まった場合、家庭ではカセットコンロと鍋でご飯を炊くことになります。炊飯器のように目盛りがなく、火力の調整も必要ですが、あなたはご飯を炊くことができますか。

全国無洗米協会の調査内容(2013.7.調査20代~50代各100人=計400人)は、興味深いものです。「自動炊飯器ではなく、鍋とカセットコンロでご飯を炊くことができますか」という質問に対して「はい」と答えた人は50代で33%、年齢とともに少なくなり、20代ではわずか12%でした。これでは災害時にご飯を炊くことは相当難しいと推察されます。できれば日頃から家庭でコンロと鍋を使って、ご飯を炊く練習をしておきましょう。

手ぶらはおかしい避難訓練

遠足に出かけるとき、自分の弁当は自分で用意して持っていく文化が定着していますが、なぜ避難訓練には何も持たずに手ぶらで出かけるのでしょうか。おかしいと思いませんか。できれば、各自が持ち寄った米を実際に炊いてみる。これがまさに避難訓練ではないでしょうか。そうすることで初めてご飯を炊くということが現実味を帯びてきて、さまざまな準備不足や課題が見えてきます。

岩手県のある栄養士さんはリポート *1)に、「被災直後は食材が手に入らなかった」と記しています。被災者に温かいご飯を食べさせてあげたいという思いが実現しにくかったのは、肝心の米が入手しにくかったからです。米ばかりではなく、「米・水・釜・かまど・燃料」の5点セット(図1)がないと残念ながらご飯は炊けません。避難所に備蓄が必要です。ご飯を炊いた経験がないといざというとき右往左往するので、いまから訓練しておき、誰もがご飯を炊けるようにしたいものです。

釜でご飯を炊き、おにぎりをつくる訓練をしよう

避難所にはお腹を空かせた人々が集まってきます。仮に700人位だとしましょう。1人おにぎり1個として700個必要です。米100gを炊くとご飯は米の2倍の200gになり、大きめのおにぎりが1個できます(写真1)。避難所に5升(7.5kg)炊きの釜とLPガスが備蓄してあるとしましょう。これを使って、米の量とできるおにぎりの個数(表1)を考えて、早速ご飯を炊くことにします。

米と水を計量し、米を洗います。米と水の分量(表2)は間違いやすいので注意します。忘れそうなのが米の浸漬です。ふだんは自動炊飯器がすべてやってくれますが、米は乾燥しているので、夏は30分、冬は1時間程度、炊く前に水に浸けておきます。水量は洗った米が浸かる程度で充分です。その後、米をザルにあげて水を切ります。無洗米の場合も同じように浸漬します。

5升もの大量のご飯を炊くときは、普通の炊き方ではなく「湯炊き法」(表3)で炊きます。先に計った水を釜に入れてふたをして、沸騰したら米を一気に入れて炊く方法です。加熱が均一で、炊きむらがなくおいしくできあがります。

炊きあがったご飯を清潔に握る極意を、東日本大震災の記録から学びました。茶碗や大きめの湯のみを並べ、内側に少し大きめのラップを敷きそこにご飯を入れて押し込み、ラップの四隅を集めて手に取り握ります。塩味をつけたい場合は米の0.5%程度の塩を入れて炊くと、ご飯を炊いた後で塩をつけるよりも、均一にほどよい塩味のおにぎりができます。これらは岩手県宮古市で実際にされた栄養士さんたちの知恵です。塩味のほか、ふりかけもおにぎりの味付けにおおいに役立ったようです。

災害時に欠かせない“ご飯を炊く”食文化

ご飯を炊くうえで大切なことがまだあります。ご飯を炊くときは、周囲の状況や空気を読んで、安全を確かめてから取りかかりましょう。発災直後は、炊き出しが不可能な環境になっている場合があるからです(表4)。

阪神・淡路大震災、東日本大震災では、ガス、水道が回復するまで長期間かかりました。その間、自衛隊をはじめNPO、NGO、ボランティアがご飯を炊いて避難所の食事を支えました。被災者は、温かいご飯とおかずというパターンの食事様式を強く望んでいたからです。これほど加工食品が氾濫していても、災害時に、温かいご飯が食べたいという食文化は避けて通れないことを再認識しました。この現実を直視し、自助(市町民)・共助(地域住民)・公助(自治体)がともに力を合わせてご飯を炊くことに本気で取り組む必要があるでしょう。

*1)「そのとき被災地は ―栄養士が支えた命の食―」岩手県栄養士会

(2014年6月30日 更新)