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日本の火山活動

第9回  噴火が止まらない! 溶岩流で面積を拡大し続ける島

執筆者

藤井 敏嗣
東大名誉教授 火山噴火予知連絡会会長
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最近の日本の火山活動

わが国で現在噴火している火山は、東京都の西之島、鹿児島県の桜島と諏訪之瀬島です。桜島は相変わらず毎日のように爆発的噴火を繰り返し、周囲に火山灰をまき散らしています。諏訪之瀬島はそれほど頻繁ではありませんが、時折小規模な爆発的噴火を繰り返しています。

宮崎県の霧島山新燃岳は2011年9月7日以降噴火をしていませんが、山頂火口に溶岩をため込んだままで、地下深くのマグマだまりに今もマグマの供給が続いていることから、新燃岳あるいはほかの火口からの噴火の発生が警戒されています。群馬県の草津白根山では、2014年の5月末ごろから湯釜火口周辺での地震回数が増えるとともに、火山ガスの組成が変化しました。また、山体がごくわずかに膨らむ地殻変動が観測されたほか、地下の温度の上昇を示す地磁気の変化も続いています。このため噴火発生が懸念されて、6月3日には噴火警戒レベルが2に引き上げられ、一部道路の通行規制が行われています。今回はこれらのうち活発な噴火が続く火山島、西之島の最近の状況を解説します。

西之島の活動 ~新島の誕生~

西之島は東京の南約1,000kmの小笠原諸島の一部で、父島の西130kmの小島です。この島を最初に見つけたのはスペインの船で、1702年のことですが、今は東京都小笠原村の島で、世界自然遺産の一部となっています。

西之島では今から40年前の1973~1974年にかけても、今回の噴火と同じように、マグマ水蒸気爆発による新島誕生に引き続いて、溶岩流流出による拡大が起こりました。この時は新島と西之島本体との合体は生じなかったため、しばらく西之島新島と呼ばれました。ところがその後、西之島新島のかなりの部分が波の浸食により失われ、波で削られてできた砂が潮で運ばれて、西之島本体との間を砂洲として埋め立てたため、新島と本体とが合体して、今回の噴火前の西之島(旧島)を形作っていたのです。

この旧島の南の沖合500mの場所で、昨年(2013年)11月20日にマグマ水蒸気爆発を繰り返している小さな島が確認されました。この時期は地下から上昇してきたマグマが海水と接触して激しい爆発を起こし、火口から放出された火山弾や火山灰、火山れきなどの火砕物が火口周辺に降り積もって円錐型の小島が形成されていました(写真1)。

この時点では、この小島がさらに成長を続けられるかどうかははっきりしませんでした。海面上の火砕物でできた島は、波の浸食を受けて比較的短い時間に消え去ることが多いからです。このような火山島が数10年以上存続できるかどうかは、このあともマグマの供給が続いて、溶岩流が流れ出すかどうかにかかっています。一度、表面が溶岩流で覆われてしまえば、ちょうどコンクリートで舗装したように頑丈な島になって、波の浸食力にある程度打ち勝つことができるからです。

火山島の成長と旧島との合体

その後の進展は、まさに典型的な海洋島の成長の道のりをたどっています。最近では、いくつかの噴出中心(火口)からは、マグマのしぶきを間欠的に噴き上げる「ストロンボリ式」と呼ばれる噴火を繰り返し、周囲に火砕物を降り積もらせて円錐状の小山を作っています。そして、その小山のすそ野からは次々に溶岩流がいろいろな方向に流れ出しています。新しい溶岩流が海水と接触する辺りでは、溶岩の熱のために海水が直ちに蒸発して、激しい水蒸気が立ち上っています。

流れ出した溶岩流によって島は拡大し、今ではもともとあった西之島旧島にまで到達したあげく、さらにその上にまで溶岩流を流しています。間もなく西之島の旧島を覆い尽くしそうな勢いです(写真2)。海上保安庁の観測によると、2014年5月6日現在、今回の噴火活動で作られた新島の部分は東西1,400m、南北1,100m、面積はおよそ90万平方メートルになっています。

これまで島が成長してきた様子は(図1)に示されています。噴火が目撃されてからすでに半年が経過しましたが、まだマグマの供給が止まる気配はありません。マグマの供給は一日あたり約18万立方メートルでほぼ一定です。海底下にたまった部分を含め、これまで噴出したマグマの量は2,800万~3,500万立方メートルで、1973~1974年噴火の際の2,400万立方メートルを上回ったようです。このまま噴火が続けば、伊豆大島や三宅島のような大きな火山島に成長し、人が生活できるようになるかもしれませんが、それはおそらく何千年も先のことでしょう。

海底火山としての西之島

西之島そのものはごく小さなものですが、現在続いている噴火は深さ4,000mの海底からそびえ立った富士山型の巨大な火山の山頂部分での出来事なのです(図2)。海底火山には、このように深海からそびえ立ったものが多いのです。これほど大きくなるまでにはずいぶん時間がかかったと思われますが、深い水深にはばまれ、調査が行き届いていないので、火山としての詳しい歴史は分かっていません。

また、現在の噴火の観測についても、いろいろと問題を抱えています。西之島は何しろ東京から1,000kmも離れた無人島ですから、地震や地殻変動観測など通常の火山で行われる観測はこれまで全くできていません。時折、ジェット機で上空から観察するか、人工衛星から観測するしかないのです。なんとか周辺海域や旧島に観測機器を設置して、連続的な観測が行えるようにしたいものです。それが実現できれば、どのくらい噴火が続くのかなどの予想についても、もう少し確実なことが言えるのではないかと思います。

(2014年6月30日 更新)