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地震全般・各地の地震活動

第9回  伊豆の地震で首都圏が揺れた!

執筆者

平田 直
東京大学地震研究所教授、地震研究所地震予知研究センター長
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東京・大手町で震度5弱

2014年5月5日、ゴールデンウイークをあと1日残す早朝5時18分、都内で強い揺れが感じられ、東京都千代田区大手町では震度5弱となりました。東京都・千葉県・神奈川県・埼玉県で15人の軽症者が出ました*1)。関東は地震が多く、有感となる地震が毎月数回は発生していますが、震度5以上となると、気象庁の近代的な観測データが整備された1923年以来8回しかありません。

東京で最も強い揺れが感じられたのは1923年関東地震(関東大震災)の時で、大手町でも震度6でした。その後、震度5の揺れは1929年までに3回、1985年、1992年にも観測されました。2011年東北地方太平洋沖地震(東日本大震災)では、大手町で震度5強が観測され、5月5日の揺れはそれ以来の5弱以上の強い揺れでした。

伊豆大島近海下の深発地震

この地震の揺れの特徴は、大手町で震度5弱の強い揺れであったことのほか、広い範囲で揺れが感じられたことです。震度4が栃木・群馬・埼玉・千葉・東京・神奈川各都県で記録され、東北から関西、中国地方の広範囲で揺れが観測されました。震源は「伊豆大島近海」で、震源に近い伊豆大島町や静岡県伊豆市では震度3、熱海市、伊東市、河津町、下田市等では震度2でした(図1-a)。

なぜ、震源に近いところではなく、すこし離れた東京で強い揺れになったのでしょうか。その秘密は、この地震が伊豆大島の地下深く、約160kmのところで発生したことにあります。関東の下には東から太平洋プレートが沈み込み、南からフィリピン海プレートが沈み込んでいます(第6回「首都圏の地震活動」/平田 直*2)。

この二つのプレートが沈み込むことによって多くの地震が発生しています(図1-b)。5月5日の地震の震源を含む東西断面図(図1-b下)を見ると、東から西に傾き下がる分布が見えます。これが太平洋プレートの沈み込みに伴う地震です。よく見ると傾き下がる分布は30kmくらい離れた2列に分布しています。これを「二重深発面」といいます。5月5日の地震はこの二重面の下面で発生したマグニチュード6.0の大地震でした。太平洋プレートの厚さは100km近くあるので、「二重深発面」はプレートの上部に位置しています。

深発地震と異常震域

マグニチュード6.0の地震が浅いところで起きると被害が発生することがあります。例えば、2012年3月14日に千葉県東方沖深さ約10kmで起きた、マグニチュード6.1の地震では、千葉県銚子市で震度5強になり、4棟の住家が一部損壊し、ブロック塀や石垣が倒壊しました。千葉県全体では死者1人、負傷者1人でした。震源に最も近い銚子市で被害が多かったのです。これに対して、2014年5月5日の伊豆大島近海の地震は深さ約160kmと深かったために、伊豆半島では強い揺れにならず被害も出ませんでした。地震の波は伝わっていくにつれてエネルギーを失うので、真上の地点でも160kmと離れているために地震波は減衰したのです。

一方、東京都や北関東に向かう地震波は太平洋プレートの中を通って伝わりました。太平洋プレートは周辺に比べて固く、地震波をよく伝えます。水平距離は、東京都心は伊豆に比べて遠いけれど、立体的に考えると震源からの距離はそれほど違いません。それより、太平洋プレートという地震波をよく伝える「道」があることで、東京都心では強く揺れたのです。

このように「深発地震」が発生すると、震源の真上の地点より遠方の地域で強い揺れになることがあります。日本海の下の太平洋プレート内の「深発地震」では、日本海沿岸地域より太平洋沿岸地域で揺れが強くなります。このような揺れの分布を「異常震域」といいます。2014年5月5日の地震では「異常震域」が観測されたのです。

首都圏で発生するさまざまな地震

首都圏で発生する地震は、地表に近い活断層のそばで起きる地震のほか、プレートの境界やプレート内部で起きる地震などいろいろあります(図2)。これまでに関東で被害を起こしたマグニチュード7程度の地震もこれらのプレート境界やプレート内部で発生していました(図3)。しかし、地震計の発明以前の昔の地震の位置や深さは必ずしもよく分かっていません。例えば、江戸を中心に大きな被害をもたらした1855年安政江戸地震の深さもよく分かりません。

一般には、太平洋プレートの内部で起きる深い地震は地表には大きな揺れをもたらさないと考えられていますが、今回の地震のように思わぬ強い揺れとなることもあります。首都圏の地震被害を考える上では、地震が首都直下で発生しなくとも、首都が強く揺れる危険性を考慮しなければなりません。


*1) 平成26年5月7日(水)12時00分 消防庁応急対策室、伊豆大島近海を震源とする地震(最終報)
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*2)第6回「首都圏の地震活動」/平田 直

*3) 相模トラフ沿いの地震活動の長期評価(第二版)について(平成26年4月25日)
※NHKサイトを離れます

(2014年6月30日 更新)