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落雷・突風

第9回  台風と竜巻の関係

執筆者

小林 文明
防衛大学校地球海洋学科教授 理学博士
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台風に伴う竜巻

昨年(2013年)9月に日本各地で竜巻被害が頻発したのは記憶に新しいと思いますが、竜巻発生時にはいずれも台風が接近していました。大気の大きな渦巻きである台風と竜巻の関係はどうなっているのでしょうか。

意外かもしれませんが、台風・ハリケーン・サイクロンに伴い、その内部や周辺で竜巻はしばしば発生しています。日本では、台風に伴う竜巻は全体の4分の1を占め、発生原因は温帯低気圧に次いで2番目です(第7回「怖いのは竜巻だけではない! 自然界にまだある危険な『渦』」/小林文明)※1)。これまでの研究から、台風に伴う竜巻は、台風の進行方向右側(北東象限)で、台風の中心から比較的離れた場所で発生しやすいことが分かっています。具体的には、台風の中心から半径数100kmも離れた場所で、レインバンド(台風の中心に向かって伸びる積乱雲の列)に伴って発生するといわれています。

台風に伴って発生した竜巻を、台風の中心に対する相対的な位置で表すと、台風の東側に集中しており、台風の中心100kmから600kmの範囲で多くの竜巻が発生したことが分かります(図1)。台風の中心から1000km以上離れて発生した事例もあるように、決して発生場所が決まっているわけではありません。台風の進行方向右側は「危険半円」と呼ばれますが、竜巻もまたその中で発生しやすいといえます。台風のレインバンドを構成する個々の積乱雲内で、メソサイクロンが形成されやすくなると、多くの積乱雲が竜巻を生むスーパーセル化し、レインバンドが進入する地域では次々とスーパーセルが上陸し、竜巻が発生しやすい状況が続くことになります。

なぜ、台風の中心では竜巻が発生しにくいのでしょうか。「台風の眼」には、弱い下降流が存在するため積乱雲など雲自体が発生しにくいと考えられます。ただし、台風の眼の周囲にできる「台風の壁雲」といわれる最も発達した積乱雲で、本当に竜巻が発生しないのかはよく分かっていません。

多くの竜巻を生む台風

2006年9月17日に宮崎県延岡市で、台風の強さを示すF(フジタ)スケールでF2(風速50~69m/s)の竜巻が発生しました。台風13号が長崎県に上陸する4時間前の17日14時過ぎに竜巻が発生し、上陸後は延岡市内を約7kmにわたって走り、死者3名、負傷者140名以上、市内の住宅被害のほか、JR日豊本線で特急列車が脱線するなど甚大な被害が生じました(図2)。延岡竜巻に関連して、10個近い竜巻あるいは竜巻と推定される突風災害が、最も早い時刻で当日11時に熊本県で発生し、20時30分の高知県まで約半日間にわたって発生しました。これは、台風が九州西方に存在し、北東に進みながら、レインバンド内のスーパーセルが次々と上陸した結果です。

台風に伴う竜巻は、台風からはるか離れた場所で、台風の暴風域に入る半日前や1日前、まだ晴れ間が見える時に発生するため、人的な被害が拡大しやすいことを意味しています。延岡竜巻でも、まだ風もそれほど強くなく、晴れ間が見えている午後、台風に備えて片付けや買い物をしようとしていた時に竜巻が市街地を襲ったのです。

人的被害の特徴

1961年からの50年間で、人的被害の生じた竜巻の月別発生頻度を(図3)に示します。9月にピークがあり、全竜巻の頻度分布と傾向は似ています(第1回 「日本中どこでも起こりうる竜巻の怖さ」図1/小林文明)※3)。9月に発生した人的被害を伴った竜巻の半数以上が、台風に伴う竜巻によるものでした。台風に伴う竜巻で人的被害が多い理由は、以下のことが考えられます。
1)F2クラスなど比較的強い竜巻が多い。
2)一度に多くの竜巻が発生する。
3)台風の中心付近暴風域から離れたレインバンドで生じる。
4)そのため晴れ間が見え、台風に備えて買い物や家の補強中に不意を突かれる。

2013年9月に発生した竜巻

2013年9月2日から16日にかけて、日本各地で竜巻被害が頻発しました。2日14時ごろ埼玉県越谷市から千葉県野田市にかけて、F2の竜巻が発生し、住宅地で甚大な被害が生じました。4日には、高知県宿毛市、安芸市、栃木県鹿沼市、塩谷町、矢板市、宇都宮市、三重県伊勢市と広範囲で竜巻が発生しました。さらに、15日から16日にかけて、和歌山県串本町、三重県志摩市、栃木県那須町、埼玉県滑川町、熊谷市、行田市、群馬県みどり市で、計10個の竜巻が発生しました(図4)。

この一連の竜巻は、8月から続いた猛暑と、停滞した前線、台風の接近という環境下で発生しました。9月15日から16日にかけて発生した10個の竜巻は、台風18号の影響を受け、12時間で10個の竜巻が広範囲で発生しました。台風18号が四国沖に存在した9月15日午後から16日未明にかけて、台風に伴うレインバンドが進入した地域では、海上で発生した背の低い積乱雲が南から次々と通過しました。2日埼玉県で発生した巨大な積乱雲に比べると、構造は大きく異なっていました。このように、台風接近時には広範囲で竜巻発生の可能性が高まりますが、竜巻を生む台風と生まない台風の違いはよく分かっていません。

*1)第7回「怖いのは竜巻だけではない! 自然界にまだある危険な『渦』」/小林文明
*2)高知大学気象情報頁
※NHKサイトを離れます
*3)第1回「日本中どこでも起こりうる竜巻の怖さ」/小林文明

(2014年5月30日 更新)