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液状化・地盤災害・土木被害

第8回  地震で港も被災する!

執筆者

安田 進
東京電機大学教授 工学博士
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港の施設が被害を受けやすい理由

港というと旅客船に乗り降りするターミナル港や漁船が着く漁港を思い浮かべますが、その他にも海に面した工場に製品を積み下ろしする港、タンクヤードで石油やガスを運ぶタンカーが着く港、火力発電所で天然ガスや石炭を受け入れる港など、さまざまなタイプがあります。これらの港には、船が着く岸壁、船に荷物を積み下ろしするクレーン、運んできた物を貯蔵しておく倉庫やタンク、それを利用する工場施設や発電施設、パイプラインなど、種々の施設が造られています。

港の施設は海岸を人工的に埋め立てられた地盤に建設することが多く、地震時に液状化して被害を受けやすい状態にあります。さらに、海に面しているため津波によっても被害を受けがちです。このような理由により、過去の大きな地震のたびに港の施設は、さまざまな被害を受けてきています。

岸壁の構造と被害のメカニズム

過去の地震において地盤の液状化により岸壁は沈下やはらみ出し、クレーンは傾き、倉庫沈下や傾斜するといった被害を受けてきました(写真1、2)。特に岸壁は構造上被害を受けやすく、大きな地震のたびに被害の程度の差はあるものの、必ずといってよいほど液状化や大きな揺れによって被害を受けてきています。

船が着くためにはある程度の深さが必要なので、背後の陸地との間に高い岸壁を設ける必要があります。この岸壁により背後の地盤が海に向かって崩れるのを防いでいます。岸壁の中にもコンクリートの箱で造った「重力式岸壁」や「矢板式岸壁」「桟橋式岸壁」など、種々の構造があり(図1)、それらによって被害を受けるメカニズムが少しずつ異なります。

「重力式岸壁」(図2)では、その下の地盤が液状化すると岸壁を支えきれなくなり、背後の地盤が液状化すると岸壁を海側に水平に押す力が強くなります。さらに揺れにより岸壁が海に向かって動こうとします。これらの作用により岸壁が沈下しつつ海に向かって傾いたり、動き出してしまいます。「矢板式岸壁」では土圧の増加によって鋼矢板が曲がったり、控え杭やタイロッドが支えきれずに鋼矢板が海に倒れるように傾きます。「桟橋式岸壁」では杭が破損して全体に傾くことが起きます。

液状化による岸壁の被害と対策

過去に岸壁に最も広範囲にかつ甚大な被害を与えた地震は、1995年の阪神・淡路大震災です。この地震では神戸港を中心に多くの岸壁が数メートルも海に向かって動き出し、傾斜しました。このために岸壁上に設置してあったクレーンは(写真1)のように足を開かれ、倒壊するものも生じました。そして船が着けなくなり荷揚げができなくなったことで生活物資の流通に支障をきたし、さらに海外との貿易にも大きな打撃を与えました。

液状化による被害が広く認識されるようになったのは1964年の新潟地震からですが、6年後の1970年には、岸壁の設計に液状化の影響を考慮するようになりました。したがって新しい岸壁では、液状化の被害を受けにくくなっていますが、古い岸壁では被害を受けやすいので液状化対策を施すようになってきています。

例えば、釧路港では1993年に起きた釧路沖地震の前に、すでに背後地盤を追加して改良し液状化しないように地盤を改良して対策を施していた岸壁(図3)がありました。地震が発生し、対策を施していない岸壁は海に向かってはらみ出す被害を受けましたが、対策を施していた岸壁では被害を受けませんでした。港の施設は地震が発生した際に、緊急物資などの輸送に重要ですので、このような対策が進められています。

津波による被害と課題

2011年の東日本大震災では、東北地方から関東地方の太平洋沿岸を大津波が襲ったため、各地で港の施設が甚大な被害を受けました。岸壁はもちろんのこと、倉庫、タンク、道路、鉄道など、数多くの港の施設が津波によって破壊され、流れ出しました。さらに上屋、水産加工場など、港の多くの施設が被災しました。例として、気仙沼漁港の被災状況を示します(写真3)。

津波で港の施設は種々の被害を受けましたが、なかには揺れや液状化によって、津波が襲う前にある程度被災していて、津波で被害がひどくなった施設もあるのではないかと考えられています。このように東日本大震災では、大きな津波によって港の施設が甚大な被害を受けることを改めて認識されました。津波の被害を防ぐために津波防止堤や防波堤を津波に対しねばり強い構造にするように検討が行われていますが、今後、発生が危惧される南海トラフ地震における津波に対して、どのように被害を防ぐのか大きな課題です。

(2014年4月25日 更新)