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家庭で出来る防災

第3回  家族で決めておくべきこと

執筆者

国崎 信江
危機管理教育研究所代表 危機管理アドバイザー
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自宅は安全か、確認しましょう

災害はいつ何時発生するか分かりません。家族と離れているときでも、全員が無事でいられるように災害時の行動について話し合っておきましょう。

まず、最初に家族で確認してほしいのは、自宅は安全な土地であるか、自然災害に耐えうる建物であるか、ということです。自治体が作成しているハザードマップ等で揺れやすさ・火災の延焼危険度・液状化・津波・土砂災害・洪水などの危険度を知ることができます。ほかにも、図書館で地元の郷土史から過去に自宅周辺で起きた自然災害の有無を調べたり、土地の成り立ちを調べたりすると、その土地が昔どんなところだったかを知ることができます(図1)*1)。水に関係する町名がついている場合は地盤をしっかり調べましょう。一般的に沼・池・沢・川・田・窪などの地名でありながら住宅地である場合は、それらを埋め立てた地盤の弱い場所であることが多いのです。これらの情報からその土地の災害被害の受けやすさを確認します。

次に、自宅の耐震性についても確認しておきましょう。自宅がいつ建てられたのかを思い出してみましょう。1981年(昭和56年)6月以降に建築確認を受けていれば、国土交通省の定めた現在の建築基準法の耐震基準(新耐震基準)に適合していて、震度6強から震度7程度の地震に対して、人命に危害を及ぼすような倒壊等の被害を生じないと言われています。

しかし、私はこの基準に適合しているからといって安心してはいけないと考えます。なぜなら建物は紫外線や雨風にさらされて経年劣化していくものだからです。建物は定期的にメンテナンスして傷んでいるところを補修しなければなりません。大規模修繕費用を積み立てして定期的に補修しているマンションと比較して、戸建てで積み立てして定期的にメンテナンスしている家はそう多くないでしょう。戸建ての点検で重視してほしいのは何といってもシロアリです。シロアリの被害に遭っていれば建物の耐震性はぐっと低くなりますから、新耐震基準に加えて家の傷み具合を点検して耐震性があるかどうかを確認しましょう。専門的知識のある人に耐震診断を実施してもらうのもよいでしょう。自治体では条件に合えば無料や補助などで診断料を助成してくれることもあります。

行動を決めておく ~家族を信じよう~

子どもが登下校時や塾、おけいこなどで外にいるとき地震に遭った場合に備えて、どのようなことを考えておけばいいでしょうか。それは、より安全な場所に身を置くということです。これは子どもであっても大人であっても、どの場所でどの状況でも変わりません。しかし、安全な場所というのは、地震が発生したそのときに瞬時に判断できるものではありません。だからこそ事前に火災・津波・液状化・土砂災害といった二次災害の危険度や、建物の耐震性などからどこに避難したほうが安全かを考えておくのです。

津波の恐れがあって自宅が海側にあるなら、家には戻らず高台や高い建物に向かって逃げる、自宅と学校の中間に居てどちらに避難すればよいか迷ったときには、より耐震性のある建物はどちらか、どちらが安全な経路であるかを考えて身を置く場所を決めておきます。選択の局面で判断に迷わないよう、間違えないように土地や建物等のリスク情報を事前に調べておくことが重要なのです。家族で話し合っておくことで探し回ることなく安否も確認しやすくなります。地震ならここ、火事ならここ、というように災害事象ごとに避難所を確認しておくことも大切ですが、子どもの年齢や理解度によってはあまり難しくすると混乱してしまうこともあるので、おおよその災害に対応できる避難所を一つ決めておく、というのも一案です。

大人が家からかなり離れた外出先で大地震に遭ったら、無理して帰宅を試みず、駅・オフィスや学校・帰宅困難者用に開設される避難施設などの安全な場所で様子を見ます。家族の安否が心配でじっとしていられないという気持ちは分かりますが、災害直後はむやみに動くほどリスクが高まることを忘れてはなりません。ここが安全だと思ったら動かないことが賢明です。無理して歩いて途中で命を落としたら家族に会えなくなることを忘れず、とどまる勇気を持つことです。混乱が収まり、災害や交通機関・道路の情報が入手できて、渋滞や人混みが緩和され安全に帰宅できるまで、ボランティアや事業継続などその場でできる最善を尽くしましょう。

私は常々、家族にはすぐには連絡を取らないようにと伝えています。大抵の人は揺れが収まったら一斉に家族や友人に安否の連絡を取りますが、その行動が命取りになることもあります。揺れが収まったからといって脅威が去ったわけではありません。津波、余震による建物倒壊、火災、土砂崩れなどさらなる危険が襲うかもしれないのです。東日本大震災でも家族に連絡をしていて津波に巻き込まれて亡くなった人がいます。家族が心配でも、今は自身が生き延びることに集中して、安全な場所に身を置くための行動をしてほしいと思います。発生から何時間かかるか分かりませんが、とりあえず大丈夫と思える状況になったらそこで初めて家族と連絡を取ります。決して、家族に電話することで家族の退避行動を阻害してしまうことがあってはならないのです。

『生きていれば必ず会える』ことを忘れず、お互いに『家族を心配せず生き抜く』ためには、心で『家族も生きている』と信じることが望まれます。そのために日頃から家族で災害時の行動を確認し合っておくことが重要なのです。

家族の待ち合わせ場所と連絡方法

わが家では家族の待ち合わせ場所は自宅です。それは自宅が安全と判断しているからです。しかし災害時は何が起きるか分かりません。自宅から避難する必要があった場合、近くの学校を待ち合わせ場所として決めています。そして待ち合わせ場所で確実に家族と会えるように、また、待つ側の家族の負担を減らすように、待ち合わせの約束をしています。都市部の場合、一つの避難所に人が多く集まることが予測されるので「○○学校に集合」ではなく「○○学校の校庭のジャングルジムの前に集合」と具体的な場所を指定しています(図2)。

さらに、「ここに朝の9時と午後の3時に集まろう」とその場所に集合する時間も決めておきます。その時間に20分過ぎても来なかったら次の時間に集まろう、とも決めています。つまり、家族が来るまで何時間も何日間もそこで待つことがないように、行き違いを恐れてトイレや食事を我慢することがないよう、待っている人の待ち疲れや不安といった負担を軽減するために詳しく決めているのです。帰宅困難で自宅になかなか帰れないという家族にとっても、9時までに待ち合わせ場所にたどり着くことが難しければ、焦ることなく安全を優先して15時を目指して行動することができます。「一刻も早く」と焦る気持ちを抑えることがきるのです。

家族との連絡方法は一つではなくいくつか準備します。携帯電話といった一つの連絡方法に頼るのではなく、つながらなかった場合のバックアップとしてNTTの災害用伝言ダイヤル171、携帯電話の災害用伝言板、Facebook、Twitterなどさまざまなツールでの連絡方法を何通りか考えておきます。わが家では、これらの決め事を忘れないようにA4サイズの1枚の紙に『国崎家のマニュアル』としてすべてまとめ、家族全員がかばんに入れるなど常に携帯しています(表1)。携帯電話の充電が切れても、相手の携帯電話の番号やFacebook、Twitterのログイン情報を紙に記載しておけば安心です。

親が亡くなったら

あまり考えたくないことですが、災害だけでなく予期せぬことで突然家族を残して亡くなることもあります。わが家では親が亡くなった後の子どもの将来を考えた備えもしています。子どもが経済的な不安を持たずに勉学できるよう、保護者が亡くなったら子どもが一定の年になるまでお金が支払われる育英年金付きの学資保険、生活費に困らないように死亡保障付きの生命保険に加入しています。成人になるまでの後見人についての説明や遺族年金、住宅ローン特約などについても子どもたちに説明しています(図3)。

生活費については、社会人になるまでの年月を考えれば毎月〇〇万円でやりくりしなくてはならないなど、かなり具体的な説明を子どもが幼稚園児のときから話をしていました。最初は何だかよく分からず、「とにかく死ぬなんて言わないでー」と泣いていた子どもも年齢が上がるごとに食費や光熱費などの家計に関心を持つようになりました。上の子は親が死んだら自分が兄弟の面倒を見なくてはと考えるようにもなりました。徐々に自分のことは自分でやる、という意識も高まってきたように思います。何よりも、いつ家族を失うかもしれない、という悲しいことを考えることで、いま家族全員が元気にいられることが当たり前ではなく幸せなことなのだと、家族で過ごす時間の大切さを感じることができているのは、大きな成果であると思っています。

これは、私自身が学生のころに突然最愛の家族を失い、立ち直るのに長い時間がかかった経験から、子どもたちにたとえ親を失っても希望を失うことなくたくましく強く生き延びてほしいと願う気持ちの表れでもあるのです。

常々、防災は家族を思う気持ちの表れだと思います。こんなに面倒で、費用もかさむことに一生懸命になれるのは、家族を守りたいと思う気持ちがあるからです。命を守ること、家族を守ることを諦めない、そんな親でありたいと思っています。

※1) 【図1】東京23区の地域危険度マップ (C)東京都都市整備局
※NHKサイトを離れます

(2014年3月14日 更新)