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地震全般・各地の地震活動

第8回  地震発生は予測できる!?

執筆者

平田 直
東京大学地震研究所教授、地震研究所地震予知研究センター長
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なぜ、地震予知は難しいのか?

地震は地下の岩石に大きな力が加わって生じる物理現象なので、地震を起こす力によって地震発生前にさまざまな現象があらわれます。もし、それらの現象を観測することができて、どのような現象が起きたらどんな地震が発生するか分かっていれば、地震発生を予知することができます。ところが研究を進めるにつれて、地震発生に先立つ現象(前兆現象)の発生のしかたは多様であり、時には発生しないこともあると分かってきました。そのため、地震予知は難しいのです。

日本周辺では、大地震の発生はまれでも、中小規模の地震は数多く発生しているため、でたらめに地震の発生を予言しても、偶然に当たってしまうことがあります(第3回「地震の大きさ、場所、発生時期にも規則性がある?」図3/平田 直)*1)。さらに、「明日東京で地震が起きる」という予言も、必ず当たります。小さな地震を含めると東京では毎日地震が発生しているからです。従って、「地震の発生をあらかじめ知ることができる」と主張するためには、地震の規模・発生場所・発生時期の三つを指定する必要があります。この三つを「地震予知の3要素」といいます。

さらに、地震予知が成功したか否かを判定することは、実は簡単ではありません。「地震予知の3要素」を厳密に考えた場合、予測の僅かな誤差があればすべて外れになり、逆に、誤差の許容範囲を大きくすれば、当てることは容易になります。「地震予知の3要素」の誤差の許容範囲を、予測する前にあらかじめ指定することは、予測が成功したかどうか判定するためには重要なことです。

東海地震の予知の方法と予知体制

日本で唯一地震予知の可能性があるのは、東海地方の太平洋沿岸から沖合にかけて発生すると考えられている大地震、「東海地震」です。ここでは、過去の南海トラフ沿いの地震発生履歴(第7回「いつ来る? 南海トラフ巨大地震~前編~」図1/平田 直)*2)から、いつ地震が発生してもおかしくない状況であると考えられています(図1)。「東海地震」はプレート境界で発生する巨大地震です(第4回「プレート境界の巨大地震」/平田 直)*4)。地震が発生する前には、震源域で「ゆっくりとした滑り(前兆滑り)」が発生することが室内実験や理論的な研究などで確かめられています(図2)。

「東海地震」の予知とは、地震の始まりを早期に検知することです。しかし、実際に「前兆滑り」が発生したとしても、観測できないほど小さい場合や、あっという間に地震が発生してしまう場合もあります。このため、気象庁も「東海地震が必ず予知できるとは限らない」とホームページなどで述べています。つまり、地震予知のための観測網や情報の伝達のしかたが準備されていても、不意打ち的に地震が発生する可能性も考えて、災害への備えをしておく必要があるのです。

地震活動の推移を予測する

いつ地震が発生するかを予測することは、現時点では大変難しいことです。しかし、指定した規模の地震が、ある領域と期間内に何回発生するかを予測することは条件が良ければ可能です。このことをここでは「地震活動の推移予測」と呼びましょう。地震は、日本の中でも一様に発生しているわけではなく、多発する場所と起きにくい場所があります。従って、過去に地震がたくさん発生している場所を調べることによって、将来の活動を予測することができるのです。

この予測では発生数を確率で表すことによって、予測が実際と矛盾したかどうかを統計学的に厳密に検証することができます。例えば(図3)には、2009年11月1日から3カ月間の地震分布(左)とその時期に発生する地震数の分布を予測した値(右)が示してあります(参考文献1)。この期間にマグニチュード4以上の地震は日本全国で15回発生しました。右図の予測では、地震数、地震の空間的な分布、マグニチュード別の分布のいずれも、実際に発生した地震とは矛盾しない予測でした。この実験では九つの予測手法が比較され、そのうち三つだけが統計学的なテストに合格しました。

このような、定量的な地震発生予測とその検証という実験は、アメリカ・カリフォルニアで始められ、現在、日本、ニュージーランド、イタリアなどで行われています(参考文献2)。これらの実験により、いろいろな考えに基づいて作られた予測手法のどれが現実の地震活動の推移を予測できるかが調べられています。

将来の地震予知

決定論的に、いつ地震が発生するかを予言するという意味の地震予知は、今も将来もできません。地震予知でも、将来は天気予報と同様に地震発生の可能性が高くなった場所を確率で表すことになるでしょう。つまり、「何月何日にマグニチュード7の地震が関東地方で発生します」という予報が出ることはなく、例えば、「来月に〇〇地方でマグニチュード6以上の地震の発生する確率は3%です。これは、最近10年間の平均確率の約100倍であることから、注意が必要です」といった表現となるでしょう。

天気予報と違って、大地震の発生確率は一般に大変低いため、仮に予測が正しくとも、短期間での発生確率は大変小さいことに注意する必要があります。将来は、プレート運動などによる地殻変動のデータを取り入れた力学的なモデルを組み込んだ総合的な予測法ができることによって、予測精度が向上するでしょう。気象庁が東海地方で監視している地殻ひずみのデータや、国土地理院が全国で観測している衛星測位システム(GNSS)*6)のデータなども利用して、地下の岩石の応力分布の推移が予測できる手法を作ることが重要です。

*1)第3回「地震の大きさ、場所、発生時期にも規則性がある?」図3/平田 直
*2)第7回「いつ来る? 南海トラフ巨大地震~前編~」図1/平田 直
*3) (C)気象庁ホームページ「東海地域の地震・地殻変動の観測」
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*4)第4回「プレート境界の巨大地震」/平田 直
*5)(C)気象庁ホームページ「「前兆すべり(プレスリップ)」とは」
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*6)GNSS“Global Navigation Satellite System(s)”=全地球航法衛星システム。複数の人工衛星からの電波を同時にとらえることによって、緯度・経度や高さなど調べたい対象の位置を瞬時に測定するシステム。GNSSはGPSを含むシステム。

参考文献
1) 平田直・楠城一嘉・鶴岡弘・横井佐代子(2011)、「地震予報」ができるかも?日本初の検証実験に91モデル、「中規模」なら予測に見通しも、地震学会広報紙「なゐふる」、84号(2011年3月)2-3. (PDF)
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2) Jordan, T. H. (2006), Earthquake predictability, brick by brick, Seismol. Res. Lett., 77(1), 3–6, doi:10.1785/gssrl.77.1.3.

(2014年3月20日 更新)