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大雪

第5回  吹雪はこんなに恐ろしい! もしもの時に身を守る方法

執筆者

佐藤 威
(独)防災科学技術研究所監事 理学博士
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吹雪によって視程が悪化する

小さな雪の粒子(直径がおよそ0.5mm以下の粒子で吹雪粒子と呼ばれる)が雪面上を転動・跳躍したり、空中を煙のように漂っている状態が吹雪です。気温が低く風が強く、そして積雪の表面が新雪か、降って間もない雪であるなどの条件が整えば起こる現象です。わが国では同時に雪が降っていることもしばしばです。吹雪が発生すると視程(肉眼で物体がはっきりと確認できる最大の距離)が悪化して交通事故などの危険性が増します。前々回(第3回「冬本番、寒波到来で危険は増える?/佐藤威)では、「ホワイトアウトの恐怖」と題して説明しましたが、今回は吹雪の恐ろしさについて、もう少し詳しく紹介します。

視程悪化の程度と風速・気温の関係は(図1)のようになります。この関係は野外観測から得られたもので、風が強くなると視程が悪くなることが分かります。気温が-2℃~0℃の間では、わずかな気温の違いによって視程が大きく異なります。これは、気温が0℃に近づくとともに雪の粒子の付着力が増して雪面から飛び出しにくくなり、強い吹雪が起こりにくくなるためです。

風の強さは一定ではなく絶えず変化しています。これを「風の息」といい、瞬間風速は平均風速の1.5~2倍程度になることもあります(台風情報でおなじみの最大瞬間風速に対応します)。(図1)によれば気温が-1℃の時、平均風速が6~8m/sでは視程は580mですが、瞬間的には風速が9~16m/sとなりますから、視程も瞬間的には130~460mまで低下することになります。

また、前々回(第3回「冬本番、寒波到来で危険は増える?/佐藤威)では、雪面に近いほど吹雪粒子が多く、それによって視程は高度が低いほど悪くなると書きましたが、その様子を(図2)に示しました。風速が15m/sの場合、高度2.4m(トラックなど大型車のドライバーの目線の高さ)の視程は約200mであるのに対して、高度1.2m(乗用車など小型車のドライバーの目線の高さ)の視程は約100mとなり、かなり見え方が違うのが分かります。

積雪地域では道路の除雪によって道路脇に雪の壁が出来ていることがよくあります。これを「雪堤」と呼びます。このようなところで吹雪が起これば、「雪堤」上の濃い吹雪が直接道路に吹き出し、これが車のドライバーの目線付近の高さを横切ると視程を著しく悪化させます(写真1)。

吹雪が止まってできる吹きだまり

空中を移動する吹雪粒子がその動きを止めて堆積すると「吹きだまり」ができます。そのメカニズムは二つあります。一つ目は障害物などによって風が弱められる場合です。(写真2)はこのようにして建物の近くに出来た「吹きだまり」です。建物の出入り口付近に「吹きだまり」が出来ると、火災などの非常時の避難路がふさがれ安全上問題となるため、常に除雪しておかなければなりません。この作業はかなりの重労働です。

また、「雪堤」のある道路では路面上の風が弱いので「吹きだまり」ができやすくなります。幅4mの道路の両脇に高さ1mの「雪堤」があり風速が15m/sの場合、概算ですが、この道路は約4時間で「吹きだまり」によって埋まってしまいます。このように強い吹雪の時には、あっという間に「吹きだまり」ができるので、行く時には普通に通れたのに、帰りは道路が埋まっていたなどということもありえます(写真3)。風が集まるところに吹雪粒子が集まり、一部が堆積し「吹きだまり」が出来ることもあります。これが二つ目のメカニズムで、具体的な例は次の項で紹介します。

エンジンをかけたままの状態で車が雪に埋まると、雪の通気性が悪いため逃げ場を失った排気ガスが車内に入ってきて、一酸化炭素中毒の危険性が高くなります。昨冬、北海道で「吹きだまり」に埋まった車内で家族4名が亡くなった事故は、これが原因となり起こったものでした。また、車内が酸欠になる可能性も指摘されています。

吹雪の災害を防ぐ防雪柵

吹雪による視程障害や「吹きだまり」を防ぐために、風が強い積雪地域の道路の脇に「防雪柵」と呼ばれる柵が設置され、幹線道路ではかなり普及しています。「防雪柵」にはいくつかのタイプがあります。(写真4)は「吹き払い柵」と呼ばれるタイプで、板を斜めに取り付けたものです。これにより、強い風と吹雪の流れを下向きに偏向させてドライバーの視界を確保するとともに、路面上の雪を吹き払って「吹きだまり」ができにくくするものです。(写真5)は「吹き止め柵」というタイプで、風上から来る吹雪を柵によってせき止め、風下にある道路に達しないようにするものです。

これらの「防雪柵」が設置されていれば道路の安全はかなり保たれるのですが、思わぬ落とし穴もあります。たとえば、大雪となって周囲の雪の高さ(深さ)が柵の高さに近づいた場合や、「吹き払い柵」の下部が道路を除雪した雪でふさがれた場合には、その効果が薄れます(写真6)。

「防雪柵」の切れ目や柵の端付近は、風が集まりやすく局所的に「吹きだまり」が出来やすい場所です。また、「防雪柵」は冬期間の強風の風向を考慮して道路の風上側に設置されていますが、気象条件によっては想定していた風向とは異なる風向の強風が吹くことがあり、そのような時には「防雪柵」の効果はなくなりますので注意が必要です。

ふだんよく通る道路であっても、強い吹雪が起こると思わぬ所に「吹きだまり」が出来ることがありますから用心しなければなりません。「吹きだまり」が出来る時には視程の悪化も同時に起こりますから、車で走っていて前方にできた「吹きだまり」が見えずに突っ込んで動けなくなる恐れもあります。

吹雪から身を守るには

吹雪の中では、視程が悪く目標物が見えにくくなるとともに方向感覚もまひします。また吹雪粒子が顔に直接当たるので、目を開けにくいことも、これを助長します。さらに吹雪の中では体感温度が気温よりかなり低下するということも、頭に入れておいた方がよいでしょう。吹雪が起こるのは風が強い時ですので、それによって体温が奪われるからです。体感温度の計算方法にはいくつかありますが、北米で使われている式で計算した結果が(図3)です。気温が-2℃で、風速が5m/sの時の体感温度は-8℃、10m/sの時は-10℃とかなり低くなります。

このように吹雪の中を歩く時の危険性はかなり高くなります。車があまり普及していないころは、吹雪の中を歩いていて行き倒れで亡くなる事故が時々ありましたが、最近では車で移動することが多いためほとんど起こっていませんでした。しかし、昨冬北海道で、吹雪の中を歩いて家に帰ろうとして5名の方が亡くなる事故が発生し、改めてその恐ろしさが認識されました。

吹雪の中で車を運転している時には瞬間的に目の前が真っ白になることがあります。思わずブレーキを踏んでしまい、スリップ事故を引き起こす恐れもあります。ドライバーの目線が低い小型車ほど視程障害の影響を受けやすいためこれらのリスクが高く、急に停止した小型車に大型車が追突する事故につながることもあります。このような危険性は、いずれも冒頭に書いた吹雪の性質に関係するもので、あらかじめ知識として覚えておくとよいでしょう。

万が一車が「吹きだまり」に埋まってしまったら、近くに安全な場所があり、そこまで歩いてたどり着くことができると判断される場合以外は、車中に留まる方が賢明です。その際、エンジンを切るのが最良です。もし、暖をとるためにエンジンをかけっ放しにするならば、頻繁に車の周囲の雪のたまり具合を確認し、特にマフラー周囲が雪で埋まらないように除雪して、常に排気ガスが外気に逃げるようにして下さい。このような事態に備えるために、冬期間は防寒具、手袋、長靴、スコップを車に常備しておくことをお勧めします。

さまざまな危険性をはらむ吹雪ですが、災害を防ぐためには、できれば吹雪を避け、やり過ごすのがよいと思います。風が弱まると必ず吹雪は収まります。天気予報などから今後の風の推移についての情報を得て、「危険な間は行動しない」ことが身を守ることにつながります。

(2013年12月12日 更新)