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家庭で出来る防災

第2回  災害時の備えに加えたい、女性が必要な物と被災後の掃除用具

執筆者

国崎 信江
危機管理教育研究所代表 危機管理アドバイザー
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口腔ケアを忘れない

断水を伴う災害時に、おろそかになりがちなのが口腔ケアです。被災直後からしばらくは貴重な水を歯磨きに使うことがためらわれ、口の中を清潔にすることが難しくなります。さらに道路の損壊や、がれきによる道路閉塞により流通に支障が出るため、今までのように食材を調達することができなくなり、食事をする時間や回数が不規則になります。食事の内容も、食中毒のリスクを減らすため火を通した油の多い弁当や個別包装されて配給しやすい菓子パンなど糖分の多い食事になりがちです。避難所にお菓子が届くようになると、保護者は子どもを静かにさせるためにお菓子を与えることもあり、いつでも何かを食べている「だらだら食」になりがちです。そのため被災地では子どもが虫歯になる問題がありました。小さい子どもの場合、乳歯が虫歯になると永久歯にも影響しますので、保護者は断水時であっても歯磨きの生活習慣を崩さないように努めましょう。

災害時の備えに、歯ブラシなどの口腔ケアグッズを入れていないという準備不足もあり、被災地では口腔ケアが十分にできず虫歯や歯周疾患で悩む人も少なくありません。特に、歯周病菌は歯ぐきの毛細血管から侵入し、体内に入り全身を巡ると動脈硬化や糖尿病、脳梗塞、心筋梗塞、肺炎などを発症・悪化させる恐ろしい口腔疾患です。また、高齢者は口の中で繁殖した細菌が気管に入ることで肺炎〈誤嚥(ごえん)性肺炎〉になることもあります。過去の震災では、この誤嚥性肺炎で亡くなる人もいました。義歯を装着している人は義歯ケースを忘れず、寝る前には必ず外し、義歯を清潔に保管しましょう。

虫歯予防のためには、出来る限り水でうがいをします。水がない場合は、水をつけずに軟らかめの歯ブラシで磨く、清潔なガーゼを水に浸して拭く、キシリトール入りガムをかむなどで工夫しましょう。あらかじめ、歯間ブラシ、液体歯磨き、歯磨きシート等を準備しておくことが理想です。被災生活では、水分をこまめに取り唾液を多く出すようにしましょう。

汚れている自分が許せない?

被災生活で食事が満たされてくると、気になってくるのが汚れです。泥や粉じんなどの衣服に着いた汚れと、汗や油といった毛髪や体内から発せられる臭い、洗顔、歯磨きが十分にできないことによる肌荒れと口臭。元来お風呂好きの日本人にとって、数日間お風呂に入れないことは肉体的にも精神的にも大きなストレスとなります。口臭が気になって人と話せない、汚れた髪や荒れた肌の状態で人に会いたくないと、人と接することを嫌がり、被災前は明るかったのに、元気を失くしてしまった人もいました。

特に女性は、洗濯ができず下着を替えられなかったことやお風呂に入れなかったことで生理中にデリケートな部分がかぶれてしまい、つらい思いをすることがあります。だからこそ、震災前からどのようなことに困るのかを知り、十分に備えておくことが大切なのです。

まず、口臭は前述の口腔ケアで予防できます。次にお風呂が設置されるまで、またはお風呂の施設を使えるようになるまでの間は、体を拭くためのウェットタオルや水を含ませたガーゼで顔の汚れを拭き取ります。乾燥する季節は保湿クリームを顔や手、かさつく腕や背中といった部位に塗り、唇もひび割れを防ぐためこまめにリップクリームをぬりましょう。髪は濡らしたタオルで表面の汚れをとり、オイルを湿らせた綿棒やガーゼで頭皮をマッサージして清潔にします。髪の毛が長い人は、前もって吸水性の良いタオルを用意しておくと髪の毛も乾きやすくなります。手のあかぎれがひどいときは、保湿クリームを夜寝る前に手に擦り込んでラップを巻いて寝ると痛みも和らぎます。

衣服の臭いや汚れを取るには洗濯が有効ですが、その水を調達するために近くの沢や井戸水が使えないか探しましょう。洗濯するときは、上着より下着から優先的に洗濯しましょう。また、乳幼児がいる場合は多くの着替えを必要とするため、優先的に洗濯できるように配慮しましょう。女性は下着が盗難に遭わないよう、また周りに無駄な刺激を与えないように洗濯物を干せる適当な場所を探しておきましょう。下着を人目につく場所に干したくない時は、軽くタオルで巻いたカイロで両側から挟んでおくと乾きやすくなります。生理中なら清浄綿を使用したり、ペットボトルのキャップにキリで数か所穴を開けて簡易的なビデを作るなどしてかぶれないように対処しましょう。

ある避難所では、髪の毛が食事に入らないようすべての女性が炊き出しの際にシャワーキャップをつけていましたし、着替えの洋服がないなかで洋服を汚さないようにかっぽう着やエプロンを着用するなどの工夫をしていました。身近にあるもので困難を乗り切る知恵は素晴らしいものです。汚れに対して敏感な日本人だからこそ、あらかじめこの視点での備えを忘れないようにしたいものです。

犯罪から身を守る

警察庁の震災後の被災地における犯罪情勢をみますと、東日本大震災では混乱に乗じて相当数の犯罪がありました。主な犯罪は、燃料や自動車を盗む、無人の民家や店舗への窃盗、店舗荒らしなどで、被害額総計が高額だったのはコンビニATM等を狙った窃盗でした。また、時間の経過とともに暴行や傷害などの粗暴犯や“義援金名目で金品をだまし取る詐欺”“屋根の修繕や住宅設備の点検として高額な修理・点検代を請求”“放射線測定や除染等にかこつけ物品を販売する”など震災に便乗した詐欺や悪徳商法の犯罪が発生しました。

外だけでなく、避難所の中であっても手元に置いてあったものや親族から送られた物資が盗まれたという被害に遭っている人がいました。自宅が被害に遭った人は貴重品や思い出の品を避難所に運んできますが、残念ながらセキュリティボックスがないため、ほんの少し目を離しただけで盗難に遭う恐れがあります。そのため必ず家族を残して外出する、寝ているときにも貴重品を肌身離さず寝るなど警戒していました。さらに、避難所の中ではストレスが原因とみられる避難者間の言い合いやけんかなどのトラブルも多く報告されています。

女性にとって深刻な問題は、のぞき、強制わいせつ、強姦といった性犯罪の被害でした。外出するときは防犯ブザーを携帯する、暗くなったら外出を控え、日中でもできるだけ複数で行動することが大切です。トイレは決して一人では行かず、使用する前に不審なところはないか確認するようにしましょう。

被災地にはさまざまな目的で見知らぬ人が入ってきます。その中にボランティアを装い犯罪目的で入ってくる人がいるかもしれません。住み慣れた町だからと安心せず、死角になる場所は警戒する、貴重品は肌身離さず持つ、他人のいるところでお金の話をしないなど、被害に遭わない意識と行動を心掛けましょう。自然災害で疲労しているところに犯罪の更なる被害が重ならないよう、地域で夜警や日中のパトロール、避難所内での注意喚起など、お互いに協力して犯罪を減らすようにしましょう。

自宅での生活に欠かせない道具とは

建物の構造に被害がない場合、多くの人が住み慣れた自宅に戻ることを希望します。今後、都市部で大きな地震が起きた時も、マンションの自室で生活を希望する人も多いでしょう。ところが、それを阻むのが室内の破損物です。物の固定や飛び出し防止対策など室内の安全対策が十分に施されていなければ、家具や家電製品が転倒、飛来落下し、さらに棚から飛び出した書籍や食器、生活雑貨類が床に飛散していて足の踏み場がない状態になっていることでしょう。

被害を受けた多くの被災者がうんざりするのが、どこから手をつけていいのか分からないほどの破損物の多さです。室内の後片付けは想像する以上に絶望的な気持ちになります。大切なものを失った喪失感、思い出を壊された虚無感、今後の片付けに対する疲労感、失ったものを買い替える財政的な不安感など、住む人に与えるダメージは大きいものです。このダメージを少なくするには、事前対策として生活にあまり必要ないものは潔く処分して、物を少なくする「整理」と、必要なものを失わないようにする「転倒・飛散防止」対策が有効です。その上で、準備品として被災した時用の掃除用具を用意しておくとよいでしょう。

後片付けで一番厄介なのが、割れたガラスの取り扱いです。室内には、窓ガラス以外にも照明のガラス管や食器類、装飾類の割れ物が意外と多くあるものです。壊れた家具を排除する際にも、ガラスを触ってけがをすることが少なくありません。自宅で暮らそうにも、ガラスが散らばっていては安心して室内で過ごすことができなくなります。けがをすることなく、寝る場所や食事ができる空間を確保するには、早期に後片付け・掃除を始めなくてはなりません。

ところが、日常なら掃除機が使えても、災害時は停電していることが多いので使えません。そのために準備したいのが、ほうきやちり取りなど電気を必要としない掃除道具です。ぜひ準備してもらいたい必需品は、とがった物をつかんでもけがしにくい「突き刺し防止手袋」、ガラスを踏んでもけがをしない「安全靴」、破損物を破棄するのに役立つ「ガラ袋・土のう袋」です。

後片付けは、まず手袋をはめた手で大きな破片を袋に入れ、ほうきやちり取りで目につくものを拾います。細かいガラス片は粘着ローラーやガムテープで取り除きます。この時点で床がきれいになったように見えても、ガラス片の見落としがあるかもしれないので念のためにブルーシートを敷くとよいでしょう。窓ガラスが破損し、窓枠に破損した残りの欠片があればけがに注意しながら取り除き、その後にブルーシートで窓を覆い、強力な粘着力のテープでブルーシートを固定します。これで雨風の侵入を応急的に防ぎ、さらに、不審者の侵入を防ぐために窓際に家具を移動させればより安心です。特にバルコニーの窓ガラスなど侵入されやすい窓が破損した場合には、人感センサーで点灯するライトを設置する、防犯砂利を敷くなどで侵入者への威嚇・早期発見ができるようにしておきましょう。いつでも異常を周りに知らせるように防犯ブザーや笛を用意しておくことも忘れないようにしましょう。

また、風水害、土砂災害、津波の被害を受けた場合には泥汚れもありますので、バケツ、シャベル、長靴、作業着、抗菌剤などがあると重宝します。被災地では余震が落ち着くなどの時間の経過とともに自宅の後片付けをする人が多くなり、それに伴い掃除用具を求める声も多くなりました。後片付けに必要な道具はすぐに売り切れますので、あらかじめ用意しておくことをお勧めします。

(2013年12月3日 更新)