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地震全般・各地の地震活動

第7回  いつ来る? 南海トラフ巨大地震 ~前編~

執筆者

平田 直
東京大学地震研究所教授、地震研究所地震予知研究センター長
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西南日本太平洋沿岸で繰り返す巨大地震

歴史記録に基づくと、東海地域沖、東南海地域沖、南海地域沖にかけては、同時に発生したり、数年の時間を経て発生した場合も含め、白鳳(天武)地震(684年)以来、少なくとも9回の巨大地震の系列が知られています。白鳳地震、仁和地震、永長東海・康和南海地震、正平東海・正平南海地震、明応東海地震、慶長地震、宝永地震、安政東海・安政南海地震、昭和東南海・昭和南海地震
(図1)がそれです。

近代的な観測が行われるようになった1885年より前の大地震については、古文書や日記などの歴史資料に表された被害についての記述から震源域が推定されています。このような地震を「歴史地震」といいます。西日本に都があった時代には、時の朝廷や荘園領主に大きな経済的影響を与えたため、古代から被害が記録され、西南日本は世界で最も古い時代まで地震の姿が分かっている地域です。とはいえ、これらの地震像は、都のある場所や人口の分布による影響を強く受けているので、近代の地震に比べて不確かな点が多いことに注意する必要があります。

南海トラフで過去最大の宝永地震と、最近の昭和地震

「歴史地震」、近代の地震を含めて、西南日本で起きた最も大きな地震は宝永地震(1707年/M8.6)です。2011年の東北地方太平洋沖地震(M9.0)が発生するまでは、国内で最大の地震でした。宝永地震は1707年10月28日(宝永4年10月4日)に発生し、伊豆半島の南西沖から四国沖合までの領域が一度にずれ動き、大きな津波と強い揺れを発生させました。

翌日には富士山西麓付近でM6.5程度の地震が起き、1か月後には富士山が噴火(宝永噴火)しました。宝永地震によって発生した震度6弱以上の強い揺れは甲信地域から九州東部にまで及び、津波は伊豆半島から四国沿岸の広い範囲で高さ5mを超え、紀伊半島の現在の尾鷲市(三重県)の付近では8~10mに達しました。津波の詳細については、都司嘉宣先生コラム「第5回 西日本の千年震災・宝永地震(1707)の津波」を参照してください。

最近の例では、昭和東南海地震(1944年/M7.9)と昭和南海地震(1946年/M8.0)が挙げられます。第2次世界大戦終結前後に、2年の間隔で発生しました。1944年の地震では、震度5弱相当以上となった範囲が、近畿地方の一部、紀伊半島東部から静岡県御前崎まで、南海トラフの東側の沿岸域に広がっています。紀伊半島西部から伊豆半島の太平洋岸を高い津波が襲い、紀伊半島東部沿岸で6~9mに達しました。

1946年の地震では、震度5弱相当以上となった範囲が、九州の一部、四国南部・東部、紀伊半島および近畿・中国・中部地方の一部と、西南日本の西側に広がりました。津波は九州から房総半島南部の太平洋沿岸を襲い、四国や紀伊半島の太平洋沿岸では4~6mに達しました。

フィリピン海プレートの運動が発生原因

西南日本の太平洋沿岸域に被害を及ぼすような巨大地震は、日本列島の南方にあるフィリピン海プレートの運動によってもたらされています。このプレートは年間5cm程度の速さで北西方向、日本列島へ向かって進んでいます。例えば、小笠原諸島の父島とアジア大陸の距離は年間6~7cm縮んでいることが、人工衛星を使った観測によって測定されています(1)。

フィリピン海プレートは、西南日本の南方にある相模トラフ・南海トラフ・南西諸島海溝から日本列島の下に沈み込んでいます。この沈み込む動きが、南海トラフ沿いで巨大地震が発生する原因です。フィリピン海プレートの西北進に伴って、駿河湾から四国、大分県に及ぶ広い範囲で北西から西北西方向に縮んでいます。東海沖から室戸岬にかけては、内陸部に対して年間2~5cm程度の西北西方向の縮みが観測されています。

(1)海上保安庁
http://www1.kaiho.mlit.go.jp/KOHO/kouhou/chichijima/chichi.htm#zu1
※NHKサイトを離れます

海溝としては浅い南海トラフ

九州の太平洋沖から東海沖にかけてのフィリピン海プレートは、南北に連なる紀南海山列を拡大軸として、今から1,500万年前まで拡大を続けた「若い」プレートです。プレートは誕生してから年代とともに冷えて重くなるため、自重で沈下して、水深は海底年代とともに深くなります。

南海トラフは日本海溝と同じように海洋プレートの沈み込み口(海溝)ですが、水深が日本海溝(最深部約8,000m)や伊豆―小笠原海溝(最深部約9,000m)に比べて浅く、最深部で約4,900mです。南海トラフは、東北地方の太平洋沖の太平洋プレートなどの古いプレートと比べて温かいからです。さらにトラフ底には陸源性の砂岩と泥岩の互層が600m以上堆積していることも、南海トラフが海溝としては浅い理由です。また、海洋プレートの上部に堆積した軟らかい岩石が、沈み込みに伴って四国沖や紀伊半島沖に付加して厚い堆積層(付加体)を形成していることも特徴です。

「NHKそなえる防災」第7回 いつ来る? 南海トラフ巨大地震 ~後編~(平田 直)につづく

(2013年12月3日 更新)