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火山噴火

第2回  終息しない桜島の火山活動 ~桜島の噴火の歴史 ‐2~

執筆者

石原 和弘
京都大学名誉教授 火山噴火予知連絡会副会長
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噴火が止まらない

1955年10月13日午後3時前、鹿児島県の桜島南岳山頂火口で、突如爆発音を伴って噴火が発生しました。南岳から約1km離れた北岳に居た登山者の頭上に噴石が落下し、1名が亡くなり、9名が負傷しました。この噴火が端緒となって、現在まで58年間、毎年噴火を繰り返してきました。この間に噴火した他の火山は、数日~数年の噴火活動の後に眠りに就いています。伊豆七島の三宅島(東京都)は1962年、1983年と2000年の3度噴火し、北海道の十勝岳、有珠山、宮崎県の霧島山新燃岳は2回噴火しています。長期化した1990年11月に始まった長崎県・雲仙普賢岳の噴火も、5年半余りで終息しています。

桜島の噴火のうち、空気振動(空振)の発生と噴石の放出を伴い、噴煙がキノコ雲になる噴火(ブルカノ式噴火)を“爆発”と呼んでいます。1955年からの爆発回数の推移をみると、大きく三つの活動期に分けられます。

第1波の活動期:1955年10月13日の爆発に始まり、1960年に活動のピークを迎え、次第に活動が収まっていきました。

第2波の活動期:1972年10月2日の、大きな爆発音を伴い噴石を火口から3km付近まで飛散させた爆発を契機に急激に活動が高まり、1974年から約20年にわたり毎年500万~3000万トンの火山灰を噴出し、降雨のたびに土石流が発生しました。1974年には8名が土石流で亡くなりました。鹿児島県民は日常生活を含め、さまざまな場面で降灰やレキ(直径数mmから数cmの小さな噴石)などに悩まされ、農業を中心に深刻な経済的被害を受けました。

第3波の活動期: 1946年に溶岩を流出した南岳東斜面の火口跡(昭和火口)で、2006年6月4日に58年ぶりに発生した噴火をきっかけとした現在に至る活動で、2009年後半から爆発的噴火活動が激化しています。年に数回、南岳山頂で噴火が発生していますが、爆発のほとんどは昭和火口で発生しています。

年間の爆発回数からみると、現在の第3波は以前に比べて数倍活発に思えますが、放出された火山灰の量は第2波の半分程度です。つまり、昭和火口の1回の爆発で放出される平均的な火山灰量は、山頂火口の爆発の数分の1程度と小規模です。地下から昭和火口に向けてマグマが噴出するパイプ、即ち火道の大きさが、南岳山頂火口の火道に比べて細いために、一度の爆発で出る火山灰が少ないと考えられます。昭和火口の火道も噴火を繰り返すことによって次第に大きくなり、噴火の規模も大きくなるでしょう。

絶え間ないマグマの上昇

桜島の噴火が盛衰を繰り返しながら半世紀以上続いているのには、それなりの理由があります。わが国20世紀最大の1914年大正噴火では、火山学の最大の関心事であり、火山噴火予知にとって重要な“マグマ溜まり”の存在についての画期的な発見がありました。

大正噴火の20数年前、陸軍の陸地測量部は地図作成のために国道に沿って水準測量を実施していました。大正噴火直後に再度測定すると、桜島の北側の鹿児島湾――姶良(あいら)カルデラ――を中心として、南九州全域の地盤が同心円状に沈降していることが判明しました。沈降量は、鹿児島湾沿岸部では50~100cmに達しました。大正噴火が収まった1915年以降現在までの約100年間は、逆に姶良カルデラ周辺の地盤が隆起していることが分かりました。

ただ、大正噴火の噴出物量の約10分の1の、約2億立方メートルの溶岩と火山灰を噴出した1946年には一時的に沈降し、南岳の山頂噴火活動がピークに達した1960年からの約2年間と毎年500万~3000万トンの火山灰を噴出した1974年からの約20年間は、地盤の隆起がほぼ停止しました。

このような姶良カルデラの地盤の変動と火山活動の関係から、(1)姶良カルデラの中心部の地下約10kmにはマグマ溜まりが存在し、(2)地下深くから絶え間なく年間1000万立方メートル程度のマグマの供給を受けてマグマを蓄積して地盤を隆起させ、(3)噴火により噴出したマグマが供給とほぼ同じ量になると隆起が停止し、噴出量が供給量を大きく上回ると地盤が沈降すると考えられます。

1914年大正噴火の前の桜島の大噴火は、1779~1782年の安永噴火です。安永噴火後の132年間に、年間1000万立方メートルのマグマ蓄積が進行したとすれば、大正噴火前に1.32立方キロメートルのマグマが蓄積した勘定になり、大正噴火の噴出量と大まかには一致しています。年間1000万立方メートル程度のマグマ供給は200年以上前から続いていたと考えられます。私たちは、桜島の火山活動は将来も続くことを前提に活火山桜島との共生を考えるべきでしょう。

火山観測で噴火の兆候を捉える

1955年10月の桜島南岳の噴火を契機として、大学や気象台によりさまざまな観測と研究が継続して行われた結果、(図3)に示したように、桜島の地下のマグマの動きをある程度捉えることができるようになってきました。桜島内での水準測量による地盤変動の研究により、桜島の地下3~6kmには姶良カルデラとは別にマグマ溜まりがあることが分かりました。また、火山性地震の研究などから、桜島のマグマ溜まりから南岳山頂へつながるパイプ状の火道の存在が推定されました。深さ約3kmまでの火道では爆発地震、B型地震など火山特有の低周波の地震や微動が発生し、普通の地震と同じメカニズムで発生する高周波のA型地震は、火道の周りや火山体やカルデラの周辺で発生します。

桜島の噴火活動が活発化する数か月~数年前には、桜島の地下へ姶良カルデラからマグマが移動・上昇して桜島の地盤が膨張します。GPS、験潮儀(けんちょうぎ:海面の高さを測量する装置)や水準測量による地盤変動観測でマグマの蓄積状況を評価できます。また、姶良カルデラや桜島の南西沖でのA型地震の多発も、活発化の前触れと考えられています。

桜島の地下にある程度のマグマが蓄積し、噴火の準備段階にさしかかると、山頂の地下でB型地震や微動が多発します。低周波のB型地震は、火口への溶岩上昇に関係していると考えられます。低周波のB型地震が数時間群発した後は、数日から数週間にわたり爆発的噴火が頻発します。山頂直下での大きなA型地震の発生や高周波のB型地震の多発は、噴火活動の急激な高まりにつながることが経験的に知られています。

桜島南岳山頂火口の北西約2.7kmには京都大学の観測坑道が、昭和火口の南約2kmには国土交通省の観測坑道があり、それぞれに水管傾斜計と伸縮計が設置してあります。一つ一つの噴火の数10分~数時間前からのマグマ溜まりや火道内の圧力増加によって生じる火口周辺の、ごく小さな地面の傾斜やひずみを検知できます。傾斜やひずみの大きさは、概略噴出する火山灰の量に比例します。

現在桜島では、地震や地殻変動の観測と併せて、重力や火山ガスの観測、降灰量の調査や噴出物の分析や人工地震などによる地下構造の探査なども実施されています。しかし、マグマの移動経路やマグマ溜まりの形状の実態はよく分かっていません。

桜島の噴火予知と火山情報

1955年の桜島南岳の爆発をきっかけに、地元の自治体は南岳山頂を中心に大きな噴石が頻繁に飛散する2km以内を、常時立入禁止にしました。1970~1980年代には噴石が2kmを超える爆発も珍しくなく、幾度か桜島南部の有村町や古里町に大きな噴石が落下し、鹿児島市の支援を受け、住民の一部は桜島の外に移転しました。当時、鹿児島地方気象台はB型地震が群発すると、溶岩が南岳火口に溜まったと判断し、大きな噴石に対する警戒を呼びかけました。

2006年6月の昭和火口の噴火再開を受けて、大きな噴石と火砕流(熱雲)の危険性のある昭和火口から2km以内を、常時立入禁止区域に加えました。気象庁の噴火警報の警戒レベルが2に下がっても、立入禁止措置は継続されます。前述のように桜島の火山活動が止む気配はなく、住民も行政も、静穏な状態は次の噴火の準備と認識しているからです。現在の爆発の準備時間は数10分から数時間と短く、個々の爆発の予知は住民にとってはあまり意味がありません。それよりも、大きな噴石、溶岩流、火砕流などが集落に達するなど、日常生活が脅かされる規模の噴火が起きる事態が迫っているかどうかの判断が、桜島の噴火予知に求められています。

桜島のように連日噴火が起きている火山の周辺の人々や行政にとっては、もっと切実な問題があります。降灰が急増した1974年ごろから、空を見上げたら目に見えない火山灰の粒子で目を傷める、洗濯物に灰がつく、40~50km離れた志布志湾では天日干しの魚に灰が付くなど、降灰の多少にかかわらず鹿児島県民の日常生活に不便が生じました。県民の要望を受けて鹿児島地方気象台が始めたのが「桜島上空の風予報」です。高層気象台の定時の観測結果と予報が、朝夕の天気予報の時間に放送されました。現在では、気象庁のホームページで1時間ごとの予想を見ることができます。さらに、大きな噴火が発生した時には、降灰範囲も示した降灰予報が発表されます。

2006年に始まった昭和火口の噴火は2009年ごろから爆発的になり、空振が桜島東部の黒神などの集落から宮崎県の都城市あたりまで聞こえました。強い空振は、家を横から衝撃的に大きく揺らします。特に、就寝中に突然家が揺らされると、誰しも何が起きたのか、直下地震が起きたのかと不安に陥るでしょう。地元の放送局は、住民の要望を受けて、噴火発生直後に気象台から発表される「噴火に関する観測報」の内容――噴火の発生時刻、噴煙の上昇高度や流れる向きなど――を即時に「桜島噴火情報」として地上デジタル放送、携帯電話やパソコンで確認できるサービスを開始しました。

今や災害に関する情報は、多種多様になっています。情報の内容、伝え方などについては、情報発表機関が専門家などに相談して改良を加えてきていますが、情報を受けて利用する側が、積極的に要望を伝えることも大切です。

(2013年10月31日 更新)