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家庭で出来る防災

第1回  楽しみながら継続する防災の知恵

執筆者

国崎 信江
危機管理教育研究所代表 危機管理アドバイザー
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コツコツ防災のススメ

防災にはやり廃りがあってはなりません。地震大国に暮らす以上、いつ大きな地震に見舞われても被害を最小にするために常に備えることは当然、という認識をもちたいものです。しかし、防災は面倒であったりお金がかかったりと、その言葉を聞くだけで大きな負担を感じる人がいます。また、大規模な災害が起きると防災意識が高まり、一気にやってしまおうという人もいます。このような場合、大抵は長続きしません。防災で重要なのは、生活に定着させて習慣化していくことです。残念ながら、防災には「これで大丈夫」といえる絶対的な対策はありません。社会構造や環境が変化すれば災害のありさまも変わるので、対策もまたその時代に見合うよう進化させていかなくてはなりません。継続は力なりというように、まさに防災も積み重ねて蓄積した実績を力に変換させていくものです。

そこでお勧めするのが、「コツコツ防災」。防災に充てる費用を決めて年間のスケジュールを立てます。例えば、毎月の防災予算を3,000円と決めたら、その中でできることを積み重ねていきます。毎月ガラスの飛散防災フィルムを購入し、1月は食器棚のガラス扉、2月はキャビネットのガラス面、3月はリビングの窓ガラス、4月は浴室の窓ガラスというように計画通りに実施していきます。そうすると、家じゅうのガラス対策をするだけで1年以上かかり、さらにすべての棚に滑り止めシートを敷く、扉にストッパーを取り付ける、家具に固定器具を取り付ける、備蓄品を用意するとなれば相当の時間がかかります。このようにしてわが家は18年間継続して防災対策に取り組み、安全性を高めてきました。もちろん今も継続中です。

無理のない予算を決めてその範囲でできる対策を実施していくことにより、費用面や精神面の負担を軽減でき、継続しやすくなります。私がそうであったように、毎月自宅の安全性が高まっていくことで、達成感が高まり家族を守る喜びが感じられるはずです。

素材選びで安全度を高める

大きな揺れでけがをしないために、室内の安全対策が重要であることを理解はしていても、家具を傷つけること、壁に穴を開けること、部屋の雰囲気を損ねてしまうことにストレスを感じる人もいます。できれば毎日目にするものにストレスを感じないようにしたいものです。我慢や無理をすると長くは続きませんから、生活の楽しみの一つとして取り組む方法を紹介します。それは、インテリアを楽しみながら安全性を高める「安全な素材選び」です。

大きな揺れでは、家にある固定していないものすべてが凶器になります。自分の好みでそろえた品が自分や家族の命を脅かしたり、奪ったりすることのないよう、家庭では安全な環境を優先してなるべく物を置かない、飾らないようにしたいものです。ただし、毎日の生活で楽しく暮らすことを諦めなさいということではありません。例えば家族の写真を飾るのが好きな人は、ガラス製や銀製といった重い写真立てのフレームを、軽くて壊れない布製や革製のものに変えてみてはいかがでしょう。フレームだけでなくガラス板もアクリルシートに換えれば床に落ちても飛散することはありません。照明は、じか付けタイプやダウンライトがお勧めですが、つり下げ照明が好きならば、カバーを和紙やシリコン素材のモダンなデザインを選ばれてはいかがでしょう。ほかにも、ティッシュカバーをレースに、掛け時計は針と数字を直接壁に貼るシンプルでスタイリッシュなタイプに、壁が寂しいときは額縁ではなく、ウオールシールで華やかにする、シリコン素材の目覚まし時計を選ぶなど、新規の購入や買い替えの際に、軽くて、床に落ちても鋭利に割れない、飛び散らない安全素材を選びます。街中によくある雑貨屋さんなどでも、安全素材でできたさまざまな商品を見かけることが多くなりました。このような視点で商品を探すのもなかなか楽しいものです。

「ついで防災」のススメ

楽しいことなら積極的に行動できるものの、防災はつい「そのうち」というおっくうな気持ちが出てしまいがちです。あのときしっかりやっておけばよかったと後悔する前に、ぜひ実践してほしいのが「ついで防災」です。これは、防災のために時間をつくるのではなく、何かのついでに防災もやってしまおうという発想です。例えば、年末の大掃除に窓をピカピカにするのであれば、そのついでに飛散防止フィルムを貼ってしまう、家具を少し移動して隅を掃除しようという場合には、ついでに安全な場所に配置換えをしてしまう、家具上部のほこりを払ったついでに固定器具を取り付けてしまう、といった方法です。ほかにも、役所に行く用事のついでにハザードマップを入手する、図書館に行くときは防災の本も借りてみる、買い物に行ったとき安売りや特売日に合わせて災害時の飲料水や食料などの備蓄品を買うなど、外出時にも「ついで」を意識してみます。

ちなみに、わが家では1か月分の備蓄をしています。食料だけでなく、生活に必要な消耗品のほとんどを1か月分多めに備蓄しています。1か月分の備蓄となると、お金がかかると思われるかもしれませんが、わが家では家庭内流通備蓄をしています。災害のための備蓄というより、普段の生活に必要なものを多めに用意しておいて、日常生活で消費したら補充する、という考えです。「家庭内流通備蓄」を推奨して十数年が経ちますが、ありがたいことに社会にずいぶん浸透してきているように思います。

「ローリングストック」というカタカナ文字で表記されることもあります。アルファ米や乾パンなどの非常食ばかりをそろえると、賞味期限が迫り平時にそれを食べるとき、つらく感じてしまうこともあります。捨ててしまう備蓄方法にもったいなさを感じた体験や、食べ慣れた味で栄養バランスの良い食事をとりたいという思いから「家庭内流通備蓄」が始まったのです。レトルト食品の賞味期限は長くても1年程度ですが、日頃の食卓で消費したら買い足すというシステムにすると、賞味期限はさほど気にならず、しかも災害時にはバラエティーに富んだ献立を作ることができます。レトルト商品はスパゲティのソース、牛丼、親子丼や中華丼などの丼物、スープなどさまざまな種類があり、温めるだけで食べられる手軽さが災害時にも向いています。ほかにものりや煮干しなどの乾物や果物の缶詰、野菜ジュースや果汁ジュース、梅干しや蜂蜜などの長期保存の食材も役に立ちます。食事の面でも、買い物のついでに災害時の食事をイメージして準備することで食材選びの楽しさも増すことでしょう。

趣味や関心ごとと防災を関連付ける

正直に言えば、防災に対してほとんど関心のない人に、いくら防災訓練や防災講演会への参加を促しても、残念ながら参加率や反応は芳しくありません。これだけ言っても分かってくれないという主催者の嘆きが聞こえます。つまるところ、今まさに自分の身に危険が迫っている、という状況でもなければ意識は高まらないというのが実情のようです。関心のない人には、普段から高い意識を持って災害に備えることの重要性や意味さえ理解し難いのかもしれません。しかし、危険が迫ってからそれに気付いても、もはや遅いのです。一人でも多くの命を救いたい、なのに地域住民の防災意識が低い、どうしたらいいかと悩んでいる人に提案したいのが「趣味や関心ごとと防災を関連付ける」方法です。

例えば、草木や花を育てることが大好きな人には、常緑広葉樹の苗木をプレゼントしてはいかがでしょう。自宅の庭に苗木を植えれば、育てる楽しみに加えて成長したら防火林として火災から自宅を守ってくれると説明すれば、育てがいがあるはずです。近年ペットブームで犬を飼っている人を多く見かけます。そこで、災害時に頼りになる災害救助犬として訓練させることを勧めてはいかがでしょう。地域のために活用するというより、飼い主が生き埋めになったときにほえて周囲に異常を知らせてくれるだけで十分です。迅速な発見から救命につながるという期待がもてます。災害救助犬は犬種を選びませんから、どの犬も活躍できます。飼い主にとっては訓練を受けさせることによって、しつけや運動も兼ねるので一石三鳥というところでしょうか。料理が好きな人なら、ライフラインが途絶えた時でも栄養バランスのとれたおいしい食事が作れる献立を考えて、その食材を家庭内流通備蓄で準備しておけば、災害時にはことのほか家族から感謝されるでしょう。

さらに、体を動かすことが好きな人は、避難所でできる運動メニューを考えておくことで、災害時の健康維持に役立つでしょう。ウオーキングが好きな人なら交通機関が途絶えた際に歩いて行動することもトレーニングと割り切ることができれば苦はないはずです。裁縫の得意な人は、ポケットのたくさんついた防災ベストを作ってみてはいかがでしょう。このように、おのおのの楽しみに防災のエッセンスをプラスすることで、防災への意識が高まるかもしれません。趣味や関心ごとで毎日の生活に潤いをもたらしながら、防災を持続できたらすてきですね。

(2013年9月11日 更新)