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地震全般・各地の地震活動

第5回  内陸の地震

執筆者

平田 直
東京大学地震研究所教授、地震研究所地震予知研究センター長
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日本列島の内陸で起こる地震

大きな地震はプレート境界付近で発生しています(第1回コラム参照)。地震の発生数を調べると、プレート境界が圧倒的に多いのです。しかし、日本列島の内陸部でも多くの地震が発生して、被害が出ています(図1)。明治以降に日本で発生した死者1,000人を超える12の地震(第2回表1)のうち、約半数は内陸部で発生しています。

これはどうしてでしょうか? 地球規模で見れば日本列島全体がプレート境界の近くにあります。プレートの運動により、プレート境界のすぐそばは最も大きく変形していますが、プレート境界から少し離れた日本列島内陸部でも、プレートの運動の影響を受けて変形が起こります。このために、内陸でも地震が起きるのです。
さらに、地震の起きる重要な要素として、地下の岩石の強度を考える必要があります。地震は岩石の弱い(もろい)ところで発生します。過去に地震が発生した場所は強度の低い場所です。つまり、地下には古傷があって、そこは強度が低くなっています。プレート境界では繰り返し地震が発生して、岩石の強度が低くなって破壊されやすくなっています。同時に、日本列島内陸部にも地殻の古傷がたくさんあります。内陸部でも変形が進行していて、地殻が弱い(もろい)ことが、内陸部でも地震が発生する理由です。

日本列島はどのように生まれたのか

日本列島内陸部に古傷がたくさんあるのはなぜでしょうか。日本列島は、かつてアジア大陸の一部でした。今から2,000万年~1,500万年前に、アジア大陸の東縁で大規模な火山活動と地殻変動とともに大地に巨大な亀裂が入り、日本海が拡大し始めました。その結果として、現在のような島弧が形作られました(図2)。日本海が拡大するとき、東北日本は反時計回り、西南日本は時計回りに回転しました(1)。アジア大陸から日本列島を引き離す巨大な力によって日本列島内部でも大規模な地殻変動が起こり、地震が発生しました。

例えば、東北日本の西縁地域、現在の新潟平野のあたりは、日本海拡大の末期に大規模な火山噴火とともに沈下しました。地殻が引き伸ばされる力による断層(正断層)や、回転運動による横ずれ断層が生まれました(3)。その後しばらくたって、今から数100万年前ころに力の向きが反転し、現在に至っています。つまり、日本列島は、東西に圧縮される力の釣り合いになったのです。

日本列島が形成されたときから積み重なった古傷が、現在働いている力によって動くのが内陸の地震です。現在の力の釣り合いになってから、繰り返し同じ古傷で地震が発生している場所が活断層です。日本の内陸部の地震は地殻の浅いところで発生するので、規模の大きな地震の断層(震源断層)は地表まで突き抜けていることが多く、特徴的な地形が形成されます。これが地形学的に観察される活断層地形です(第1回コラム参照)。日本には主な活断層が約100あります(図3)。

内陸地震の特徴とは?

内陸の地震ではしばしば大きな被害が出ます。プレート境界から離れている内陸部でも被害地震が発生するのはなぜでしょうか? 日本で人的な被害が多かった地震(第2回コラム表1)を見て気付くことは、内陸の被害地震の地震規模(マグニチュード=M)が、海域で起きた被害地震に比べて小さいということです。内陸の被害地震はM7程度かそれ以下です。1995年の兵庫県南部地震(阪神・淡路大震災)もM7.3でした。

これに対して、海域のプレート境界で起きる大きな地震は、2011年東北地方太平洋沖地震(東日本大震災)のM9.0をはじめ、2003年十勝沖地震や1923年関東地震(関東大震災)はM8クラスの巨大地震です。日本全体で考えると、M8やそれ以上の大きな地震はほとんどが海域のプレート境界付近で発生します。ただし、日本の内陸で起きた一番大きな地震は1891年濃尾地震で、M8程度と推定されています。このことは、内陸部でもM8程度の地震が起きる可能性があることを示しています。

M7程度の地震は海域でも陸域でも起きますが、M8の地震に比べてエネルギーは32分の1の「小さな地震」です。このため、海域でM7程度の地震が発生しても震源から離れた陸域での揺れはそれほど大きくならず、被害も大きくありません。これに対して、M7の地震が陸域の都市の近くで発生すれば大きな被害が出ます。つまり、都市の直下でM7の地震が起きれば震災になる可能性が高いのです。ただし、注意しなければいけないのは、たとえ内陸部で強い揺れを感じることがないM7程度の海域の地震でも、海底の浅いところで発生すると津波を起こす可能性があるということです。

日本全体として考えれば、M7程度の地震は毎年数回発生していますが、M8程度の地震発生は10年に数回です。もしM7程度の地震が都市のそばで発生すれば大きな被害が出るのです。ただし、2011年は東北地方太平洋沖地震の影響で、普段の年より10倍ほど地震数が多くなり、その後だんだんと減ってはいますが、今後数年間は以前より多い状態が続きます。

最近の内陸地震

内陸の地震は日本列島が形成されたときに出来た古傷で発生しています。このことを近年発生した新潟県の地震を例にとって説明しましょう。2004年新潟県中越地震(M6.8)と2007年新潟県中越沖地震(M6.8)の震源域は、日本海拡大の末期に形成されたリフト(地溝帯)の内部に位置しています。日本海拡大時の末期に形作られた凹地には6kmを超える厚い堆積物があります。そこには、主として現在の北西-南東方向からの引っ張りによって形成された正断層と、これと直交する高角な横ずれ断層が形成されました(2)。

その後、日本列島に掛かる力の向きが反転し、約400万年前以降からは東西方向に圧縮の力となり、短縮変形が進行しました。このため、かつて正断層であった断層が現在では反対の向きに運動して、逆断層運動の地震が発生しています(3)。2004年と2007年の地震はこれらの変形帯で発生しました 。2004年新潟県中越地震では、通常の地震よりも多くの余震が発生しました。本震後40分間にM6以上の余震が3回起き、そのうち本震と最大余震(M6.5)では、震度7が観測されました。これは、複数の震源断層が引き続き活動したためでした(図4)。

2011年の東北地方太平洋沖の地震の発生後、日本列島の変形の様子は、それ以前とは大きく変わりました。この地震の発生以前は、東北日本は東西に圧縮されていましたが、地震時に東西に大きく伸び、その後も余効的な地殻変動が続き、東西に伸び続けています。そのために、これまで東西圧縮の力によって発生していた内陸の地震は不活発になり、逆に東西に引っ張られる力によって起きる地震が増えています(正確には、東西方向の圧縮力が他の向きに比べて最小になる力の組み合わせで起きていて、必ずしも正味に東西方向に引っ張られているわけではありません)。

新潟県中越地方の地震は、東西圧縮の力で起きていたので、その数は減りました。一方、2011年4月11日の福島県浜通りの地震(M7.0)は、東西に張力軸を持つ正断層型で、地殻内の浅いところで発生する地震でした。この地震の震源周辺では、2011年東北地方太平洋沖地震が発生する前には、浅い地震はほとんど起きていませんでした。しかし3月11日以降、地震活動が活発化し、現在も続いています。これらの地震は、広い意味では3月11日の東北地方太平洋沖地震の余震ですが、本震から離れた場所で発生したので、誘発地震といいます。

内陸で地震が起きるのは、地震を起こす断層に大きな力が加わるか、あるいは地震を起こす断層が他の場所より強度が低下する場合です。日本列島の内陸部には、その生い立ちに起因する多くの古傷があって、地殻の弱面となっています。そこに加わる力は、時間とともに変化して、さまざまな種類の地震が発生します。特定の断層になぜ、ある時に強い力が加わったり、強度が低下したりするのかという仕組みは、実はそれほどよく分かっていません。次に起きる内陸の地震の姿を予測するには、この仕組みを理解する必要があります。日本列島に加わる力は東北地方太平洋沖地震の発生によって大きく変化しました。この力と地震活動の変化との関係を詳しく調べることは、内陸の地震の発生の仕組みを理解する重要な手がかりになります。

(参考文献)
(1)Otofuji, Y., T. Matsuda, and S. Nohda(1985), Opening mode of the Japan Sea inferred from the paleomagnetism of the Japan arc, Nature, 317, 603.
(2)佐藤比呂志(1996)、日本列島のインバージョンテクトニクス、活断層研究 15 128~132.
(3)Sato, H. (1994) The relationship between late Cenozoic tectonic events and stress field and basin development in northeast Japan. J. Geophys. Res., 99, 22261-22274.
(4)Hirata, N., H. Sato, S. Sakai, A. Kato, and E. Kurashimo, Fault system of the 2004 Mid Niigata Prefecture Earthquake and its aftershocks, Landslides, 2(2), 2005.

(2013年3月29日 更新)