トップページ > コラム > 地震・津波台風・大雨落雷・突風大雪猛暑火山・降灰火災PM2.5・黄砂防災の知恵非常食の新たな備蓄法「ローリングストック法」を実践する

震災・災害の減災知識

第4回  非常食の新たな備蓄法「ローリングストック法」を実践する

執筆者

永田 宏和
NPO法人プラス・アーツ 理事長
プロフィール・記事一覧

非常食に関するよくある失敗

非常食に関する常識と聞かれれば、多くの人が「3年、5年と長期保存の効く食糧を大量に買い込み保存しておく」と答えるのではないでしょうか。もちろん、この考え方が間違っているわけではなく、非常食の備蓄方法の一つの考え方としては極めて一般的な方法だと思います。ただ、このような方法を実践した場合に、「気が付いたら非常食の消費期限が大幅に過ぎていて全て廃棄した」とか「消費期限が来月に迫っていて毎日のように缶詰や乾パンを食べざるを得なかった」という失敗が起こりがちです。

3年、5年という長期保存が効くことは一見「最適解」のように思われるのですが、逆にその期間中は一切「非常食」のことを考えなくなり、記憶の彼方に「非常食」を追いやって、非日常的な存在にしてしまうのではないでしょうか。その期間中に考えなくていいことは、楽なのかもしれませんが、一方で私たちが掲げる「防災の日常化」に対しては、大きな障壁になるように思います。

新たな非常食の備蓄法「ローリングストック法」

そんな背景のなかで、ここ最近叫ばれ始めてきたのが、全く新しい「非常食」の備蓄法「ローリングストック法」という考え方です。この方法は画期的で、前述の3年、5年といった長期保存が効く缶詰や乾パンに代表される非常食を、その期間まで食べずに置いておくという考え方ではなく、日常的に非常食を食べて、食べたら買い足すという行為を繰り返し、常に家庭に新しい非常食が備蓄されているという、まさにその名の通り「食べ回しながら備蓄する」という方法なのです。

この方法を用いることで、さまざまなプラス面があります。一つ目は「非常食」が日常化するということです。後ほど詳しく解説しますが、月に1、2回定期的に「非常食」を食べることになるので、普段から食べているものが災害時の食卓に並ぶことになります。普段食べ慣れない長期保存が効く非常食よりも多くの人が安心して食事を採ることができるはずです。

長期保存の非常食では選べなかった非常食をたくさんのラインナップから選ぶことができるのも利点の一つです。ローリングストック法での「非常食」の消費期限の目安は1年です。1年の消費期限であれば各種レトルト食品、フリーズドライ食品、など多彩なレパートリーから選ぶことができるので、各家庭の各個人の好みに合わせた非常食の選択が可能になります。

「ローリングストック法」の実践方法

では、その「ローリングストック法」はどのように実践すればいいのでしょうか。その詳しい方法を、図を用いながら解説したいと思います。(図1)を見てください。通常、一般的な防災の知識としては、『非常食は最低3日分用意しましょう』と奨励しています。その考え方に従うと、家族の人数分の1食分の食料を3食×3日分で9食分用意する必要があります。

今回ご紹介している「ローリングストック法」では通常9食のところ、もう一日分追加して12食分用意するようにします。この合計12食分の「非常食」をこれまで通例だった押し入れなどの中にしまっておかないで、台所の引き出しなど、すぐ出して食べられる場所に備蓄しておきます。そして、毎月家族で「非常食」を食べる日を決めておいて(例えば、毎週第一日曜日など)、その日がきたら備蓄している12食分のうち1食分を食べるようにします。

さらに、「非常食」を食べた日の週末あたりに、食べてしまった1食分を買い足し、備蓄に加えます。この家族で決めたルールを守って、月1回の「非常食ごはん」の日を繰り返していくと、ちょうど1年で用意した非常食12食分がすべて入れ替わることになります。その結果、これまで常識だった3年、5年持つことが前提となっていた非常食の考え方が根本から覆り、『非常食は1年持てば十分』ということになります。この「1年の消費期限」がとても重要で、1年でよければ、ほとんどのレトルト食品は対象になります。そうすれば、家族それぞれの口に合った非常食を選ぶことができるのです。

「ローリングストック法」をサポートする防災グッズ

「好みに合ったレトルト食品」を備蓄する「ローリングストック法」で重要となる防災グッズがいくつかあります。まず、必需品としてセットしておきたい防災グッズが「カセットコンロ」です。過去の被災者の多くは、災害後の避難生活の際に“温かい物”が食べたかったと語っています。備蓄しているお気に入りのレトルト食品などをさらにおいしくいただくために、被災直後の一時的に電気やガスが止まり、熱源を失ってしまう状況で、カセットコンロはとても重宝します。普段の鍋用に準備されているご家庭も多いと思いますので、カセットボンベの買い置きを少し多めにして災害時に備えましょう(図2)。

さらに、非常食を食べる時の食器として活用できるのが、新聞紙とラップ(ポリ袋)です。新聞を使って昔遊びの「折り紙」の技で「コップ」や「船」の形を作り、それにラップ(ポリ袋)でカバーをすれば簡易食器の出来上がりです(図3)。家の中の食器が地震で割れてしまったとき、被災者が集まってきて急にたくさんの食器が必要になったとき、そして被災後の水道水が止まってしまったときに、すぐ手に入る新聞紙とラップ(ポリ袋)はとても役に立ちます。普段からバーベキューやキャンプなどで、この紙食器を実践しておけば、いざというときにも安心です。ぜひトライしてみてください。

(2013年2月22日 更新)