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日本の火山活動

第4回  今後の火山活動と噴火予知 

執筆者

藤井 敏嗣
東大名誉教授 火山噴火予知連絡会会長
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静かすぎた20世紀

戦後の日本は、まともな噴火をほとんど経験していません。比較的信頼のおける歴史記録がある江戸時代以降19世紀まで、1回の噴火で数億立方メートル以上の噴出物を出すような大噴火が各世紀に4回以上起こっていました。ところが、20世紀に入ると1914年の桜島の大正噴火、1929年の北海道駒ケ岳噴火の2回だけで、それ以降100年近く、大きな噴火は起こっていません。20世紀の火山活動は、異常に静かだったのです。こうした過去の歴史を振り返ると、今後21世紀には少なくとも5~6回は大噴火が起こると考えるのが自然です(表1)。

2011年3月11日の東北地方太平洋沖地震は、火山活動が活発化する幕開けかもしれません。第1回で書いたように、M9の地震が起こったことで、どこかで火山噴火が誘発され、それが大噴火となることも考えられます。しかし一方で、次章で述べるように別の見方もできます。

東北大震災は大地動乱の兆しか?

3.11の東北地方太平洋沖地震は、869年の貞観地震と場所も大きさもほぼ同じであったことが指摘されています。実はこれだけではなく、最近の地震の起き方は9世紀後半とよく似ているのです。

2004年、2007年には中越地震や中越沖地震、2011年には信越地方で地震が起きましたが、9世紀後半にも中越や羽越、信越などで地震が起こっています。これから数十年以内に南海トラフでの大地震が起こる確率が高まっていることが懸念されていますが、9世紀には貞観地震の18年後に南海トラフで大地震が起こっています(図1)。このように、最近の地震の起こり方は9世紀後半の日本にそっくりなのです。

ところで、この時期は、地震だけでなく火山活動も活発でした。貞観地震より前ですが、864年には富士山で史上最大規模の貞観噴火が起こっています。広大な青木ケ原の樹海はこの時の溶岩の上に樹木が生い茂ってできたものです。さらには、この9世紀後半には鳥海山や新潟焼山でも噴火が起こっています。そしてその前後には、伊豆諸島でも1000年に1回程度しか噴火しない新島や神津島が大噴火し、伊豆大島、三宅島でも大きな噴火が起こっています(図2)。

また、九州の阿蘇山や鶴見岳、開聞岳が噴火したのもこの9世紀後半。まさに、大地動乱の時代でした。最近の地震の起こり方がこの時代に大変よく似ていることを考えると、当時と同じように、今後、火山活動も活発化することを想定しておくべきだと言わざるを得ないでしょう。

火山噴火の長期予測

火山の寿命は、数十万年~百万年程度ですが、その一生のうち、規則正しい間隔で噴火を続けることはごくまれです。どちらかというと、活動が不規則なのが火山活動の特徴です。このため過去の噴火間隔から次の噴火の時期を予想することは、ごく一部の火山を除いて困難です。

例えば、富士山では古文書の調査から7世紀以降確実に噴火したのは10回だということが分かっています。平均すると140年に1回程度、噴火していたことになりますが、平安時代には、数十年おきに噴火していましたし、最近では、1707年の宝永噴火以降300年以上噴火していません。

浅間山でも、1940年代から1960年代にかけては1年間に数百回噴火するなど、現在の桜島に良く似た状況でした。それが1973年の噴火以降は、数年から十数年に1回ほど小規模な噴火をする程度になっています。

海溝沿いの大地震は100~150年おきに比較的規則正しく起こりますから、前の地震から100年ほどたったころには、「そろそろ地震が起こるのではないか」と予想できます。一方、火山噴火の間隔は規則的ではありませんから、長期的な予知に関しては地震よりも火山噴火の方が難しいといえるかもしれません。

火山噴火の直前予知

火山噴火は地下の高温のマグマが地表に接近することによって起こるものですから、地震活動や地殻変動など噴火の前兆となる現象が発生します。この前兆現象を捉えると、噴火の直前予知が可能となるはずですが、前兆を捉えても直後に噴火が始まってしまうなど、噴火までが数時間程度の場合も珍しくありません。

これまでわが国で確実に前兆を捉えた例は、「数日前から数時間前」がほとんどで、何週間も前から噴火を予知した例はありません。また、噴火の前兆と考えられる現象を捉えても、なかなか予想通りに噴火しないこともあります。

それでも、普段の静穏な時期からきちんとした観測をしていれば、その火山が活発化しており、噴火の可能性が高まっているというようなことは分かります。また、桜島のように数万回も同じような噴火を繰り返している火山では、地殻変動や地震活動、火山ガスなどのデータを総合して、数時間から数日以内に噴火しそうだということがかなりの確度で分かります。

2000年に起きた有珠山の噴火では、直前予知が成功し、噴火前に1万6000人の住民が事前に避難できたことから、1人のけが人も出なかったことで有名です。有珠山では、通常地震活動が少なく、有感地震が発生すると数十時間から1週間程度のうちに噴火が発生することが過去7回の噴火経験から知られていました。少なくとも、過去7回の噴火では、規模や様式は異なるものの、噴火前に地震の群発があるという点では例外はありませんでした。このため、2000年3月27日から有珠山直下で地震活動が高まったときは、疑う余地なく噴火が始まることを予想し、住民に緊急避難を勧告することができたのです。ただし、この時の噴火予知は、あくまでも噴火前には地震活動が増えるという経験に基づいて判断したもので、地下のマグマの動きを捉えての噴火予知ではありませんでした。

2009年2月2日の浅間山の噴火は、ごく小規模なものですが、噴煙が北風に流されたため東京都内にも火山灰が降ったことで知られています。この噴火では、傾斜観測と地震観測に基づき、マグマが火口に近づいていることを探知し、気象庁は、噴火の13時間前に噴火警報を発令しました(図3)。

つまり、マグマの動きを捉えて噴火を予知することに成功したのです。同じような手法が噴火の予知のために有効であることは、2011年2月以降の霧島新燃岳の噴火でも確かめられていますが、残念ながら1月26日、27日に起こった最初の激しい爆発的な噴火の予知には成功していません。後から詳しく調べても、明瞭な前兆現象が見当たらないのです。

このように噴火直前の予知は、まだ実用レベルにまで至っていないのが現状です。ただ、火山周辺の平常時からの観測ができていないと、火山活動の高まりを把握することすらできないので、火山観測の拡充は非常に重要です。ちなみに、現在、気象庁が24時間体制で火山の監視をしている火山は、国内にある110の活火山のうち47火山にとどまっています。

(2013年1月30日 更新)