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大雪

第3回  冬本番、寒波到来で危険は増える?

執筆者

佐藤 威
(独)防災科学技術研究所雪氷防災研究センター長 理学博士
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突然発生する表層雪崩

本格的な冬になると、雪国では寒波が到来する度に新たな雪が降り積もります。山の斜面に積もった雪が崩れ落ちるのが雪崩で、厳冬期に多いのは表層雪崩というタイプです(写真1)。もう一つ、融雪期に多い全層雪崩というタイプもありますが、これは次回紹介します。いずれのタイプの雪崩にも共通しているのは、斜面に積もった雪に働く重力の斜面方向の成分が雪を動かす力、すなわち雪崩の駆動力になることです。

積もった雪を掘ってみると地層のようになっています(写真2)。一つ一つの層は、降った雪の種類や積もった後の気象条件に応じた変態の進み具合などに対応しています。これらの層の中に破壊強度(正確には、せん断破壊強度)が弱い層があると要注意です。この層は弱層と呼ばれ、雲粒の付かない新雪やあられからなるもののほか、変態によってできるざらめ雪やしもざらめ雪からなるもの、積雪の表面にできた霜がその後の降雪によって閉じ込められたものなどがあります。

(図1)は斜面の積雪中に弱層がある場合、その上に積もっている雪に作用する力を示しています。駆動力はこの雪の重さとともに大きくなりますから、大雪の時ほど危険性が増します。そして駆動力が限界抵抗力(せん断破壊強度)を上回った時に表層雪崩が発生します。このようにして自然に発生する表層雪崩は、何の前触れもなく突然発生するので大変危険です。

表層雪崩は流動性に富んでいて全層雪崩よりも遠くまで流下します。一般に流下速度は大きく、新幹線並みの時速300km/hになることもあります。流下中に建物や橋などの構造物に衝突する時の衝撃圧は数十t/m2を上回ることもあり、それらを破壊することもあります。

駆動力が限界抵抗力より小さくても、登山やスキー、スノーボードなどで斜面に入った時に、人間の体重の影響が駆動力に加わり表層雪崩を誘発することもあります。自分が誘発した雪崩に巻き込まれる事故も後を絶ちません。

積雪内部の弱層は、条件によって長期間存在し続けることがあります。逆に時間とともにその強度が増して弱層が消滅することもあります。雪の中にある弱層は目では見えませんし、その強度も分かりません。このため表層雪崩の危険性を判断するためには、雪を掘って弱層の存在を確認したり、その強度を直接調べる(弱層テスト)必要があります。弱層の成因には過去の気象条件が関係するものもあるので、弱層が存在する可能性を知るためには、さかのぼって気象条件を調べることも大切です。

ホワイトアウトの恐怖

積雪は雪の粒子が互いに結合したものです。その結合が壊れて粒子がばらばらになり空気中を移動する現象が吹雪です。このような粒子は吹雪粒子と呼ばれ、その運動形態には転動、跳躍、浮遊の3つがあることが知られています(図2)。転動は、吹雪粒子が雪面上をころころと転がっている状態です。跳躍は、吹雪粒子が雪面上の他の雪粒子とぶつかりながら、あたかも吹雪粒子が跳びはねているように見える状態です。この時、衝突する吹雪粒子は反発して再び飛び出るだけでなく、積雪を構成している雪粒子の結合を破壊して新たな吹雪粒子を弾き出すこともあります。また、小さな吹雪粒子は風の乱れにより上空に運ばれる一方、重力で落下して、全体としては空中に浮かんでいるような状態になります。これは浮遊と呼ばれ、吹雪粒子はあたかも煙のように空気中を漂って見えます。

吹雪の状態は風速に依存します。風が弱いうちは吹雪は発生しませんが、強くなると転動、跳躍が始まります。さらに風が強くなると、より多くの吹雪粒子が転動、跳躍運動をするようになり浮遊も加わります。気温が高いと雪粒子の付着力が大きくなるため吹雪はあまり発達しません。また、強風時に雪が降っていると、雪面に衝突した雪片は粉々になって強い吹雪になります。

吹雪の中で目の前が真っ白になるのがホワイトアウトです。このような状態になると、山では遭難の危険性が高まり、道路では交通事故の危険性が高くなります。吹雪の場合は雪面に近いほど吹雪粒子が多く視程が悪いので、大型自動車のドライバーからの視界は良くても小型自動車のドライバーにとっては視界不良となることもあります(写真3)。

屋根の雪には危険がいっぱい

多雪地域では屋根に積もった雪(屋根雪)の重さから家を守るため、しばしば雪下ろし作業を行います。この時に注意しなければならないのは、気温が氷点下であっても暖房をしている建物では熱の一部が屋根に伝わり、屋根雪の底面が解けて水を含んでいる場合があることです。このような時には、雪下ろしのために屋根に上った人が雪もろとも滑り落ちる危険性があります。屋根が傾斜していると、解けた水は軒先に向かって流れます。寒い時にはこの水は軒先付近で凍り付き屋根にがっちりと張り付いています。この状態で気温が上がると、氷が解け始め屋根から剥がれやすくなり、屋根雪全体が一挙に滑り落ちる危険性が高まります。

屋根雪も長く積もっていると密度が大きくなり、落下時に人や物にぶつかると大きな衝撃力が発生します(※1)。また、大量の雪に埋まると自力で脱出するのは困難で生命に関わることがあります(写真4)。屋根から滑り落ちる雪は、屋根が大きいほど、また高い屋根ほど遠くまで到達し(※2)、体育館などの大型の建物では10m以上離れた所でも危険な場合があります。軒下だけでなく、屋根にはできるだけ近づかないのが身を守る鉄則です。

屋根の雪は別の問題も引き起こします。風が強い地域では風下側の屋根の軒先に雪ぴができ、軒先が破損することもあります。北海道では雪下ろしが不要な水平屋根が普及していますが、このような屋根やビルでも雪ぴの問題は避けられません(写真5)。気温が上昇し雪ぴが落下して引き起こす事故や、雪ぴを落とす作業中の事故も近年増えてきています。このように、大量の雪が積もって気温が上がった時に屋根雪の危険性が特に高くなりますので十分に注意しましょう。

道路の雪にご注意を

道路上に積もった雪は、気象条件によってさまざまな変化をするだけでなく、通過する車両の影響や泥、粉じん、凍結防止剤などの影響を受けます。スパイクタイヤが禁止されて以降にできやすくなったつるつる路面(氷板、氷膜、非常に滑りやすい圧雪の総称)は、車両による雪の圧縮や車両の発する熱などの影響を受けてできるものです。また、路面の水分が凍ってできるブラックアイス(氷膜)は、路面が黒く見えて気付きにくいものです(写真6)。滑りやすさの指標となる制動時の滑り摩擦係数の値は、乾燥した舗装路面では0.8程度ですが、圧雪路面では0.3前後、氷板や氷膜では0.1~0.2ですので、つるつる路面やブラックアイスがいかに滑りやすいかが分かります。

第2回で紹介した防災白書や消防庁がとりまとめた雪害による犠牲者数には、このような道路の雪氷状態が原因となった交通事故による犠牲者は含まれていません。これを含めると犠牲者数は倍増しますので、雪国の交通安全の確保は大きな課題となっています。

つるつる路面は車道だけでなく歩道にもできます。人通りが多いところでは、踏み固められた雪が滑りやすくなり、毎年転倒事故が発生しています。このような雪道を歩く時の極意を教えるwebサイトもありますので、ぜひ参考にして下さい。

(参考文献)
※1 屋根雪事故を防ぐための注意点
http://www.bosai.go.jp/seppyo/kenkyu_naiyou/seppyousaigai/yaneyukichuui/yaneyukichuui.htm
※NHKサイトを離れます

※2 屋根にブルーシートを敷いた時の屋根雪の滑落について
http://www.bosai.go.jp/study/pdf/blue_sheet_katsuraku_Ver_1.2.pdf
※NHKサイトを離れます

(2013年1月30日 更新)