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液状化・地盤災害・土木被害

第4回  道路・鉄道の地震被害と対策

執筆者

安田 進
東京電機大学教授 工学博士
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道路と鉄道はどのように造られているか

道路と鉄道は網の目状に造られており、一般に交差点や踏切などで交差するようになっていますが、高速道路や新幹線などでは交差すると危険なため、地表面より高く造ります。その場合、(図1)に示すように土を盛って高く造る場合とコンクリート製の高架橋を造る方法があります。高速道路は一般に盛り土で造られてきていますが、都市内では高架橋で造られています。

これに対し1964年に初めて開通した東海道新幹線は盛り土によって造られていましたが、その後の新幹線は主に高架橋で造られてきています。高架橋を建設する際、地盤が硬い場合には地盤上に直接高架橋を造りますが、地盤が軟弱な場合にはくい基礎で支えます。

その他、川を渡る場合には橋を架けますが、川の幅や深さに応じて桁橋やつり橋など橋の種類を選定して造ります。また、山岳地ではトンネルを掘って山の中を通過します。

地震によって生じるさまざまな被害

このように、道路や鉄道はその場所に適したさまざまな構造で造られます。また、軟弱な地盤や硬い岩盤など種々の地盤を通ります。したがって、それらの構造や地盤によって、地震時にも多種多様な被害が発生します。さらに、東日本大震災では津波によって多数の橋が流されたり破壊されました。このように大地震のたびに異なった種類の被害が発生しますので、ここでは代表的なものとして阪神・淡路大震災(1995年)、能登半島地震(2007年)、そして東日本大震災(2011年)で発生した高架橋と道路盛り土の被害の例を挙げてみます。

阪神・淡路大震災で強い揺れに襲われたのは神戸市、芦屋市、西宮市の六甲山の麓から海岸にかけた狭いベルトゾーンです。このベルトゾーンにはJR、阪急電鉄、阪神電鉄の鉄道が平行して走っています。新幹線は六甲の山中のトンネルを走っていますが西宮以東で平地に出ます。これらの鉄道はほとんど高架橋で出来ていますが、直下で地震が発生し大変強い揺れに襲われたため、(写真1)に示すように甚大な被害を受けました。また、道路も平行に走っていますが、国道や阪神高速道路神戸線の高架橋でも、非常に強い揺れのために被害を受けました(写真2)。一方、埋め立て地を走っている阪神高速道路湾岸線では主に液状化により被害を受けました。高架橋では(写真2)のように橋脚が壊れたものが多かったのですが、くい基礎が被害を受けたものも多くありました。特に液状化した地区ではくいにクラックが入る被害が発生しました。

道路盛り土が大きな被害を受けた能登半島地震

能登半島地震では、半島の山間を縫って造られている能登有料道路で、盛り土が大きく崩れる被害が11カ所で発生しました(写真3)。盛り土の高さがかなり高かったことや、谷部を埋めた盛り土に浸透水が集中し盛り土内の地下水位が高かったこと、盛り土の締め固めが高くなかったことが被災した主な原因と考えられています。

さて、東日本大震災では多くの道路や鉄道の盛り土や橋が津波で多く破壊されました。一方、家屋の被災が広い範囲に及んだ割には、揺れや液状化による道路や鉄道の被災は少なくて済みました。これは阪神・淡路大震災に比べて揺れ方が高架橋や盛り土に被害を与えにくい性質だったことに加え、コンクリートの橋脚を鉄板で囲って補強する、といった耐震補強が阪神・淡路大震災以降に進んできたことも功を奏したと考えられています。

ただし、これまであまり目立たなかった被害も発生しました。それは地盤の液状化による平面道路の被害です。東京湾岸の埋立地では、広い範囲で液状化が発生して戸建て住宅やライフラインに甚大な被害を与えましたが、平面道路にも大きな被害を与えました。車の車輪が噴き出した地下水や砂に埋まって動けなくなり、舗装が波うったり陥没したために通行が困難になりました。さらに、数十cmも地盤が沈下したため、くいで支えたビルの駐車場への出入りが困難になりました。

被害を防ぐには

川を渡る橋や高架橋は古くから地震による影響を考慮して設計されてきました。そして、地震で被害を受けるたびに設計方法が見直され、より強いものが造られるようになってきています。例えば、JR京葉線では液状化を考慮した設計が行われており、東日本大震災で周囲が液状化したにもかかわらず、被害を受けませんでした(写真4)。したがって新しい橋ほど被害を受け難くなっているといえます。これに対し、昔造られて耐震性に劣ると考えられる場合には、上記のように橋脚を鉄板で囲むなどの補強が行われつつあります。ただし、地面より下にあるくい基礎では補強が難しくあまり実施されていません。

一方、盛り土の方は地震で被災しても修復が比較的容易なことや、造ってから年月が経つにつれ一般に強くなることから、耐震設計がほとんど行われてきませんでした。ところが高速運転になるにつれ補強する必要が出てきており、近年、東海道新幹線では、揺れや液状化に対して鋼矢板などで補強する工事が近年行われています。新しく造る盛り土では、阪神・淡路大震災のような大地震による影響を考慮して設計されています。また、盛り土内に地下水が溜まりにくくしたり、補強材を中に入れて盛り土をするといった工夫も行われています。

(2013年1月30日 更新)