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大雪

第2回  大雪・豪雪の昔と今

執筆者

佐藤 威
(独)防災科学技術研究所雪氷防災研究センター長 理学博士
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どれだけ降れば大雪になる?

冬が近づくと「この冬は大雪かなあ?」と気になります。そして、冬になると天気予報で雪マークが出るたびに「今度は大雪か?」と心配します。このように雪国に暮らしていると、日常生活の中に「大雪」という言葉がしばしば登場しますが、これら2つの場合で意味合いは異なります。

雪は長くても数日降ったらひと休みするのが普通です。ひと続きの降雪量が多い(短期の大雪)と、道路・鉄道・航空などの交通が乱れたり、家の周りの除雪などに苦労します。一方、冬の初めからの降雪を積算した量が多い(長期の大雪)と、屋根の雪を下ろす頻度が増えてそれに伴う事故が多発したり、雪崩や融雪災害が起こりやすくなります。また市街地の排雪作業も必要になります。

第1回で紹介した最深積雪の平年値の分布から、雪の多い地域と少ない地域が分かりますが、それぞれの地域で大雪と見なす基準が違うことは容易に想像されます。短期の大雪については、気象庁が発表する大雪注意報や大雪警報の基準が地域ごとに定められています。例えば、比較的雪の少ない秋田県中央地域の平野部では12時間に降る雪の量が35cm以上と予想される場合に、また雪の多い新潟県長岡地域の山沿いでは55cm以上の場合に警報が発表されます。

長期の大雪についての基準は特に定められていませんが、多雪指数(図1)の値がその目安を与えると考えてよいでしょう。「多雪」という言葉は、長期の大雪と同じような意味です。(図1)から多雪指数が大きな地域(大雪となった地域)は年によって違うことが分かります。

豪雪に周期性はあるか?

「豪雪」という言葉も大雪による被害が大きい時によく使われます。「昭和38年1月豪雪(通称、38豪雪)」と「平成18年豪雪」のみが気象庁によって正式に命名されたもので、ほかはそれらにならって呼ばれたものです。

広い範囲に被害をもたらした38豪雪(写真1上)や56豪雪が特に有名です。昭和20年も豪雪であったため、このころまでは豪雪の18年周期説が唱えられたこともありました。しかし、1980年代後半から暖冬少雪傾向となり、しばらく雪の少ない年が続きました。そして、最近になって再び何年かに一度は豪雪となり、平成18年豪雪や平成23年豪雪(写真1下)、平成24年豪雪では各地に大きな被害が生じました。ここで紹介したもの以外にも、地域を限定すれば豪雪の年はまだありますが、総じて豪雪には明瞭な周期性はないようです。

局地的な被害をもたらす集中豪雪

2010年12月31日から翌1月1日にかけて、鳥取県の沿岸から内陸を中心とした150km×50kmの範囲に強い降雪が集中し、降り始めからの積雪深の増加は米子で89cm、松江で56cmに達しました。この雪がもし雨として降ったならば200mm近くの降水量に相当し、集中豪雨に匹敵するレベルです。この時には、国道や鉄道などが混乱しただけでなく、港に係留していた500隻を超える小型船舶の転覆浸水事故(写真2)が発生しました。ニュースでも大きく取り上げられたので、記憶している人も多いと思います。

上記のように比較的狭い範囲に強い降雪が集中する現象を「集中豪雪」と呼びます。この言葉がよく使われるようになったのは最近のことです。しかし、集中豪雪が近年になって急に増えてきたというわけではなく、1980年代から注目して「集中豪雪」という言葉を使う降雪の研究者もいました。むしろ、最近になって強い降雪による局地的な被害が目立つようになってきたため、一般にも使われるようになってきたと考えられます。集中豪雪は予測が難しく事前の対策が立てづらい厄介なものです。

時代とともに変わる雪氷災害

防災白書や消防庁がとりまとめた資料によれば、231名が犠牲になった38豪雪以降、100名を超える犠牲者を出した豪雪は6つあります。このうち3つはごく最近のことで、平成18年(152名で56豪雪と同数)、平成23年(131名)、平成24年(132名)と立て続けに多くの犠牲者を出しました。平成の3つの豪雪の犠牲者に共通しているのは、多くが65歳以上の高齢者(全体の2/3)で、屋根の雪下ろしを含む雪処理作業中の事故によるものが多かった(全体の3/4)ことです。

秋田県と山形県での雪による事故を調べた結果(図2)から、高齢者が犠牲になる割合と屋根雪に関連する犠牲者の割合は1950年代以降増加傾向にあり、最近の豪雪の犠牲者の特徴はその延長上にあると見ることができます。雪国では全国平均を上回るペースで高齢化・過疎化が進行しています。高齢者は体力や運動機能が低下しているため作業の危険性が大きいことに加え、日中は家族が出払って高齢者が雪下ろしをする機会が増えたり、過疎化により単独で作業をせざるを得ないため事故発生に気付くのが遅れるなど、複数の屋根雪関連事故の要因が指摘されています。また、かつては高かった雪崩による犠牲者の割合が急速に減少したのは、冬の間に山で仕事をすることが少なくなるなど、雪国の産業構造が変化したことによるものです。

建物の被害については、38豪雪の時には1735棟もの住家被害(全半壊)がありましたが、その後は建物の構造性能が向上したため大きな被害は発生していません。代わって最近では小屋などの非住家の被害が多発したり、空き家が積もった雪のため倒壊する危険性がクローズアップされています。

38豪雪では、北陸地方を中心として人の移動や物資の輸送の中心であった鉄道が長期間にわたってまひし、陸の孤島が生まれる事態となりました。その後、除雪体制の整備が進みましたが、すでに車社会が到来していた56豪雪では、北陸・東北地方の市街地で路上駐車が除雪作業を妨げるなど、新たな雪問題が顕在化しました。

このように、災害の様相が社会の変化と密接に関係する点が雪氷災害の特徴といえるでしょう。

(2012年12月27日 更新)