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震災・災害の減災知識

第2回  身の回りのモノでできる応急手当ての方法

執筆者

永田 宏和
NPO法人プラス・アーツ 理事長
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被災地では応急手当て専門の道具は入手困難

阪神・淡路大震災のときに、街のなかで懸命に救援活動を行った多くの人が、当時を振り返り「薬が足りなかった」「包帯や三角巾、担架といった普段病院に行けば必ずある救急救命の道具もほとんど手に入らなかった」と証言しています。平常時と異なり、災害時はたくさんのけが人が同時に発生するため、そういった応急手当てや救急救命のための専門の道具が圧倒的に足らなくなり、入手困難になるのです。こうした状況は、今後国内で発生する地震災害の際にも同様の事態が想定され、そのための準備が必要であることは間違いありません。

各家庭やマンション内の備蓄倉庫、地域の公園や学校などに設置されている防災倉庫のなかに「医薬品」「救急セット」「担架」「救急救命の資機材」などを、これまでの想定以上に備蓄することも重要ですが、その一方で、専門の道具が手に入らなくても、身の回りにあるごく一般的な生活雑貨などを使って、応急手当が出来る技を習得しておくことも重要だと思います。

今回はこうした背景を踏まえて、「身の回りのモノ」で、誰でもできる応急手当の技を二つ紹介したいと思います。なお、ここで紹介する二つの技は阪神・淡路大震災の被災者から教えてもらったものがベースですが、防災の技のワークショップとして、私たちのNPO法人が実施する際に、改めて消防関係の監修を受けており、専門家も認めている正規の方法であることを併せてお伝えしておきます。

止血の方法 -直接圧迫止血法-

一つ目は、切り傷などで出血しているけが人に有効な止血の方法です。以前は、映画のシーンなどで一度は見かけたことのある、上腕部や大腿部を太めの布でしっかり縛り出血を止める「止血帯法」が奨励されていました。消防の専門家によれば、この方法は正確な位置に適度な強さで布を縛ることが難しく、さらに、細胞組織がえ死しないように30分に1回布を緩めないといけないなど処置が複雑なため一般市民には不向きとされ、最近では今回紹介する「直接圧迫止血法」が奨励されているそうです。

「直接圧迫止血法」の処置の手順は以下の通りです。(図1)を参照してください。
(1)直接血に触れないようビニール袋などで手を覆う
(2)傷口に清潔な布(使用していないハンカチ、タオルなど)を直接当てて圧迫する
(3)傷口を心臓より高い位置に上げる
(4)最初に当てた布が血に染まってきたら、新しい清潔な布をさらに上からかぶせて圧迫する
(5)血が止まったら大判ハンカチやネクタイなどを包帯代わりにして、当てた布を固定したうえで病院に運ぶ。

この手順の中で使用している道具は、「ビニール袋」「大判ハンカチ」「タオル」「ネクタイ」など、どれも専門の道具ではなく、すぐ手に入る身の回りにあるモノばかりです。そして、この手順の中で特に重要なのが「直接血に触らない」「傷口を心臓より高い位置に上げる」という2点です。「直接圧迫止血法」で忘れがちな注意点なので覚えておきましょう。

骨折の手当ての方法

次に紹介するのは、骨折をした際の手当の方法です。(図2)にイラストで手順を分かりやすく解説しています。まず、骨折した箇所を固定します。通常病院では、「添え木」や「ギプス」などの専門の道具で固定しますが、災害時にそういったものが入手できる可能性はほとんどありません。そこで「添え木」の代わりに使用するのが、「折り畳み傘」や「雑誌」「新聞紙(朝刊1日分程度)」など身の回りにある物です。

これらを骨折した箇所に当て、両端を「大判ハンカチ」や「ネクタイ」などで固定します。ここでも「止血法」の時に活躍したグッズが役に立ちます。そして「添え木」で固定された手を首からつるのに用いるのが、スーパーなどでもらえる大きめの「レジ袋」です。この「レジ袋」の両サイドを切り裂き、「添え木」で固定した手を横から入れて、持ち手のところを二つ重ねて首からつれば完了です。最後に、首の後側に持ち手が食い込んで痛くなるのを防ぐために「ハンカチ」や「タオル」を当てます。ここで使用しているものも、全て身の回りにある物ばかりです。こうした発想がとても重要なのがおわかりいただけると思います。

その他の代用品による臨機応変な防災の知識や技

こうした代用の考え方は他にもあります。例えば、けが人が続出して搬送用の担架が不足した場合に、毛布やシーツなど大きめの布は担架代わりに活用できます。布の端をくるくると巻き込むと、持ちやすい取っ手ができて使いやすくなります。(図3)

重要なのはそういった臨機応変な対応力であり、「知恵」や「工夫」そのものです。一般的に、現代人はこうした能力が低下しているといわれています。普段からこうした訓練を積んでおくことが本当の防災力を身につける上で大切ですので、ぜひ普段から心がけていてください。

(2012年11月29日 更新)