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地震全般・各地の地震活動

第3回  地震の大きさ、場所、発生時期にも規則性がある?

執筆者

平田 直
東京大学地震研究所教授、地震研究所地震予知研究センター長
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地震の大きさ分布

地震の規模は非常に大きなものから非常に小さいものまであり、放出されるエネルギーや岩石の破壊によって生じる断層の面積も、その違いは桁違いの数値になります。地震の規模はマグニチュード(M)で表されます(第1回参照)。例えば、2011年の東北地方太平洋沖地震(M9)の断層の広がりは南北400km、東西250kmで断層面積は10万平方キロメートルにもなります。これがM6なら10kmx10km=100平方キロメートル、人には感じられないM1の微小地震なら40mx25m=0.001平方キロメートル程度です。

M9とM1の地震を起こす断層は長さで1万倍、面積では実に1億倍(8桁)の違いになります(図1)。放出されるエネルギーで比較すると1兆倍(12桁)も違うことになります。
東北地方太平洋沖地震のような非常に大きな地震は、まれにしか発生しません。Mが9.0以上の地震は、20世紀以降地球上全体で5回しか知られていません(図2)。一方、中小の地震はたくさん起きます。例えば、Mが3程度以下の人には感じられない地震は、毎日数多く発生しています。

地震の大きさ別の頻度をグラフにしてみると、大きな地震の発生頻度と小さな地震の発生頻度の間には、「グーテンベルク・リヒター則」と呼ばれる法則があることが分かります(図3)。これを式で表すと

 width=

となります。ここで、bは大体1程度の値の定数、cは比例定数です。この法則から分かることは、Mが1小さくなると地震数は約10倍になるということです。つまりM4の地震の頻度は、M6の頻度の約100倍になります。

実際に10年ほどの平均では、M4以上の地震は日本全体で毎月70回程度、M5以上の地震は月に9回、M6以上の地震は月に1.4回発生しました。

グーテンベルク・リヒター則で頻度予測は可能か

さて、この法則からM8やM9のような巨大地震の発生頻度を予測することはできるでしょうか。もし、「グーテンベルク・リヒター則」がどのMの地震についても成り立つのであれば、予測することができるはずです。しかし、巨大地震の発生頻度は低いので、Mの大きな地震の頻度が本当にこの法則に従っているかどうかを確かめることはとても難しいのです。

一方、非常に小さい地震は観測することが難しいため、漏れなく微小地震を数え上げることも難しいといえます。つまり、式(1)の適用できるMの下限も存在しているということです。

仮に、漏れなく微小地震が観測できたとして、式(1)の適用できるMの下限がいくつかということは、必ずしもよく分かっていません。しかし、M=-1程度までは、この法則が成り立っています。上限Mが仮に7としても、Mの範囲は8となり、これは地震を起こす断層の面積としては8桁、エネルギーとしては12桁の範囲で成り立つ法則として、大変一般的な法則といえます。

地震は地球上のどこで発生するのか

地球上で発生した地震の分布を世界地図に表示して見ると、地震は特定の場所で起きていて、決して一様に分布しているわけではないことが分かります(図4)。

地震が起きるためには水平方向の大きな力が必要で、その力の源は地球表面を覆う地震プレートという岩盤の動きです。そのため、プレートとプレートとの境界部分で地震が多く発生します。世界地図上で地震の発生場所がプレートの境界部に限られているのは、そのためです。ただし、重要な例外があります。太平洋プレートの真ん中にあるハワイ島の下でも地震が発生しています。これは、地下深部からマグマが供給される特殊な場所、ホットスポットがあるからです。

日本列島は大きなプレートが衝突して、一方のプレートが沈み込むプレート境界にあるため、世界中でも地震が数多く発生している地域の一つです。日本列島は地球上で最大の太平洋プレートと、アジア大陸を形成するユーラシアプレート、さらに日本の南方にあるフィリピン海プレートとの境界部に位置しています。
もうすこし地図を拡大して、日本のどこで地震が多いのかを調べましょう。すると、太平洋プレートと東北日本を形成するプレートの境界部、太平洋沿岸と日本海溝の間で地震が多いことが分かります。

一方、日本列島の内陸部でも地震が起きています。ここは、世界地図のレベルで見るとプレートの境界でも、日本地図の上ではプレート間の境界部ではない場所です。地図を拡大していくと、地震は空間的にランダムに発生しているように見えますが、これは地下の岩石に大小さまざまな大きさの亀裂(断層)が不規則に分布していて、それらが破壊されることによって地震が発生しているからです。

地震は周期的に発生するのか

プレート境界で発生する地震には時間的に規則的、一定の周期で発生するものがあります。南海トラフ沿いに発生する地震は規則的であることが知られています。明応東海地震(1498年) 、慶長地震(1605年) 、宝永地震(1707年) 、安政東海地震(1854年) 、昭和南海地震(1946年)の5回の地震の発生間隔は平均112年です。南海トラフの地震は日本で最も古くまで遡ることのできる、規則的に発生するプレート境界地震の例です。それでも、発生周期には周期の2割程度のばらつきがあります。

一方、こうした周期性のない地震もあります。例えば、南関東で発生したM7程度の地震は明治東京地震(1894年)以降、現在まで5回(1895年、1921年、1922年、1987年)が知られていますが、これらの地震の発生間隔に規則性はありません。

プレート境界の滑りの速さは、地質学的な時間スケールでほぼ一定なので、プレート境界の大地震がほぼ周期的に発生すると考えられます。しかし、地震の発生間隔を支配する要因は他にもあるため、完全に規則的というわけではありません。さらに、内陸の地震やプレート内の地震を含めたときには、さらに規則性が乏しくなります。

周期性の無い地震にも、活動期と静穏期があるのでしょうか。20世紀以降のM8.7以上の超巨大地震の発生時期をもう一度見てください(図2)。超巨大地震は1952年から1965年の13年間に集中し、約40年後の21世紀初めの数年にも集中しています。このことから、現在世界は地震活動の活発な時期に入ったと考えている研究者もいます。

一方で、これは単なる偶然であるとの見解もあり、こうした議論に決着を付けるには、計器によって地震観測を行った100年程度のデータだけでは不十分です。歴史的な古文書や地質学的なデータによって古い地震の発生を調べることが必要です。

(2012年9月24日 更新)