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日本の火山活動

第2回  噴火の源・マグマとは?

執筆者

藤井 敏嗣
東大名誉教授 火山噴火予知連絡会会長
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爆発するマグマ、爆発しないマグマ

火山噴火は、地下のマグマが地表に接近し地下水に接触するか、表面に現われたときに起こる現象です。この噴火の源となるマグマは、地下の岩石がとけて出来た1000℃前後の高温の流体です。

マグマは岩石がとけたもので、最も多く含まれるのは、岩石と同じように二酸化ケイ素(SiO2)、一般にシリカと呼ばれる化学成分です。シリカはマグマの種類によって50~70%くらいまで変化し、粘り気とも深い関係があるのでマグマを分類する時の基本成分になります。

マグマの名前は、冷え固まった時にできる火山岩にちなんでつけられます。例えば、オレンジ色に輝いて川のように流れるハワイのマグマは「玄武岩マグマ」と呼ばれますが、それが冷え固まると黒い玄武岩溶岩に変わることに由来しています。世界には、非常に変わった成分を持つマグマもありますが、日本の火山は主に、玄武岩マグマ、安山岩マグマ、デイサイトマグマ、流紋岩マグマの4種類のマグマが活動しています。

マグマが爆発的噴火を起こさずに溶岩流として流動する場合には以下のような特徴が見られます。(図1)

玄武岩マグマは時として川のように流れ、冷えて固まると厚さ数m程度の溶岩になります。シリカがやや多い安山岩マグマはゆっくり、あるいはのっしりという表現が適当なくらいノロノロした動きで、冷え固まると数十mの厚さの溶岩になります。デイサイトや流紋岩マグマになると、ほとんど動きません。1日ずっと観察して、ようやく1mほど動くのが分かる程度で、大抵は火口に盛り上がって溶岩ドームを作ることになります。

火山マグマは、こうして作られる!

マグマは岩石がとけたものと説明しましたが、通常の地球内部の温度で岩石がとけることはありません。地球内部の温度は、地中深くなるにつれてどんどん高くなりますが、岩石のとける温度も地下にいくほど、つまり圧力が上がるにつれて高まるので、そのままではとけないのです。ハワイのような場所では、深いところにあった高温のマントル物質が温度を保ったまま浅い所に浮き上がり、その深さで岩石がとける温度より高温になるため部分的にとけ出します。

ところが、日本の火山のマグマの成り立ちは、これとはずいぶん違います。日本の地下には海のプレートが斜めに沈み込んでいますから、日本の火山の下の温度構造は他の地域と比べて特殊です。基本的には他の地域と同様に、地中深くなればなるほど温度が上昇するのですが、地下50~60kmより先に進むと逆に温度が下がり始めるのです(図2)。

これは冷たい海のプレートによって火山の下のマントルが冷やされるためです。この温度構造によって深いところのマントルの温度が低いために、深部の高温の岩石が上昇し、浅いところでとけてマグマを作るという普通のプロセスは起こりません。では、どのようにしてマグマが作られるのでしょう。まず沈み込む海のプレートには水が含まれています。プレートが深さ100km程度にまで達すると、この水がプレートから絞り出されます。水は軽いので、マントルの中を上昇します。プレートのすぐ上のマントルでは温度が1000℃以下なので、水が加わってもとけることがありませんが、温度が1000℃くらいに達する深さ7~80kmでは、マントルの岩石の一部がとけ出し、マグマが出来るのです。

高圧下では、水は岩石のとける温度を低下させる効果があるため(図2)、比較的低温でマグマが出来るのですが、一旦マグマが出来ると水はマグマの中にとけ込んでしまいます。こうしてできたマグマを部分的に含んだマントルは、周囲のとけていない部分より軽くなり、ひとかたまりとなって上昇を始めます。この塊をダイアピルと呼びます。

ダイアピルは上昇の途中で高温の部分を通過することになるため、ダイアピル全体が加熱されてマグマの温度も1200℃くらいにまで上昇します。日本のマグマの元はこうして作られるので、マグマ中に水が含まれていることになります。そのために後で述べるように、日本の火山はハワイなどと比べて爆発的なのです。

地の底で変身を遂げるマグマ

マントルの岩石がとけて出来たマグマの元がそのまま火山から噴出することはめったにありません。マグマの元は、数十kmの厚さの地殻の中を移動してくる間に大きく変身を遂げます。マグマの密度は地殻の岩石に近いので、マントルと地殻の境界にたまったり、地殻の途中でマグマだまりを作り長い間停滞します。この間、ゆっくりと冷却されマグマの化学組成が変化し、おなじみの玄武岩や安山岩マグマとなります。

時には周囲の岩石を自分の熱で溶かして流紋岩マグマを作ったり、その流紋岩マグマなどと混ざり合ってデイサイトや別の種類の安山岩マグマを作るなど、地殻の中はマグマの多様性を生み出す場所なのです。(図3)

噴火の激しさを左右する、揮発性成分

マグマに含まれる成分の中で量的には非常に少ないものの、火山噴火に大変重要な役割をするのが水、炭酸ガスといった揮発性成分です。地表のマグマはほとんど揮発性成分をとけ込ませることはできませんが、圧力が上がるにつれてマグマ中にとけ込める揮発性成分の量は増大します。マグマが地下深くにあるときは高い圧力がかかっていますから、マグマの中に水や炭酸ガスは完全にとけ込んでいます。

日本のマグマの場合、水が数%程度溶け込んでいます。炭酸ガスの量は水の10分の1から100分の1くらいしかありません。 例えば水が3%含まれているマグマが深い場所から上昇し、深さが4kmぐらいの浅い場所までやってくるとマグマにとけ込んでいた水の一部がとけ込めなくなって気泡となるので、泡入りのマグマになります。(図4)

さらに浅い場所まで上昇してくると、マグマにとけ込める水の量はさらに少なくなり、過剰な水は気泡となるのです。こうしてマグマが浅い場所に近付くにつれて気泡の量が増えていくのですが、この気泡がくせ者なのです。気泡の中身は水とはいっても気体、つまりは水蒸気ですから、マグマが上昇して圧力が下がるにつれ膨張する力が生まれます。ところが、周囲はマグマですから、容易に膨れることができません。このため気泡の中に高い圧力が蓄えられるのです。

こうして気泡を含んだマグマが浅い場所に上昇してくると、マグマは気泡の圧力に耐えられなくなり、遂に破裂してしまいます。これが爆発的噴火です。気泡の急膨張で破裂してできたマグマのかけらは粉々のガラスになってしまいますが、このとげとげしたガラスが火山灰なのです。

粘り気が低いマグマの場合、マグマが上昇する過程で水が気泡となっても、スルスルとマグマから抜け出てしまいます。マグマ中の気泡がなくなれば、浅い場所まで上昇しても爆発のしようがありません。このようなマグマは火口から溶岩流として流れ出るだけのおとなしい噴火になります。つまり噴火直前のマグマ中に水などの揮発性成分がどれくらい含まれているかどうかで、噴火の激しさが決まるのです。

ただ、揮発性成分を失った粘り気の低いマグマでも、例外的に爆発的噴火を起こすことがあります。それはマグマが地下水と接触したり、深さ数百m以下の浅い水中で噴火した場合です。高温のマグマの周辺の水が一挙に蒸発して水蒸気となって膨れ上がる際にマグマを破裂させることになるのです。このような爆発的噴火をマグマ水蒸気噴火と呼びます。

(2012年9月1日 更新)