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液状化・地盤災害・土木被害

第3回  ライフラインの地震被害と対策を考える

執筆者

安田 進
東京電機大学教授 工学博士
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生活に必要なライフランはどのように造られるのか

上水道、下水道、電気、ガス、通信といったライフラインは日常生活にとって最も大切な設備です。これらは(図1)に示すように地中と空中に設置されています。埋設管は、一般に地盤に溝を掘り、管を敷設した後に、溝を砂で埋め戻して建設します。点検などを行うために管路の途中にマンホールも設けます。

一方、電力と通信のケーブルは主に電柱につり下げますが、一部のケーブルは地中に埋設しています。また、近年は共同溝によって各種のライフラインを一緒に設置することも多くなってきました。

地震によってどんな被害を受けるのか

東日本大震災では広い範囲でライフラインが甚大な被害を受けましたが、被害の形態は各ライフラインや場所によって異なります。また、復旧の早さも同様で、水道や電気、通信は比較的早く数日で復旧できたのに対し、ガスは1カ月程度、下水道では仮復旧でも1カ月以上かかり、さらに液状化被害に関しては本復旧にはまだ1、2年かかるといった地区も多くあります。

このようにライフラインの種類によって、被害や復旧の様子が大きく異なりますが、最も復旧に手間取っている下水道では、

(1)埋め戻し土や周囲の地盤の液状化による被害
(2)造成地の盛り土の崩れによる被害
(3)津波による下水処理場の被害

といった主に3種類の被害が発生しました。(1)ではマンホールや下水道管が浮き上がる被害が東北地方で多く発生しました。これは、周囲の地盤は液状化しなくても、下水道管を埋設した時の「埋め戻し土」が締まっておらず、液状化したことが主な原因です。一方、東京湾岸の埋め立て地で一面に液状化した地区では浮き上がりはあまり生じず、(図2)のようにマンホールがずれたり、下水道管の継手が外れて、そこに液状化した土が入り込む被害が多発しました。

このような被害は珍しく、原因を解明しているところですが、本震の継続時間が長かったので地盤が液状化した後で大きく揺すられ続け、さらに液状化したままで29分後に大きな余震を迎え、揺動し続けたためではないかと、今のところ考えられています。

(2)の造成地の盛り土の崩れは仙台などの丘陵地で多く発生し、それに伴って下水道管も被害を受けました。(3)の例として、仙台市の下水処理場で津波によって壁がぶち抜かれた建物があります。太平洋岸では津波によって処理場が甚大な被害を受けました。

地震被害を受けやすい条件とは

ガスを例にとりますと、まず高い圧力で工場から送出されたガスは次第に圧力を下げていって各家庭に届きます。この間に直径が50cmを超える太い高圧ガス導管から、中圧ガス導管を経て、5cm程度の細い低圧ガス導管へと分かれていき、さらに細い供給管で家庭に入ります。東日本大震災の際、高圧ガス管は被害を受けず、中圧管もほとんど被害を受けず、低圧管、供給管となるにつれて相対的に被害率が高くなりました。

これは、埋設管の材料や継手の構造が関係しています。かつては低圧ガス管に亜鉛メッキ鋼管(ネジ継手)が多く使われていましたが、最近は地震に強い被覆鋼管(耐震継手)やポリエチレン管を使うようになっています。昔、使われていた埋設管や継手ほど地震に弱い傾向にあります。 このように、ライフラインは一般に「供給元の方では地震に強く、供給先の方で被害を受けやすい」状況にあります。

さらに、地盤がよくないところでは埋設管は地震による被害を受けやすくなります。代表的なものとして、液状化が発生する地盤と谷間に軟弱な粘土が堆積している地盤が挙げられます。液状化による被害では、地下水位以下に埋設された軽い埋設管やマンホールが浮き上がりますし、それ以外にも地盤が大きく揺すられますので埋設管が曲げられ、押されて壊れます。一方、谷間に軟弱な粘土が厚く堆積している所では、谷部が地震時に大きく揺れるのに対し周囲の丘の方の揺れは小さいので、丘に近い谷部では地盤が大きくひずみ、埋設管も被害を受けやすくなります。

被害を防ぐにはどうすればいいのか

被害を防ぐ方法の一つは、地盤が大きく揺すられても被害を受けないように強い埋設管や継手構造を用いることです。このため、各ライフラインで種々の技術開発が行われ、最近は強い埋設管を敷設するようになっています。例えば、ガス管では前述したポリエチレン管が地震に強いので、多く使用されるようになってきています。また、水道管では地盤のひずみに対応できる伸縮継手を使ったりしています。

一方、「埋め戻し土」が液状化して下水管やマンホールが浮き上がることに対しては、「埋め戻し土」にセメントを混ぜて液状化させないようにして施工するといったことも行われています。

ただし、これらは埋設管を新設する場合や取り換える場合の対策です。わが国の都市にはライフラインが既に網の目のように張り巡らされており、既設の埋設管を対策することが大切ですが、技術的にはなかなか難しい状況にあります。下水道マンホールでは液状化によって浮上しないように(写真1)に示すような重しをのせる対策などが最近、施されるようになってきました。しかし、下水道管を掘り起こさずに安価に対策を施す技術はまだ研究段階です。このように、既設の地震に弱いライフラインをいかに耐震補強していくかが課題となっています。

(2012年9月1日 更新)