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地震の揺れと長周期地震動

第2回  揺れの測り方

執筆者

纐纈 一起
東京大学地震研究所教授 理学博士
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揺れを測る装置

地震の揺れ(地震動または地震波)は地面(場合によっては地中のボーリング穴など)に設置された地震計で測ります。しかし、地震計は地面と一緒に動いてしまうので、そのままでは地面の動きである地震動を測ることができません。そこで振り子の原理を利用します。おもりが重く、糸の長い振り子はその支点が動いてもすぐには動き出さず、一見、不動点として振舞うという原理を利用します。地面と一緒に動く記録装置とこの振り子を組み合わせ、記録装置に対する振り子の相対的な動きを逆向きに記録すれば、地震動が得られるはずです(図1)。ただし、不動点に近いように振る舞う振り子ほど、いったん動き出すと地震が終わっても止まらないので、比較的新しい地震計では制振器でその動きを抑えるよう設計されています。

地震計の歴史

このような原理に基づいた地震計のうち、イタリアで作られた先駆的なものを除くと、最も古い地震計は、明治政府に雇用された「お雇い外国人」のユーイング、グレイ、ミルンなどによって作られました。水平方向の地震動を記録する地震計では、おもりを付けた金属棒(てこ)を振り子に使ったユーイングが先行したのに対して、上下方向の地震動を記録する地震計は、振り子をおもり付きバネに置き換えたグレイが先行していました。この両者を合わせ、刻時装置に関するミルンの工夫が加わった三成分(水平二成分と上下成分)地震計、ユーイング・グレイ・ミルン式地震計(1880年代初頭)は1883年から気象台で採用され、その後、日本初の標準地震計となりました。この地震計では三成分の地震動が煤(すす)を付けたガラス円盤に記録されます。

このように、振り子の動きをてこなどで機械的に拡大して記録装置に伝える方式の地震計を「機械式地震計」と呼びます。しかし、機械的伝達には必ず摩擦が伴うので、精度の高い観測には不都合なことも起こります。そこで、振り子の動きを電気信号に変えて伝達することで摩擦を回避する「電磁式地震計」が開発されました。世界最初の「電磁式地震計」は帝政ロシアで作られたガリチン地震計(1907年)です。その後のエレクトロニクスの発展により、電気信号が取り出せることは大きな利点となり、近年の地震計はほとんどすべてが「電磁式地震計」です。また、制振器の機能を電気回路で実現することが可能で調整も容易であるので、初期の頃から「電磁式地震計」は制振器を備えています。

揺れの強さを測る

揺れは地面(または地中)の振動現象ですから、その強さはまず地震計に記録された振れ幅(振幅)で測ります。揺れのうち実体波(第1回「地震の揺れとは?」参照)は震源を中心とした球面となって広がっていくので(球面波)、震源で発生した揺れのエネルギーの総量がそのまま保たれたとしても、震源距離(震源とある地点の距離)Rを伝わった時点では4πR2の球面上にそれが拡散されてしまうので、その地点でのエネルギーは震源距離の2乗に反比例して減少します。これにエネルギーは振幅の2乗に比例することを考え合わせれば、実体波の振幅は震源距離に反比例して減少することになり、これを幾何減衰と呼びます。一方、表面波(第1回「地震の揺れとは?」参照)は地面に沿って伝わるので、そのエネルギーは震央距離(震源の真上の地面「震央」とある地点の距離)rを伝わった時点で、2πrの円周上に拡散します。したがって、表面波は震央距離の平方根に反比例して幾何減衰します。

このほか、揺れを伝える地中の岩石は多かれ少なかれ、揺れのエネルギーを熱などの別のエネルギーに変えてしまう性質を持っています。このエネルギー変換に伴っても揺れは弱まることになり、これを内部減衰または非弾性減衰と呼びます。したがって、揺れの強さは震源や震央から離れるにつれて、幾何減衰や内部減衰などにより弱まっていくことになり、これらを総称して距離減衰と呼んでいます。

災害につながるような強い揺れを強震動と呼びますが、距離減衰のことを考えれば強震動は震源から比較的近い地点で起こる現象です。ただし、地震の揺れを構成している振動の成分のうち、小刻みに素早く振動する成分はゆったりと振動する成分より大きな内部減衰を受けやすいため、長い距離をかけて伝わった後では前者の成分は大きく弱まってしまいます。一方、後者の成分は思いのほか残りやすく、メキシコ地震(1985年)や十勝沖地震(2003年)では、400 kmあるいは250 kmも離れた地点で被害を及ぼしました。ゆったりと振動することは言い換えると周期(振動が一回往復するのに要する時間)が長いことを意味するので、こうした遠方の強震動は「長周期地震動」と呼ばれています。また、上で説明したように、距離減衰のうち幾何減衰に関しては、地震波のうち表面波の方がゆっくり減衰する(距離そのものではなくその平方根に反比例する)ので、「長周期地震動」は大部分が表面波で構成されていると考えられます。

体感震度から計測震度へ

揺れの強さの指標としては振幅だけではなく、震度に長い歴史があります。震度とは本来、揺れの強さを人間の体感や周囲の視察などで測り、いくつかの階級(震度階級)に分けて示すものなので、地震計などの特別な機器なしに、素早く決定できるだけでなく、誤報や欠測の可能性が少ないという特徴を持っています。そのため、日本では古く1884年から中央気象台や気象庁による報告が、震度階級表などを用いて行われてきました。(表1)また、歴史地震による揺れに対しても、古文書などにある被害の記載から震度が推定されています。


しかし、こうした「体感震度」には体感・視察によるゆえに任意性の問題があることが、かねてより指摘されていました。そして、震度7の確認が遅れた阪神・淡路大震災(1995年)の経験を経て、1996年には震度計で機械計測される「計測震度」に変更されました。また、このとき同時に、震度5以上で被害の幅が広過ぎるという問題点を解消するため、震度5と6がそれぞれ強弱の2段階に分割されました。

(参考文献)
気象庁 (1978)「地震観測指針(観測編)」 第六版 166p.

(2012年7月3日 更新)