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液状化・地盤災害・土木被害

第2回  丘陵地の造成宅地盛り土崩壊による被害

執筆者

安田 進
東京電機大学教授 工学博士
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丘陵地での住宅団地の建設

わが国では第2次世界大戦後、都市の人口が増えてきたことと、核家族化が進んだため、都市近郊の丘陵地に住宅団地が数多く造られてきました。丘陵地には一般に小高い丘や小さな沢があります。ここに新たに住宅団地を造る場合、団地はなるべく平らな方が良いため、(図1)に示すように、丘の土を削って沢に盛ります。このため団地内に切り土と盛り土の区域が出来ることになります。

また、完全に平らな地盤までは造成せずに、(図2)に断面図を示すように少しひな壇状に宅地が造られたりします。この場合、切り土の区域のひな壇は地山を切って造られているため固く、地震や豪雨が襲っても崩れにくいのですが、盛り土した部分は地山より緩い地盤になっているので、場合によっては地震や豪雨が襲うとひな壇が崩れたり、沈下してしまいます。特に沢の下流部のAには高いのり面が造られていることが多く、そこでの崩壊がよく発生します。

東日本大震災での被害

丘陵地で住宅団地の地震被害が出始めたのは1968年の十勝沖地震からです。札幌市郊外の造成宅地の盛り土部の住宅に被害が発生しました。それ以降、1978年宮城県沖地震、1987年千葉県東方沖地震、1993年釧路沖地震、1995年阪神・淡路大震災、2004年新潟県中越地震、2007年新潟県中越沖地震と大地震のたびに被害が発生するようになり、しかも被害の件数も増えてきました。

そして、東日本大震災では宮城県から福島県、茨城県にかけての広い範囲にわたって、丘陵地の数多くの造成宅地で盛り土の滑りや変形、地割れ、擁壁の崩壊といった地盤の変状が発生し、そこの家屋とともに上下水道やガスの埋設管も甚大な被害を受けました。特に仙台市では被災した宅地が大変多く、平成23年8月19日現在において仙台市で把握されている中程度以上の被害がある宅地は4031宅地にのぼっています。

ところで、仙台市や白石市では、1978年に宮城県沖地震で盛り土が被害を受けた造成宅地がまた強い揺れに襲われました。前の地震の復旧にあたって、盛り土を修復しただけで根本的な対策を施さなかった箇所では東日本大震災で再度被害を受け、一方で(図3)に示すように鋼管杭を打ち、地下水位も低下させて滑りを止める十分な対策を施した箇所では、被災を免れました。現在東日本大震災に対する復旧方法を検討中ですが、再度災害を受けないように対策を施した復旧が行われることが望まれます。

被害にはいくつかのパターンがあります。図1、2のうちAのような盛り土下流部の高いのり面では、(写真1)に示すようにのり面が大きく崩れ、背後の宅地に沈下も発生して、そこに建てられていた家は大きく傾くなど甚大な被害を受けました。Bのような盛り土と切り土の境では盛り土部の沈下により段差が発生し、境界に建っている家の土台や壁にひび割れが入り、埋設管も被害を受けました。また、ひな壇の各のり面は通常擁壁で押さえてありますが、その擁壁がはらみ出して、上の家が傾いたり、盛り土の圧縮沈下により家も沈下するなど、さまざまな被害が発生しました。

どんな盛り土が危険なのか

地震の時に被害を受けやすいのは、一般に、締まっていなく浅いところに地下水がある盛り土です。盛り土は周囲の地山を切った土を使って盛られますが、その時にいくつか大切なことがあります。まず、沢の斜面に生えている木や草を取り除き、沢に沿って排水管を設けてから盛り土を開始する必要があります。また、30cm程度土をまき出したところで、丁寧に十分に締め固める必要があります。盛り土に用いる土も砂と粘土がほどよく混じっていた方がよく締まります。このような締め固めを怠ると緩い盛り土になって、地震時に崩れたり沈下しやすくなります。

また、沢にはもともと周囲から地下水が入り込んできているので、その水を排水管で抜かないと(図2)の断面に示すように盛り土内の下部に地下水が溜まり、地下水面が浅くなります。地下水面の下の土は浮力を受けるため、滑りに抵抗する力が小さくなります。したがって、地下水位が浅いと地震時に滑り崩壊が発生しやすくなります。

さらに、盛り土をした箇所が砂質土で締め固まっていない場合には、地下水位以下の部分が液状化して甚大な被害が発生します。また、擁壁が不安定だとはらみ出して、その上の宅地に沈下やひび割れが発生します。

崩壊を防ぐには

対策の必要性を検討する場合、まず団地内で盛り土区域を抽出する必要があります。見た目ではどこが盛り土か分かりませんので、造成前と造成後の地形図や航空写真を比較して盛り土箇所を調べます。次に、盛り土の中でも危険そうな区域を探し、地盤調査をして(図2)のような断面図を作成します。そして、滑り崩壊に対する検討を行い、不安定と判断された場合にはその滑りを食い止めるための対策方法を検討します。また、擁壁の安定性に関しても検討を行います。

検討の結果、滑りに対して不安定と判断された場合には、滑る原因に応じて対策方法の種類を選定します。例えば地下水位が高いことが主な原因と考えられる場合には、水平や斜めにボーリングし、そこから排水して地下水位を下げます。また、地下水位が低くても滑り崩壊が予想される場合は、杭を列状に打ち込んで滑りに抵抗させます。盛り土全体は滑らず、擁壁だけが不安定な場合には擁壁を補強します。

(2012年5月29日 更新)