トップページ > コラム > 地震・津波台風・大雨落雷・突風大雪猛暑火山・降灰火災PM2.5・黄砂防災の知恵住宅地の液状化による被害

液状化・地盤災害・土木被害

第1回  住宅地の液状化による被害

執筆者

安田 進
東京電機大学教授 工学博士
プロフィール・記事一覧

液状化するとなぜ住めなくなるか

東日本大震災では東北から関東にかけての各地で地盤の液状化が発生し、約2万7000戸の住宅が被害を受けました。通常はしっかりした地盤が、大きな地震を受けると突然泥水のように変わるのが液状化です。通常は堅いのでその上に家を建てて住んでいるところに、突然支えているはずの地盤が液体状になりますので、家は当然沈下していきます。写真1は東日本大震災時の液状化で沈下した交番ですが、窓ガラスは割れず壁に亀裂が入るでもなく、静かに沈下しています。同様に、地震後外に飛び出して初めて自分の家が沈下したことに気付いたという話もよく聞きます。

ただし、沈下するときにまっすぐには沈下せず、傾きながら沈下していくのが一般的です。実は傾くことによってそこで生活できなくなってしまいます。人間の感覚は非常に繊細で、少し傾いただけの家でも住んでいると次第にめまいや吐き気がしてきます。液状化現象自体は半世紀前の1964年に発生した新潟地震を契機に広く認識されるようになってきたのですが、どれだけ傾くと生活が困難になるかは最近まで明らかにされてきていませんでした。このため、液状化による家屋の被害は、震動そのものによって家が壊れる被害に比べ軽視されてきました。

ところが、東日本大震災で非常に多くの家屋が液状化によって被災したため、表1に示す新たな被災度の判定基準が内閣府から示されました。例えば1/1,000傾くと半壊と判断されるようになりました。10mの幅の家ですと、片方が他方に比べて10cm沈下するといった値です。たかだか10cmの不同沈下といっても、そこでの生活は困難になります。写真2は40/1,000ほど傾いた家の中です。これだけ傾くと生活できないので、家全体を持ち上げて水平にする工事によって復旧されました。

なぜ地盤が液体状に急変するのか

地面を掘っていきますと、通常ある深さに達すると水がじわーっとしみ出してきます。これを地下水面と呼びます。その下の土は土粒子の隙間に水がびっしり詰まった飽和状態になっています。また、土は粒径によって大きい方から礫(れき)、砂、シルト、粘土と分かれています。地下水位以下の土が地震によって繰り返しひずまされると、土粒子同士のかみ合わせが徐々に外れ、最終的にばらばらの状態になってしまいます。この時、それまでは土粒子の隙間に水があった状態から、水の中に土粒子がばらばらになって浮いたような状態になってしまいます。これは泥水と同じ状態で、液状化したことになります。砂でなく粘土ですと粘着力のため粒子が外れにくく、また、礫では水に浮いたような状態にはなりません。また、粒子がびっしりと詰まっていて隙間が少ないと粒子同士がばらばらになりません。さらに地下水位が浅い方が浮力の関係でかみ合わせが外れやすいので、結局、(1)砂が、(2)緩く堆積し、(3)地下水位が浅い地盤が液状化しやすいという言い方になります。

液状化しやすい場所は特定できるか

上記の(1)~(3)の条件がそろった場所は海岸や池、沼を埋め立てた所や、砂丘と内陸との境、自然堤防の際、といったところです。したがって、古い地図と現在の地図を比較して、このような場所かどうかの判断ができます。ただし、これだけでは定常的な判断しかできないので、どれくらいの大きさの地震が襲ったら液状化するかといったことは、地盤調査結果を用いて計算する必要があります。わが国では多くの自治体ですでにこのような計算を行い、液状化に対するハザードマップとして公表しています。したがってこのハザードマップを利用するとよいのですが、これもある区域内での平均的な判断しか行われていませんので、自宅の地盤での正確な判断をしたい場合には、やはり地盤調査を行う必要があります。

被害を防ぐには

前述したように、液状化現象が広く認識されるようになってからすでに半世紀経とうとしています。この間に液状化に関する研究は多く行われ、液状化の対策方法も数多く開発されてきました。これを大別しますと(1)液状化の発生を防ぐ方法と、(2)液状化しても構造物が被害を受けない方法、とに分けられます。前者にはまた、地盤を締め固める方法、地盤にセメントなどを混ぜて固める方法、(3)地下水位を下げる方法などがあり、後者にはくい基礎で支える方法などがあります。橋や中・高層ビル、タンクといった大型の構造物ではこのような方法で液状化対策が行われてきています。

ところが、東日本大震災では非常に多くの戸建て住宅が甚大な被害を受けました。これは、大型の構造物では液状化を考慮した設計をしているのに対し、戸建て住宅ではそのような設計上の縛りがなかったためです。

東日本大震災で液状化によって被災した住宅のうち、1年近く経った今でも復旧されたのはまだ2~3割程度ではないかといわれています。それも家を持ち上げて傾きを直す沈下修正のみで復旧されている住宅がほとんどです。液状化した地盤は同程度以上の地震に襲われれば再び液状化する可能性があります。最近の例ですと、2010年に本震が発生しその後大きな余震が続いているニュージーランドのクライストチャーチで、3~4回液状化が発生し、そのたびに沈下が進んでいる家も見られます。したがって、家を復旧する際に液状化を防止する対策を施すとか、または、地域全体で液状化対策をするといったことが大切で、このために経済的で可能な対策方法を急きょ開発しているところです。また、家を新設する際に狭あいな土地でも経済的で施工が可能な液状化対策を開発しているところです。

(2012年3月9日 更新)