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地震全般・各地の地震活動

第1回  地震はどうして起きるのか

執筆者

平田 直
東京大学地震研究所教授 地震研究所地震予知研究センター長
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地震の原因は断層

かつて地震は地中に住む大なまずが暴れることによって起きると考えられていたことがありました。大なまずを押さえつける地震の守り神が各地に伝わっています。例えば、鹿島神宮の「要石(かなめいし)」が有名です。もちろん、これは神話の世界の話ですが、この考えで重要なことは、地震が発生するのは、地下に原因があるということです。現在の地震学では、地震の原因は、大なまずではなく「断層」であると考えられています。

地下の岩石に大きな力がかかって、岩石がずれるように破壊される現象が地震です。この破壊現象は、ガラスが粉々に砕けるような破壊ではなく、ずれるように破壊されるということが重要です。専門家は剪断(せんだん)破壊といいます。岩石がずれることによって、地下に「食い違い」が生まれます。これは断層の一種です。地震が発生するとは、地下で断層が形成されるということです。この地下の断層を「震源断層」といって、地質学で用いられる断層と区別することがあります。

地下で急激に断層が形成されると、周辺の岩石に大きな力が加わります。そのために、地震の波が発生します。地震波には、およそ6km/sの速さで伝わる縦波(P波)と、4km/sで伝わる横波(S波)の2種類があります。地震波が地表まで伝わると地面が揺れます。通常は後から来る横波の揺れが大きいので、まずカタカタと縦波の小さな揺れを感じた後、ユサユサと横波の大きな揺れを感じます。縦波、横波というのは、元来、波の伝わる方向に沿って振動する波が縦波、その方向に直交する方向に振動する波が横波です。地震波は地表付近では、真下から真上に向かって伝わるので、結果として縦波は上下に大きく揺れ、横波は水平方向に大きく揺れます。

地震の規模と震度

地震とは地下で断層が形成される現象です。地面の揺れは地震動といってこれとは区別します。地震が大きいということは地下で形成される断層の面積が大きく、断層でのずれが大きいということです。この地震の大きさを、地震規模、あるいは地震マグニチュード(Magnitude, M)といいます。地震規模には、定義上は、最大値、最小値ということはありません。これに対して、地面の揺れ、つまり地震動の大きさを「震度」といいます。日本では気象庁の震度階が使われ、最小値が0、最大値が7です。ある地震の地震規模(M)は一つの値ですが、地面の揺れは地震に近いと大きく、遠ければ小さいので、震度はいろいろな値となります。地震は非常に小さいものから非常に大きいものまであるので、その値の範囲は何桁にも及びます。そこで、大きさの対数を用いて地震マグニチュード(M)が定義されています。これまでに観測された最大の地震は、1960年のチリ地震で、M9.5と推定されています。小さな地震はMが0や-1のものもあります。マグニチュードが1増えると、地震のエネルギーは約32倍、2増えると1000倍になります。

地表で地殻変動が起きる

地震が発生すると、揺れ(地震動)が観測されるだけでなく、地表が隆起したり沈降したりすることがあります。地表が水平方向に移動することもあります。また、大きな地震では地割れが現れることもあります。地震とは地下で震源断層が形成されることですが、その断層が地表まで達すると断層は地表で観察されます。これを、地表地震断層といいます。大きな地震はほぼ同じ場所で繰り返し発生するので地表地震断層は、特別な地形を形成します。これが活断層です。

富山県立山から岐阜県天生(あもう)峠付近では北北西-南南東に流れる跡津川が直角にクランク状に屈曲しています。川沿いに走る国道41号線も見事に、直角に曲がっています。これは、元々まっすぐに流れていた川が、右横ずれの断層運動によってクランク状に変形してしまったのです。過去に繰り返し地震が発生して、現在でも地震が起こる可能性のある断層を活断層といいます。大昔の地質時代に地震が起きていても、現在は地震の発生する可能性がない断層は地質断層といって区別されています。跡津川断層では、1858年(安政5年)の飛越地震(M7.3~7.6)が起こったことが知られています。ただし、この断層での地震発生の繰り返し間隔は、2千年以上だと考えられているので、現時点で30年以内に地震の起きる確率は「ほぼ0%」です。しかし、完全に0%ではないことは覚えておきましょう。

最も大きな断層はプレート境界

さて、地震を起こす能力のある活断層で一番大きな断層はどこにあるのでしょうか。答えは、「プレート境界」です。プレートというのは、地球を覆う厚さ100km程度の十数枚の大きな岩盤のことです。日本ではプレートの境界が基本的には海の中にあって直接観察することができませんが、アメリカのカリフォルニア州では、サンアンドレアス断層という南北1300kmの長さの巨大な活断層が、太平洋プレートと北米プレートの境界となっています。ここでは、1906年サンフランシスコ地震(M7.8)が発生して、大きな被害が出ました。日本では、2011年に東北地方太平洋沖地震(M9.0) が太平洋プレートと東北日本を形成するプレートの境界で発生しました。太平洋プレートは、日本海溝から西に向かって東北地方の下に沈み込んでいます。この地震によって東日本大震災が発生し、死者・行方不明者あわせて約2万人 にのぼる被害となりました。

地震を起こす力のある活断層で最も大きなものがプレート境界だといいましたが、どうしてプレート境界で大きな地震が起きるのでしょうか。実は、プレートの境界付近でプレートが大きく変形することによって起きる現象の一つが地震なのです。プレートは、地表付近の岩石の変形の単位と考えられています。つまり、プレートはその内部ではあまり変形せず、プレートとプレート境界部で押し合ったり、引き合ったり、こすれ合ったりして、お互いに力を伝えています。そのために、プレートの境界とその付近で大きな力が岩石に働き、熱が発生して岩石が溶融したりしています。これが、地震が起きたり、火山が活動したりする一因です。

岩石がずれるように破壊される原動力は、プレートの運動でした。例えば、太平洋プレートという地球上で最も大きなプレートは、日本列島に向かって1年間に10cm程度の速さで押し寄せてきて、東北日本の太平洋沖の深さ数千メールの日本海溝から西に向かって沈み込んでいます。このようなプレート境界を収束境界と呼ぶことがあります。二つのプレートがぶつかりあって、一方が片方の下に沈み込み、地表からは消滅しているのです。太平洋プレートの動きは、約2億年続いていたと考えられています。プレートの水平方向へのゆっくりとした、しかし確実に進行している運動が、地震を起こす原動力です。

地震は地下の岩石がずれるように破壊される現象です。その結果として、断層が形成されます。地球上で最も大きな断層はプレートの境界です。こうした断層でずれが発生する原動力はプレートの動きです。つまり、プレートがあって、断層があるから地震が起きるともいえます。さて、そうすると地震と断層はどちらが原因で、どちらが結果なのか分からなくなります。これは、ちょうど、鶏が先か卵が先かという議論に似ていますね。文脈によって、どちらともいえます。

(2012年3月9日 更新)