東京・渋谷区千駄ヶ谷。
国立競技場や明治神宮にも近い街中に、去年12月に完成したオフィスビルがあります。
敷地の庭に案内されると、そこにあったのは・・・
井戸です。
ビルを建てる際、新たに掘ったといいます。
地下15メートルからの地下水を電源によるポンプのほか、手動でもくみ出すことができるといいます。
飲むことはできませんが、災害時にはオフィスビルで働く人たちだけでなく、地域の人にも使ってもらいたい考えです。
オーナー会社 鈴木智久代表取締役
「オフィスビルのオーナーとして地域のみなさまに防災面で協力できることがあると思います。
インフラ、電気、水、なくてはならないもののなかで、水はどうしても必要になってきます。
ここに井戸があると知ってもらえることで地域のみなさまに安心感をもってもらえると思い
ます」
災害時の水の確保は住宅業界でも注目されています。
神奈川県小田原市にある住宅メーカーのモデルハウスを訪ねました。
案内されたのは台所。床下を見せてもらうと・・・
そこにあったのは長さ1メートルあまりのタンク。
台所の蛇口に向かう水道の途中に取り付けられていて、タンクの中に水を循環させながら
水道水を利用する仕組みになっています。
断水した際は、足踏み式のポンプでタンクから押し出した水が蛇口から出てきます。
タンクのなかには4人家族・3日分の飲料水をためることができるといいます。
住宅メーカー 小山隆さん
「飲料水の問題というのは能登の地震でもなかなか断水が復旧しないという情報も来ているので
お客さまの興味も高いと思っています。
在宅で避難できるような住宅を世の中に供給することが使命だと思っています」
備えるのは井戸水や水道水だけではありません。
神奈川県相模原市には雨水タンクのメーカーが去年、大きな雨水の貯留槽をつくりました。
山間にある広さ300平方メートルほどの貯留槽。半地下の構造になっていて、
階段で降りていくと内部はパイプの柱が無数に並ぶ空間が広がっていました。
このなかに雨水を1000トンためることができるといいます。
降った雨水をそのまま利用することはできません。
この施設では、一番汚れている降り始めの水を捨てるとともにフィルターを通して、
大きなゴミを取り除きます。そして貯留槽へと流し込みます。
この行程は、山の斜面の高低差を利用することで電力は不要だといいます。
貯留槽に雨水をためる仕組みです。
貯留槽のなかは4つの槽に分かれています。
水は最初の水槽がいっぱいになると、上澄みだけが壁の配管から次の水槽に流れます。
汚れや泥などは底に沈み、きれいな水が残る仕組みです。
日光に当たることもなく、時間がたっても水質の悪化を防ぐことができます。
特別な浄水器を使えば飲むことも可能だということで、わたしも飲ませてもらいました。
普通の水と特に違いを感じませんでした。
メーカーでは地域の備えとして、自治体や大規模商業施設などに、
導入してもらいたいと考えています。
雨水タンクメーカー 安藤美乃さん
「いまいろんなところで地震が起きているがトイレもそうだし洗濯、からだを洗う、飲める、
できないことはないと考えています。
遠くから水をひっぱってくるのではなくて、地域毎にためて利用しようと。
無限だと思っていますね。雨水は」
さまざまな動きのある水の備え。
専門家は、災害時に使える井戸などの設備は各地にあるものの、
役立てるためには、日頃から自治体や民間で情報を共有しておくことが大事だと指摘しています。
水政策に詳しい 大阪公立大学大学院 遠藤崇浩 教授
「重要なのは実際に災害が起きたときに、どこの井戸が使えるのか、その情報共有の仕組みを
あらかじめ考えておくことです。こういう仕組みを考えておくことで、自助、共助、公助の
連動がうまくいくんじゃないかと考えています」
私たちも家庭で水を備蓄することに加えて、
住んでいる地域にどんな備えがあるのか、調べておくことが大事だと感じました。