色鮮やかでデザインもさまざまなネイルチップ(つけ爪)。
世界的な問題になっている「海洋プラスチックごみ」が材料として使われています。
製作を手がける茅ヶ崎市のネイリストの思いを取材しました。
取材:越田穂香キャスター
茅ヶ崎市でネイルサロンを営む、有本奈緒美さんです。
手作業で作り出すネイルチップの立体的な装飾部分に、地元の海岸で拾い集めた「海洋プラスチックごみ」を使っています。
おしゃれをしながら環境問題も意識できると、いま注目を集めています。
ごみを拾って、新しい形によみがえらせて、皆さんにつけて楽しんでいただく。
指先にパーツとして使えば、常に見ることができて環境問題を意識できると思いました。
有本さんは10年前、せき髄の難病を患って下半身の自由を徐々に失い、車いすでの生活になりました。
当時は介護の仕事をしていて、やりがいも感じていましたが、やめざるを得なくなりました。
ふさぎ込み、自信を失い、家族に当たってしまうこともあったという有本さん。
そんな気持ちを変えてくれたのは、子どもたちの言葉でした。
「お母さんのことが恥ずかしいんでしょ?」って食卓で聞いてしまったんです。
そのとき子どもたちは「お母さんはお母さんでしょ。だって頑張ってるじゃん」って言葉をかけてくれました。
それを聞いて「私、こんな状態でいてはダメだな」ってスイッチが入りました。
一念発起した有本さんは、趣味で学んでいたネイルの技術をいかし、バリアフリーのネイルサロンを開業します。
さらに、社会貢献のため、家族と一緒に地元の海岸でごみを拾う活動も始めました。
そこで拾い集めたプラスチックごみを再利用して、ネイルチップをつくることを思いついたのです。
パーツは小さいので、ごみを活用できる量は少ないですが、環境問題について何か考えていただくきっかけになればいいなと。
挑戦を続ける有本さんの姿は共感を呼び、活動は広がりを見せています。
プラスチックごみを一緒に拾い集めたいと、県内外から仲間が駆けつけてくれるようになったのです。
有本さんは、車輪の太い「砂浜用の車いす」に乗り換え、仲間にサポートしてもらいながら砂浜へ向かいます。
レジャーシートに座り込み、みんなでおしゃべりを楽しみながら拾っていきます。
有本さんがやっていることがすばらしいな、すごいなって。
とにかく私も一緒にやりたいっていう気持ちで参加しています。
拾うことおよそ2時間。
家族だけで行っていたときとは比べようもないぐらい、たくさんの量が集まりました。
これだけ仲間が集まるとは思っていなかったので、自分が一番驚いています。
諦めないで挑戦した先にみんなでつながっていける。
私にはすごく生きていく励みになりました。
有本さんはいま、障害のある人にネイルチップをつくる楽しさを体験してもらう取り組みも始めています。
この日、有本さんのネイルサロンを訪れたのは、県内に住む20歳の女性。
もともとネイルに興味があり、有本さんの活動を知って自分でも作ってみたいと思ったといいます。
プラスチックを細かくカットし、装飾の輪の中に詰め込む繊細な作業を、有本さんが丁寧に手ほどきします。
最後にアイロンの熱で溶かして固めると・・・
初めて作ったとは思えないぐらい上出来!
ネイルチップ作りを覚えることで、「自信」をつけてもらいたいという有本さん。
将来的には障害のある人たちに、「仕事」として製作を依頼できるようにしたいと考えています。
1歩2歩踏み出した事によって、いまの自分があると感じています。
いろんな世界が広がっていて、その先にはいろんな方とのつながりが広がっています。
そうした選択肢をみんなで増やしていければいいのかなと思っています。
諦めず前に進み続ける有本さんの生き方にたいへん刺激を受けました。
「できないことを悔やむより、できる工夫を」。
有本さんのこの言葉を胸に、私も臆せずいろんなことに挑戦していきたいと思いました。