テレワークで長時間労働を強いられて精神疾患を発症し、異例の労災認定を受けた女性。
代理人が会見を開いてコメントを発表しました。
「窓のない独房で常に監視され、追い込まれているような状況に陥ったら、上司は無視して、残りの力を振り絞って病院や労働の専門家の元に駆け込んでください」
コメント全文と弁護士の主張をお伝えします。
横浜市の補聴器メーカー「スターキージャパン」の50代の女性社員は、テレワークで長時間労働を強いられて適応障害を発症し、2024年3月に労災認定を受けました。
2021年の末ごろから、新システムの導入などで業務量が増え、1か月あたりの残業時間が100時間を超えました。
長時間のテレワークで労災が認められるのは極めて異例だということです。
これについて、代理人の笠置裕亮弁護士らが4月3日に都内で会見しました。
労災認定を受けた女性も出席する予定でしたが、急きょ欠席となり、コメントが発表されました。
その全文です。
労災認定を受けた女性のコメント
私は2019年に会社に入社し、2021年初めから上司が不在となりました。その間、海外レポーティングなどのマネージャー業務や人事総務業務を新たに任されました。
2021年半ばに経理マネージャーが入社し、マネージャー業務を上司へ引き継ぐことに期待しましたが、業務量は増加の一途をたどりました。
さらに、経費精算システムの導入が決まり、その導入作業やマニュアル作成、システム運用後の調整設定や社員向けデモの準備と問合せ対応など、決算の時期とも重なり、残業が増加しました。
上司からの週末の労働を強要するメールやチャットが増え、「つながらない権利」の話と合わせて会社に相談したものの、適切な対応は得られませんでした。
なお、上司から受けた叱責やメールなどについては、思い出す作業だけでも辛いため省略させていただきます。
最後に私から強くお伝えしたいことがあります。
この事件が世の中に周知されることにより、きっと、どこかにいる誰かの命を救うことができるような気がしています。
窓のない独房で常に監視され、追い込まれているような状況に陥ったら、わずかな睡眠時間ですら眠れなくなったら、上司は無視して、残りの力を振り絞って病院や労働の専門家の元に駆け込んでください。
必ず、何が何でも、逃げきってください。
スターキージャパンではテレワークの際に、▼常に指示を受けることなく、▼仕事の方法や時期を自分で決める場合に限って、労働時間を一定とみなすことができる、「みなし労働時間制」を導入していました。
しかし、実際には上司からメールやチャットで、頻繁に指示があったということで、労働基準監督署は、会社に是正勧告を出しました。
みなし労働時間制
テレワークや外回りの営業などで労働時間の計算が難しい場合に、実際に働いた時間にかかわらず、一定の時間を労働時間とみなすもの。
厚生労働省のガイドラインは、テレワークに適用する場合、
▼常に指示を受けられる状態になっていないこと
▼仕事の方法や時期を具体的に決められていないことを条件としている。
笠置裕亮弁護士
テレワークは働き方の裁量を認める仕組みのはずだが、悪用されると過密な労働につながる。国はきちんと監督してほしい。
今回の問題については、こちらの記事でもお伝えしています。