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相模原 国産生成AIが初めて作った答弁を市議会で

  • 2024年03月15日

全国で初めて、国産生成AIを導入した相模原市。市議会の答弁案を、生成AIを使って作りました。
活用が始まったばかりの国産生成AI。どこまでのことができたのでしょうか。

“生成AIが作った”答弁

相模原市議会(3月15日)

相模原市は大手電機メーカーNECが独自に開発した生成AIを、去年全国の自治体で初めて導入し、自治体業務に活用する実証実験を進めています。

3月15日の市議会の一般質問で、自民党の須田毅議員が業務効率化にとどまらない、 さらなる生成AIの活用法について考えはないか質問しました。

これに対し、本村賢太郎市長は「生成AIに関する答弁は、国産生成AIにより原案を作成し、私の視点で修正したものです」と前置きした上で答弁しました。
その中で、「生成AIはアイデア出しなどの事務において効果的である」としたうえで、「さらなる活用を進めるにはまずは、生成AIの機能や効果を職員に周知し、利用を促すとともに、利用実績を積み上げることで、 有用性を実感することが重要であると考えている」などと述べました。

答弁案のできばえは?

相模原市は国産生成AIを導入開発するNECとともに、過去3年分の議会答弁や、行政用語などを学習させてきました。
本格的に業務に使用したのは、今回が初めてです。

右:本村市長

 3月12日、本村市長と職員が議会答弁の作成を試みました。
質問内容は「市における国産生成AIの利活用について」。
まず、市長が答弁に盛り込みたい点として、
▼既存の概念にとらわれない、新しい発想を生み出していくことと、
▼職員が使いやすいよう、周知していくことの2点を職員に伝えました。

入力するとすぐに答弁案が示され、盛り込んでほしい2点がしっかり反映されました。

生成AI:最初の答弁案
初めに、国産生成AIの議事録への実用化についてでございますが、AIによる議事録作成は、業務の効率化に加え、新たな発想や知識を取得できるなどのメリットがあり、シビックプライドを高める上で効果的なツールであると認識しております。このため、市では、国産生成AIをさらなる活用を検討してまいります。
具体的には、まず、市の公式ホームページやSNSで議事録の概要を紹介することなど、国産生成AIの認知度を高めるための取組を始めます。さらに、職員へ効果的な利用方法などを周知し、庁内における活用を促進してまいります。
また、将来的には、生成AIを議事録にとどめず、政策立案や業務の改善などにも活用できるよう、範囲を広げていくことも視野に入れております。
以上でございます。

文章長く 言い回しが硬い

「認知度を高める」「周知する」など、内容の繰り返しがあって文章が長い上、「活用を促進して参ります」「視野に入れております」といった硬い言い回しが目立ちます。
生成AIの答弁を原案に職員が修正を重ねて分量を減らし、耳で聞いてわかりやすいよう、易しいことばに書き換えることにしました。
できあがったのがこちらの答弁案です。大幅に変更されています。

修正した答弁案
生成AIは、文案の作成や要約、アイデア出しなどの事務において効果的であることから、こうした効果を活かし、さらなる活用を進めるためには、まずは、生成AIの機能や効果を職員に周知し、利用を促すとともに、利用実績を積み上げることで、その有用性を実感することが重要であると考えております。
今後、生成AIのさらなる活用に向けて、効果的な周知や利用方法の提案など、さまざまな取り組みを進め、業務の効率化、スピード化に努めてまいります。

質問議員「満足いくもの」

そして迎えた市議会の日。“AIが初めて作った答弁”が読み上げられました。
市によりますと、あわせて4つの質問に対して生成AIが原案を出したということです。
質問した自民党の須田毅議員は、「人が一から作った答弁と遜色なく、満足のいくものだった」と話していました。

学習重ね活用進めたい

今回は初めてだったため、答弁案を作るのに従来の方法と同じくらいの時間がかかりましたが、AIの学習を進めて時間短縮につなげたいとしています。
そして、生成AIを施策のアイデア出しや、議事録の作成・要約などに活用していきたいとしています。

本村市長

生成AIは順調に学習してくれているが、まだ分量や温かみのあることばづかいなどに課題が残っている。もっとたくさん学ぶことで、行政用語に強い生成AIに発展してくれるのではないか。私たちもAIに負けないように、頭をしっかり使っていかないといけないと思う。
議会答弁の調整が夜までかかることがあるので、職員の働き方改革の点でも実績を作り、全国の自治体で使ってもらえるよう頑張っていきたい。

市はことし6月をめどに、生成AI活用の成果や課題をまとめて公表するとしています。

  • 高橋哉至

    横浜放送局 厚木支局記者

    高橋哉至

    平成30年(中途採用で)入局。 初任地は宇都宮。厚木支局で地域の課題やスポーツ関連の話題を取材。

  • 古市悠

    横浜放送局 記者

    古市悠

    2010年入局。大阪局、科学・文化部などを経て 横浜局。

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