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横浜市の中学生がいじめで自殺 第三者委員会の調査結果【詳報】

  • 2024年3月8日

2020年3月、横浜市の中学校に通っていた女子生徒が自殺したことについて、市の第三者委員会は、クラスメートから女子生徒に対するいじめがあったことを認定した上で、いじめと自殺に因果関係があったことを認める報告書をまとめました。報告書の内容と、第三者委員会の会見、遺族側弁護士の会見を詳しく伝えます。

※自殺した年を訂正しました。

悩みを抱えている人たちの相談窓口です。
▽文部科学省「24時間子供SOSダイヤル」
0120-0-78310。休日を含む24時間・通話無料。
▽横浜市「学校生活あんしんダイヤル」
045-624-9081。火曜~金曜・午前9時~午後5時。
このほかの自治体の問い合わせ先も、文部科学省のホームページで確認することができます。

いじめと自殺に因果関係

左:第三者委員会の栗山委員長

調査を行った第三者委員会は、3月8日午後、横浜市役所で記者会見を開きました。
報告書の中では、中学2年生の時に、複数の男子生徒によるからかいと、SNSのやりとりについていじめと認定しています。
その上で、「いじめやいじめによる孤立感が強く影響して自殺したといえる」として、因果関係があったと指摘しています。
また、女子生徒から相談を受けていた学校側の対応について、学校の「いじめ防止対策委員会」で生徒についての情報は共有されていたものの、いじめとして認知されなかったことや、生徒が自殺した事実を伏せたまま聴き取りを行ったことなどに問題があったと指摘しています。

一方、市の教育委員会をめぐっては、学校側が行った基本的な調査の報告書の案には、当初、「いじめ」という文言が入っていたにも関わらず、教育委員会がそれらをすべて削除するよう指示していたことから、そうした対応の経緯について「誤っているというほかない」と厳しく指摘しています。

命守れず 痛恨の極み

右:鯉渕教育長

横浜市教育委員会の鯉渕信也 教育長は、「かけがえのない生徒の命を守れず痛恨の極みです。生徒とご遺族の皆様に心からのお悔やみを申し上げるととともに、おわび申し上げます。誠に申し訳ありませんでした」 と謝罪しました。

認定されたいじめの内容は

以下、第三者委員会の報告書の内容を詳しく伝えます。
まず認定されたいじめの内容です。中学2年生の時に受けた具体的な2つの行為がいじめにあたるとしています。

▼複数人からのからかい
1つ目は、女子生徒に対して、複数の生徒によるからかいが2019年6月以降、継続していたとしています。
ニックネームについてからかったり、行動を実況したりといった行為が繰り返されたということです。

▼SNSめぐるやりとり
2つ目は、別の生徒によるSNSでのやりとりができないようにした行為だとしています。

生徒は夏休み明け以降、体調不良を何度も訴えて、欠席するようになりました。
保護者に対し、「クラスのみんなが嫌っているように感じる」などと伝え、保護者が10月に学校に相談したということです。
そして翌2020年2月には、ノートの表紙に「遺書」と書いて、いじめがつらかったことなどを記していて、3月の修了式の翌日に自殺したということです。

報告書では「不登校になった要因は、生徒に関する継続的ないじめやいじめによる孤立感だったことは明らかだ。いじめやいじめによる孤立感が強く影響して自殺したと言える。いじめと自殺の因果関係を認めるべきだ」としています。

学校側の対応は

第三者委員会は報告書のなかで、学校側の対応について「事実を確認する方法や内容は極めて不十分である。自殺したあとも事実関係を可能な限り明らかにしようとする姿勢を欠いていたと評価せざるをえない」と厳しく指摘しています。以下まとめてお伝えします。

いじめ発覚までの対応

▼生徒からの聞き取り方法について
担任は自殺した生徒からいじめの相談を受けた翌日、複数の男子生徒を一度に集めて話を聞いていたということです。
第三者委員会はこうした方法について問題だと指摘して、「友人の面前で真実や本音を話しにくく、誰が主導的な役割を担ったかどうかなどの点は、友人関係を意識して話すのをためらうことも十分に考えられる。個別に呼び出して聴取する方法をとるべきだった」としています。
また、いつどこで、何をしたのかという具体的な事実を十分に聴き取れなかった点も、問題だと指摘しています。
いじめに複数の人が関わっている場合、具体的に誰がどのような関わり方をしたのかについて、力関係などを意識しながら聴取すべきであり、複数の男子生徒を1つのまとまりとして捉えていて、誰がどのような言動をしたのかについて意識した聴き取りができていないとしています。

▼教職員間の情報共有が不十分
担任が行った事実確認の具体的な内容が、学年の職員の間で共有はされたものの、その問題性は指摘されないまま事実確認を終えることになっていて、こうした対応について「事実を確認する方法や内容は極めて不十分である」と指摘しています。

いじめの認知せず

生徒のいじめについての情報は学校の「いじめ防止対策委員会」で共有されましたが、いじめとして認知されませんでした。これについて報告書では「認知されていれば組織的な対応につながることから、クラス内での苦しみについてより寄り添った対応をすることが期待できた」と指摘しています。

▼いじめに関わった生徒への指導
事実関係が十分に明らかにされないまま、名前を挙げた生徒に対して一律に指導が行われていたということです。
第三者委員会は、「事実の確認と指導が一体となっていて問題だ。正しく事実関係を把握することが、事実に見合った適切な指導をするための前提だ。いじめを行った側の心情についても聴き取って指導することが望ましい」としています。

▼不登校後の経過観察
担任は2019年10月に保護者と面談し、「嫌われているように感じる」「こそこそ話が聞こえる」といった悩みを聞いて、いじめが継続している可能性を把握していたとしています。
しかし、自殺した生徒から事実や気持ちを確認してなかった ということです。
第三者委員会は「十分な聴き取りを行っていじめの継続の有無など事実関係を調査するべきであった。不登校になったあとであっても生徒から直接悩みを聞き取ることは必要であり、いじめの継続が原因で登校しにくくなっているのかどうかを明らかにし、仮にそうであるならば直ちに状況の改善に努め、再び登校できる環境を整える必要があったがそのような確認はされなかった」と指摘しています。

自殺後の対応は

▼初動の基本調査が不十分
学校側が行った基本調査については、自殺の事実を伝えて聴取をするかを遺族に打診しなかったことや、ほかの生徒への聴き取りの目的や対象範囲について、いずれも問題だと指摘しています。

▼自殺と伝えずに聴取
学校は自殺からまもない時期に、生徒が自殺したことを、ほかの生徒たちには伝えないと決めていたということです。
その後教育委員会から派遣されたアドバイザーから「自殺であることを伝えて聴き取りを行う必要がある」と助言されたものの、学校は方法を再検討したり、遺族の意向を再度確認したりする手続きをとらなかったということです。
第三者委員会は「自殺した生徒に関する事実関係をほかの生徒から聴取する場合、調査の目的や対象、方法などを遺族に対して説明するとともに、自殺の事実を伝えて聴取をするかを遺族の意向を踏まえて検討する必要がある。自殺の事実を伝えない中での聴き取りには制約が伴い、背景事実に関する情報を十分に収集できない可能性があることを事前に説明することは遺族に選択の機会を与えるためにも必要だ」としています。

▼事実明らかにする姿勢を欠く
ほかの生徒への聴き取りについても問題点があったとし、具体的には、早く情報を収集するという目的に沿って行うべきだったにも関わらず、こころのケアが目的となっていたことや、本来は対象を広く検討すべきだった聴き取りの対象についても、5人のみに限定していたことを挙げています。
また広く情報を集めることができるアンケート調査を行ったものの、通常の教育相談のものであり、自殺した生徒に関わる項目は含まれていなかったとしています。
こうした対応について「そもそも事実関係を可能な限り明らかにしようとする姿勢を欠いていたと評価せざるをえない」と厳しく指摘しています。

教育委員会の対応は

調査報告書では、横浜市教育委員会の対応についても、「誤っているというほかない」と厳しく指摘しています。

▼いじめの文言を削除
学校側が行った基本的な調査の報告書の案には、当初、「いじめ」という文言が入っていました。
しかし、市の教育委員会は、学校の「いじめ防止対策委員会」でいじめの認知がなされていなかったことを理由に、学校側に「いじめ」の表記をすべて削除するよう指示していました。

こうした対応の背景には、市の教育委員会が、基本的な調査の目的が事実の情報収集であることを認識していたはずだったにもかかわらず、はき違えて目的の設定をしていたことがあったといいます。
具体的には、基本的な調査の報告書の目的を「学校が生徒をしっかり見守っていたことが遺族に伝わる」ということに設定したということです。

▼調査の目的逸脱 対応誤っている
結果として、遺族に学校がいじめの事実に向き合っていないという印象を与え、不信を抱いたとしても不思議ではないとして、報告書では、市の教育委員会に対し、「調査の目的を逸脱し、誤っているというほかない」と厳しく指摘しています

遺族代理人会見 

第三者委員会の会見に続き、遺族の代理人を務める
石田達也弁護士が会見しました。
石田弁護士は冒頭、死亡した生徒が書き残した遺書のノートを掲げ、女子生徒の遺書を読み上げました。

石田弁護士

女子生徒の遺書
『迷惑をかけてしまった皆さん、本当にごめんなさい。なぜ死んだかというと、いじめが辛かったからです。世の中の人たちにはいじめと判断してもらえないようなことだと思います。それでも私には辛かった』

続いて、遺族のコメントを読み上げました。

遺族のコメント(抜粋、全文は文末に掲載)
娘は絵を描くことが大好きで、アートに興味を持っていました。娘はいつも寝る前になると、ドアをノックして顔をのぞかせ、“おやすみ”と声をかけてくれました。そのときの優しい表情・声、いまでも忘れることはできません。誰に対しても優しく、本当に優しすぎるくらい心の優しい娘でした。
娘が亡くなってすぐ学校の報告書をうけとりましたが、「いじめ」というの文字が一つも無く、学校で何があったのか私たちには分かりませんでした。闇から闇に葬られるのではないか、そんな強い不信感を抱きました。
しかし今回第三者委員会の報告書の中で娘が訴えていたいじめが認められ、自死との因果関係も認められました。学校で何がおきていたのかなにに苦痛を感じていたのか、いじめの問題から目をそらすこと無くできるかぎりの調査がつくされたものと受け止め、評価をしています。
暴力を伴わないいじめでも子どもを深く傷つけ追い詰めるという認識が、1人でも多くの先生に広がることを願っています。

その上で、石田弁護士は、「家族や本人から学校へのSOSは繰り返し発されていたのに、いじめの認知すらしてもらえなかった。また、指導のあり方についても孤立している子にさらに孤立する不登校という選択肢を提示するなど、子どもの苦痛を本当の意味で解消しようとする視点が欠けていた」と述べました。
そして、「今回の調査結果は遺族も評価していて、今後に生かせる再発防止策が得られたと考える。場当たり的な対応でなく教訓としてずっと残して風化させないで欲しい」と訴えていました。 

専門家「学校全体で対応を」

いじめ問題に詳しい上越教育大学、いじめ・生徒指導研究センターの高橋知己センター長に聞きました。

女子生徒が友人関係がうまくいかずに不登校になったと単純に受け止めて、いじめではないと判断してしまったと感じられる。
中学校は教科担任制なので、1人の生徒に関わる先生が多く、多角的に生徒にアプローチすることができたはずなのに、報告書には担任と養護教諭以外の先生がどんなアプローチをしたのか全く書かれていなかった。
生徒をケアすべき人たちが、十分に機能していなかったことが伺える。学校全体として対応できなかったことが一番の問題だと思う。

遺族コメント(全文)

「迷惑をかけてしまった皆さん本当にごめんさい。なぜ死んだかというといじめが辛かったからです。世の中の人たちにはいじめと判断してもらえないようなものだと思います。それでも私には辛かった」。娘はこう書き残して短い人生を終えてしまいました。いじめ自殺という言葉はニュースを通じて以前から耳にしたことはありました。しかし、まさか我が子に起きるとは夢にも思いませんでした。娘は絵を描くことが大好きでアートに興味を持っていました。人気アニメの大ファンでグッズを揃えるのを楽しみにしていました。

中学1年生の頃は特に気になる様子もなく、楽しそうに学校に通っていました。様子が変わってきたのは中学2年5月、連休明けの頃だったと思います。娘は学校から帰ってくると「みんなが自分のことを嫌っている。仲間はずれにされている」こう話すようになりました。表情にはいつもの元気はなく、悲しそうな表情を見せるようになりました。体調が悪くなり、病院でみてもらうと学校生活で何かストレスがあるのではないかということを言われました。夏休み前のころになるとはっきり「学校にいきたくない」というようになりました。クラスを変えてもらうか、転校しようか親子で話し合ったこともあります。そのころ娘はもう疲れ切っている。そんな様子でした。

夏休み中、娘は比較的元気に過ごしていました。が、2学期に入ると娘は「死んだ方がまし」「疲れた」という言葉を繰り返すようになりました。またしきりに「体調が悪い」と訴えるようになりました。10月に入って家族みんな心配になりました。なんとかならないかという気持ちで学校と連絡を取って、面談をすることになりました。意地悪されている、嫌なことされている、いじめられているみたい、娘が学校で悩んでいることを先生に率直にお話しをし、クラス替えや転校について相談しました。でも事態はよくなりませんでした。

娘のつらそうな様子を見かねて、無理に学校に行かせて、問題が起きるのはよくないので、学校から提案があったようにしばらく学校を休ませますと連絡をいれました。そのとき、仲間はずれとか変なこと言われたりとか、何か意地悪されているらしいのでということも付け加えました。それから学校に行くことができなくなりました。しかし、娘は元気を取り戻したようにみえることもありました。
11月には母親の実家に帰省し、とても楽しそうに過ごしていました。そのときの娘は笑顔でした。1週間ほど滞在して横浜に帰るとき、娘は寂しそうな様子でした。

そして2020年3月、「もうすぐ学校か」娘は暗い表情でまた話すようになりました。そんなある日の夕方、「出かけてくるね」という娘の声が聞こえてきました。どこいくのと訪ねると「コンビニに行く」といいました。「気をつけてね」と声をかけました。返事はありませんでした。それが娘との最後の会話、永遠の別れになってしまいました。娘はいつも寝る前になると、ドアをノックして顔をのぞかせ、おやすみと声をかけてくれました。そのときの優しい表情・声、いまでも忘れることはできません。本当に優しい娘でした。誰に対しても優しく、本当に優しすぎるくらい心の優しい娘でした。

娘が亡くなってすぐ、学校の報告書を受け取りました。しかし、「いじめ」という文字が一つもなく、学校で何があったのか、私たちはわかりませんでした。闇から闇に葬られるのではないかそんな強い不信感を抱きました。

そして今回第3者委員会の報告書の中で、娘が訴えていたいじめが認められ、自死との因果関係も認められました。学校で何が起きていたのか、何に苦痛を感じていたのか、いじめの問題から目をそらすことなく、できる限りの調査が尽くされたものと受け止め評価をしています。ニックネームでからかう、笑う、仲間はずれにする。そういった暴力を伴わないいじめでも、娘にとってはたえられないほどつらいものでした。

今回報告書で示された教訓を元に、暴力を伴わないいじめでも子どもを深く傷つけ追いつめてしまうことがある。そういう認識が一人でも多くの先生に広がることを願っています。学校は関係した生徒に注意し、指導することで、いじめは解消した解決したと考えていたのかもしれません。しかし、そのあとも娘は学校に行くことができませんでした。学校をひどく恐れ、ストレスを感じ続けているようでした。いじめは表面上解決したように見えても、被害者に苦痛を与えていて、その苦痛が本当の意味で解消されるまでいじめは続いている。そこに盲点があったのではないか。そう思わずにはいられません。

「世の中の人たちにはいじめと判断されないようなものだと思います」と、娘はこう書き残しました。悩みや葛藤、そして苦痛を自分で抱え込んでしまったのかもしれません。自分で解決しようと思っても子どもには限界があります。学校で孤立を深める中、悩みや葛藤を相談できる相手、信頼できる先生はいなかったのでしょうか。学校で早い段階でいじめとして認知し、娘のつらい気持ちを理解して、苦痛の解消に動いていてくれいたら、と思うと残念でなりません。

大津のいじめ事件をきっかけに法律ができ、この法律が子どもたちを守ってくれるものだと思っていました。現場ではいじめ以外でも様々な仕事に追われる教職員の皆様にとって大変な時代になったと思うこともあります。しかし、それでも学校でいじめから子どもたちを守ることができるのは先生しかいません。

今回の報告書を出発点として、次の世代にも引きつぐ。そして、子どもたちをはじめから守り抜くための教訓として、これを大切にしていただければと願っています。

最後になりましたが、長い時間をかけて熱心に、本当に熱心に調査に取り組んでくださった第三者委員会の皆さんに心から感謝を申し上げたいと思います。

  • 関口裕也

    横浜放送局 記者

    関口裕也

    2010年入局。福島局、横浜局、政治部を経て、2022年8月から再び横浜局。横浜市政や神奈川県政を取材。

  • 古市悠

    横浜放送局 記者

    古市悠

    2010年入局。大阪局、科学・文化部などを経て 横浜局。

  • 佐藤美月

    横浜放送局 記者

    佐藤美月

    2010年入局 川崎市を担当。「すべての子どもが生き生きと暮らせる社会」をテーマに取材を続ける

  • 瀧川修平

    横浜放送局 記者

    瀧川修平

    2023年入局。首都圏局から、3月に横浜局に異動となりました。

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