皆さんは移住を考えたことがありますか?
いま神奈川県の三浦市が注目されています。三浦半島の最南端。海の幸や新鮮な野菜、豊かな自然が魅力です。
特徴のマグロ漁を生かし、町を盛り上げようと取り組む女性を取材しました。
横浜局記者 古市悠
三浦半島の先端にある三浦市。
人口はおよそ4万人。
三方を海に囲まれ、マグロを始めとした海の幸に加えて、三浦大根など野菜の生産も盛んです。
ここ30年、人口減少が続いていますが、豊かな自然や食べ物に惹かれ、移住先として、人気が高まっています。
そんな三浦市ですが、移住を希望する人がいても、住む場所を見つけられないという課題が出てきています。
菊地未来さんは、三崎漁港がある三崎地区で生まれ育ちました。
地区を盛り上げたいと、移住希望者をサポートする会社を立ち上げました。
マグロで儲かった時代があるので、家をたくさん作って、人が多く住むっていうまちだったんですよ。昔の写真を見ると、人が多くて肩がぶつかっているくらいでした。
人口の減少を受け、三崎地区にも空き家が目立ちますが、老朽化が進んでいたり、家主の意向があったりして、賃貸や販売に回されることはほとんどありません。
移住を希望する人がいても、住むところがなかなか見つからないのが現状です。
大学で建築や都市計画を学んだ菊地さん。空き家を何とか活用したいと考えました。
菊地未来さん
移住希望者による住宅需要はすごく高まっているんですけど、空き家はたくさんあっても、すぐに住める物件が足りません。使われていないんだけど、残していくべきだろうなっていう建物がたくさんあります。もったいないって思える建物が多い地区なので、どうにかしたいと思いました。
空き家を再生させれば、移住希望者の住まいになる。
目を付けたのが、かつてマグロ漁師が使っていた建物でした。
解体されることを聞き、買い取って移住者向けの住宅に改装することにしたのです。
三崎地区は昭和30年代からマグロの遠洋漁業が盛んでした。
船員は1年の大半を船上で過ごします。
日本に帰っている間、船員は船頭の家に下宿していましたが、遠洋マグロ漁が衰退し、船員も減少しました。
使われなくなった建物が増えているのです。
菊地さんにシェアハウスの中を案内してもらいました。
共同の流し場もありますし。トイレもあります。
部屋の表札やドアはそのまま使っています。
船員が下宿していた2階の個室は、当時の雰囲気を残しています。
船頭一家が住んでいた1階は、共有スペースにしました。
玄関には、船員たちが持ち帰ったお土産を展示。
世界中を巡ったマグロ漁船に思いをはせられるようにしました。
2月末から家賃5万円前後で入居者の募集を始めました。
※家賃は部屋ごとに異なり、共益費が別途必要です。
菊地さんは三崎地区にはこうした住宅がまだ多く残っていると考えていて、今後もこうしたシェアハウスを増やしていきたいとしています。
菊地さん
放置して空き家っていう形になってしまっているのがすごく問題だと思っています。直せば使えるすごく素敵な建物って言うのもたくさんあるので、そういうものを生かしていきたいです。
住む場所だけでなく、移住者の仕事もサポートしたいと、菊地さんはレンタルキッチンを立ち上げました。
飲食店を経営したい人に貸し出し、食材の仕入れやお客さんの反応などを体験してもらいます。
取材した日には、横浜市の川原美里さんが店を出していました。
普段は保育園の栄養士をしています。
川原美里さん
ミネラルたっぷりの鶏肉だんごのみぞれ煮になります。三浦の大根おろしをたっぷり入れていて、おいしいです。だんごの中に入っているにんじんもひじきも三浦産です。
地元の新鮮な野菜に魅力を感じている川原さん。いずれ三崎に移住して食堂を出したいとも考えていますが、まずは月1回のペースで営業を続けるつもりです。
川原美里さん
三浦半島は自然と食材が豊富で、すぐに買い出しに行けて、すごく魅力的だなと思います。
これまでに、レンタルキッチンを利用した3組が、市内で飲食店を開業しました。菊地さんは手応えを感じています。
菊地未来さん
開放的な空があるし、食べ物はおいしい野菜も魚もある。いろんな要素はありますが、三浦に魅力を感じてきているんだなと思います。自分が楽しんでいて、周りも楽しんでくれて、それについてくる人がいれば来てくれるかなと思います。
三浦市も、移住希望者向けに、現地を案内しながら、不動産や生活情報を案内するツアーを開くなど、移住促進に力を入れています。
5年前までは市から転出する人が、転入する人を200から300人上回っていましたが、その後は転入が上回る年もあるということで、少しずつ成果が見え始めているということです。