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ウクライナから避難の医師が医師免許目指す 避難者の専門性どう生かすか

  • 2024年2月26日

ウクライナから日本に避難した、精神科医のナタリアさん。
避難者の心のケアに協力しています。
ロシアの侵攻から2年がたち、日本の医師国家試験に挑戦することを決意しました。
自分や家族を助けてくれた日本に、恩返しがしたい。
ナタリアさんの挑戦を追いました。

夫や両親と離れ 仕事も失う

ナタリアさん

ナタリアさん(49)は2年前、日本で結婚して暮らしている長女を頼り、次女と一緒にキーウから避難しました。
職業は精神科医で、15年以上にわたって病院や製薬会社でキャリアを重ねてきました。

写真提供:ナタリアさん

ウクライナには夫や両親が残っています。
侵攻で家族と離ればなれになり、仕事も失いました。
当初は戦争が終われば帰国するつもりでしたが、避難生活が長期化し、いまは日本に残ろうと考えています。

ナタリアさん
私の仕事は精神的問題がある人たちを助けることでした。自分にとってとても大事な仕事なんです。皆さんのためにできる、私の生きがいでした。何もしないでずっと待つことはできません。それを考えると、いまは日本に住みたいと思っています。

ウクライナ避難民の心を支える

ナタリアさんは日本の支援団体「パルヨン」が避難者に対して行っている、心理カウンセリングに協力しています。

避難者とオンラインで話す(許可を得て撮影)

ナタリアさんは、「ちゃんと眠れてますか。問題はありませんか?」などと、丁寧に聞き取っていました。
避難者とのミーティングは、毎日のように行っているといいます。

医療行為はできない

長引く避難生活に、多くの人たちがうつや不安、睡眠障害などを抱えています。
話を聞いていて、薬を使った治療が必要だと感じることもありますが、日本では医療行為を行うことができず、できることは限られるといいます。

私に助けを求める人の中には、カウンセリングだけではなく、薬の治療が必要な場合があります。私は日本の医師免許を持っていませんので、薬を出すことはできません。
そういう場合は、近くの病院に行くよう案内しています。

少しでも支えになりたい

医療行為はできなくても、少しでも専門性を生かしたい。
ナタリアさんは避難者どうしで支え合うプログラムにも、支援員として参加しています。

支援員仲間に、パニックの発作が起きたときの対処法や、いじめといった学校での問題にどう向きあうか、アドバイスしました。

日本公認心理士協会 松丸未来さん
支援員のみんなが「じゃあちょっとこれは、専門的なことだからナタリーに聞こう」って、頼りにしています。

医師国家試験に挑戦

ナタリアさんは奨学金を得て、週に5日日本語学校に通っています。
専門知識を直接生かしたいと、日本での医師免許取得を目指すことにしたのです。
日本語を本格的に学び始めて1年。
みなの前で、今の思いをスピーチしました。

ナタリアさんのスピーチ
私のスピーチのタイトルは、一番好きな日本語、『一期一会』。
私はこのことばに本当に魅了されました。
皆さんのできることを見つけてください。諦めないでください。それは大切なことです。
二度と戻らない毎日の出来事を楽しんでください。

精神科医として、避難者はもちろん、日本人についても心の支えになりたいと考えています。

日本の人たちの助けになりたい

医師免許を得るためには、日本語能力試験で最も難しいN1の試験に合格した上、医師国家試験に合格しなければなりません。
とても困難な挑戦です。
ナタリアさんに決意した理由を聞きました。

私はいま日本語を勉強しています。将来的に日本の医師免許を取りたいです。
私はすごく難しいことだと分かっています。もしかしたら、他の人は絶対無理と思っているかもしれない。でも私は諦めません。何でもやります。
医師として、日本の社会や日本の人たちを手助けしたいと思います。私も家族もたくさんお世話になっていますから、日本の皆さんへの心からの感謝の気持ちです。

避難者は専門性高い

お雑煮作りのイベント

日本にはおよそ2000人が避難していますが、高い学歴や専門性を持っている人が多いのが特徴です。
支援している日本財団によりますと、30代から40代の避難者のうち、7割が大学を卒業し、そのうちの半数以上が大学院を修了しています。
避難生活が長引き、定住を考える人が増える中、こうした専門性をどう生かしていくかが課題になっています。

キャリア生かす支援を

ナタリアさんのように、医師や弁護士といった専門性の高い職業の避難者は多くいますが、ことばや資格の問題があり、日本で同じように働けている人はほとんどいません。
支援団体の担当者は、現状を次のように話しています。

日本財団 神谷圭市リーダー
いま日本の方で提供できているのが、どうしても人手不足業界の仕事のオファーとか、そういった観点での将来的なキャリア形成につながりづらいものであるかなと思っています。
きちんとした日本語教育を受け、それぞれの希望に応じたそれぞれの活躍に結びつけられるような支援が不可欠かなと思っています。

取材を終えて

4月からは日本語教育や生活支援を盛り込んだ、国の新たな定住支援プログラムが始まります。
日本で積極的にキャリアプランを描けるような支援が、求められていると思います。

  • 古市悠

    横浜放送局 記者

    古市悠

    2010年入局。大阪局、科学・文化部などを経て 横浜局。医療や科学に関心を持って取材。

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