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独立系書店に新刊情報を提供 小田原の書店も歓迎

  • 2024年01月30日

中小規模で、店主が本のラインナップにこだわっているのが特徴の「独立系書店」。
いま増えているといいます。
こうした独立系書店に対し、新刊本などの情報を広く伝えていこうという動きが出てきています。
独立系書店の現状や魅力は?今後どうなるのか?取材しました。

町の書店がなくなる

書店の閉店が全国で相次いでいます。
出版社や書店、出版取り次ぎなどで作る「日本出版インフラセンター」 によりますと、新刊を取り扱う書店は、2012年度には16371店ありましたが、2022年度には11495店と、およそ3割減りました。

増える“独立系書店”

一方で中小規模で、店主が選び抜いた本を買い付けて書店を開業するケースも増えています。
こうした書店は、“独立系書店”と呼ばれ、業界に詳しいライターの和氣正幸さんによりますと、全国で少なくとも2021年は78店、おととしは55店、去年は105店が開業したということです。

小田原市 「南十字」

神奈川県小田原市にある書店「南十字」は、おととし10月、地元の高校の同級生3人で開業した「独立系書店」です。
共同運営者の成川勇也さんは、個人出版や小さな出版社の作品を多く取り扱っていることを店の特徴にあげます。扱う本の点数はおよそ1500点に上ります。

成川勇也さん

成川さんたちの書店は、仕入れの際には個々の出版社のサイトで新刊情報をチェックしたり、直接連絡したりしています。
出版社ごとにチェックしなければならず、時間がかかるといいます。

成川さん
出版社さんと直で取り引きすることが多いので、連絡件数が多いですね。開業から1年たって取引先の数がものすごい増えてきたので。

独立系書店に出版情報届かず

出版社から書店に本の情報が伝えられる仕組みの中に、多くの独立系書店は入っていません。
大手のチェーン店などには、出版社などで作る「日本出版インフラセンター」が運営する登録制のサイトや、出版物を取り次ぐ会社を通して、新刊の内容や出版時期が随時配信されてきました。
下の図の青い矢印です。
ほとんどの独立系書店はこうした情報を受けられず、個別に調べるしかありませんでした。 

年間6万点の新刊情報など提供へ

このサイトが1月30日からリニューアルされ、、独立系書店向けに、新刊などの情報を広く配信していくことになりました。上図の赤い矢印が追加されたイメージです。
希望する独立系書店が登録できるようになり、およそ2800社から出される、年間6万点の新刊のほか、これまでに出版された380万点の本や雑誌などの情報も、無料で一元的に入手できるようになりました。
※出版社などと再販売価格維持契約を結んでいることが、登録の条件※

本の売り上げ増に

日本出版インフラセンターは従来の書店の減少が続く中、増加傾向にある独立系書店と、登録制のサイトを通してつながることで、これまで正確に分かっていなかった独立系書店の状況を把握するとともに、新刊などの情報を広く伝えて、本の売り上げ増につなげていきたいとしています。

日本出版インフラセンター
書店マスタ管理委員会
古澤亘 委員長

書店が減少する中、専門性のある品ぞろえやカフェの併設など、多様な形態の独立系書店は本と触れ合う機会となる大事な存在で、今後ますます存在感を増してくると思います。
業界としてしっかり支援していくので、サイトに載っている本や販売促進の情報を使って、魅力的な書店作りに役立てていただき、読者の方に本を届けてほしいです。

魅力的な店づくりに

小田原市にある独立系書店の成川さんは、こうした情報を生かして、より魅力的な店作りを進めたいといいます。

成川さん
これまで情報収集に時間がかかっていたので、一元化されると楽になるし、フィルタリングがうまくできれば便利だと思います。
選択するにしても情報が多い方がいいので、サイトを見ることを日課にし、本を選んでみたいです。
こうしたサイトも活用しながら、個性のある魅力的な書店にしていきたいと思います。

取材を終えて

街を歩いていると新たにできた独立系書店を目にすることが増えました。
こうした取り組みが出版・書店文化にどのような風をもたらすのか、取材を続けていきます。

  • 北村基

    横浜放送局 小田原支局記者

    北村基

    2017年入局。宇都宮局を経て、2022年8月から横浜局小田原支局。南関東の空気に馴染むべく、目下、歴史を勉強中です。

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