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相模原市が日曜・祝日に預けやすい保育園を整備へ 子育て支援

  • 2023年06月06日

相模原市は2024年、日曜や祝日に仕事などやむをえない理由がなくても、子どもを預けられる保育施設を新たに整備する方針を固めました。
詳しい内容や、事業を提案した子育て中の職員の思いを取材しました。

市内の未就学児なら誰でも、理由問わず

日曜や休日に子どもを受け入れる保育施設は各地にあります。
相模原市が新たに整備する施設では、対象が市内の未就学児すべてと広く、預ける理由も問わないのが特徴です。
利用料金は1時間300円以内を想定しています。

  相模原市が新たに整備する保育施設  日・祝に子どもを預かる一般的な施設
対象 市内の未就学児なら誰でも 普段から在籍している子どものみ
理由 理由は問わず 保護者の仕事などやむを得ない場合のみ
料金 1時間300円以内 保育料に含む

橋本駅と相模大野駅周辺に

まず2024年4月に、橋本駅周辺の既存の保育施設で日曜、祝日の受け入れを始める方針です。
その後、相模大野駅周辺に新たな保育施設を整備するとしています。
新たに必要になる保育士の人件費については、市が運営法人に対して補助を出すとしています。

相模原市役所

市によりますと、自治体がこうした施設を整備するのは珍しいということで、子育て世帯の移住を促したいとしています。

子育て中の職員が提案

鈴木則文さん(手前)

この事業を提案したのは、相模原市保育課の鈴木則文さんです。

鈴木さん
相模原の認可保育施設の中には、日曜や祝日に預かってくれる施設がないんです。子育て世帯に選んでもらうために、休日保育が必要なのかなと思っています。

鈴木さんと子どもたち

鈴木さんは看護師として働く妻の尚子さんと一緒に、4歳の娘と1歳の息子を育てています。
新たな事業を提案したのは、子育ての経験からでした。

仕事を終えて帰宅した鈴木さん。家事と育児は夫婦で分担します。
食事中も子どもの世話に追われます。
尚子さんは週末に仕事が入ることもあり、夫婦でゆっくり会話する時間は、なかなか取れません。

鈴木さん夫妻

則文さん
土曜日は妻が仕事に行きますし、平日は私もなかなか帰って来られないので、妻と話す時間っていうのはほとんど取れないです。
尚子さん
平日はすごくばたばたしていて、土曜日は私が遅くまで働いているので、すれ違いみたいな感じです。

「日・祝に預けたい」という声も

日曜日や祝日に子どもを預ける場所が欲しいという声は、市民からも寄せられていました。

2023年、市は公式LINEアカウントに登録していて、子育てのお知らせを受信している人たちにアンケートを行いました。
(※3432人中644名が回答。回答率18.8%)

苦労していることについて複数回答で聞くと、最も多かったのは「教育や保育に関わる費用負担」で、67.2%でした。
一方で、
「自分の時間が持てない」と答えた人が60点2%、
「一時的な預け先の確保」と答えた人が46点8%に、
「保育所等の預け先の確保」を上げた人が48.8%に上りました。

鈴木さんの提案も受けて、市では日曜や祝日に、市内の子どもを広く受け入れる施設を整備することにしたのです。

保育士の確保に支援

保育所の人手不足が深刻になっている中、日曜・祝日に預かるためには、保育士を確保する必要があります。
市は新たに必要な保育士の人件費について、一部補助を出すとしています。
また、保育士の資格を持っていながら、現場で働いていない「潜在保育士」に向けたセミナーを開催したりして、必要な人材の確保に取り組むとしています。

遠山芳雄課長

保育課 遠山芳雄課長
相模原ってすごく子育てがしやすいんだなと、今住んでいる子育て世代の方にも思っていただきたいし、移住して子育てしたいなって思っていただければうれしいと思います。

「リフレッシュの時間に」

市内の公園で、子育て中の人たちに聞いてみました。

20代女性
すごくいいと思います。保育園とか一時保育とか、近所ではなかなか空きがないので。

30代女性
子育てしていると、1人でリフレッシュできる時間がなかなかないので、買い物とかしてリフレッシュしたいですね。病院の検診とかもすごく行きやすくなると思います。

子育て世帯に役立ててほしい

藤沢市に住んでいる鈴木さん。
自分たちの子どもを新たに整備する保育施設に預けることはできませんが、同じ思いをしている子育て世帯に、役立ててほしいといいます。

鈴木則文さん
休日になかなか自分たちの時間が取れないというご家庭ってやっぱり多いと思います。そういう中で、少しでも夫婦の時間が取れて、子どもの健やかな成長につながればいいかなと思っています。

「子育ての社会化を促す」

宮城教育大学 教育学部 佐藤哲也教授

▼保育者の確保、財政支出などが課題
子育て支援の選択肢が増えることについては、抵抗感を覚える保護者は少ないと思います。子どもを同伴することが難しい不足の事態に対応するセーフティーネットにもなることでしょう。
この施策を実現するためには、預ける施設、対応する専門家、投入される公的資金等々が不可欠です。それによって、子育てを社会全体で担う「子育ての社会化」を促進されていくことも期待できます。
一方で子ども目線に立ったとき、休日に両親から引き離され、不慣れな環境に独り投げ込まれることに、並々ならぬストレスを感じることも考えられます。
この事業を実行に移す場合、施設面、人的環境としての有能な保育者の確保、それを可能にする潤沢な財政支出、施策に理解と共感を示す一定数の市民の存在等々、民主的で人権感覚豊かな政治・行政・地域社会の在りようが大前提になると考えます。

▼子育てサービスの充実は待ったなしの状況
子育てをめぐる経済資本や感情資本の投入には限界があります。それを補うのが、子育てをサポートするインフラや社会的サービスです。また、そうしたサービスを利用することで、子どもを媒介に他者と交わり繋がるチャンスが広がる・・・。つまり保護者の孤立化を防ぎ、育児ストレスを軽減する効果が期待されます。
子育てをめぐるサービスの充実(豊かな選択肢の提供)は、いまや「待ったなし!」の状況であると考えます。

  • 高橋哉至

    横浜放送局 厚木支局記者

    高橋哉至

    平成30年(中途採用で)入局。 初任地は宇都宮。厚木支局で 地域の課題やスポーツ関連の話題を取材。

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