ページの本文へ

  1. 首都圏ナビ
  2. かながわ情報羅針盤
  3. ChatGPTが横須賀市役所に 何ができる?個人情報への懸念は

ChatGPTが横須賀市役所に 何ができる?個人情報への懸念は

  • 2023年04月20日

横須賀市が生成系AI「ChatGPT]を市の業務に試験的に活用することを始めました。
市によると全庁的に導入するのは全国の自治体で初めてだということです。
どんなことができるのか、個人情報や機密情報の扱いは?取材しました。

ChatGPTとは

「ChatGPT」はアメリカのベンチャー企業、「オープンAI」が開発したAI=人工知能で、利用者との対話から文章の作成や要約まで、幅広く活用できるいわゆる”生成系AI”の1つです。
実際に人が作ったように自然な応対や文章を作ることができると、2022年11月の公開以降、企業などで急速に利用が広まっています。

全国初 横須賀市が試験利用

神奈川県横須賀市は4月20日から、ChatGPTを市役所の業務に試験的に導入しました。
市によりますと、全面的に導入するのは全国の自治体で初めてだということです。
多くの自治体が導入している自治体専用のビジネスチャット、「LoGoチャット」上でChatGPTを利用できるようにしました。
およそ4000人の職員が1か月間、文章の作成や要約、アイディア出しなどに活用して使い勝手を検証します。
ひらがな1000文字あたり、利用料が0点002ドルかかるため、費用対効果も検証した上で、試験期間後も使用するかどうか決めるとしています。

期待される効果は?

▼文書作成の効率化

行政機関では職員は多くの文書作成を求められています。
横須賀市では昨年度、保管されている決裁文書だけで9万件を作成したということです。
これまでも議事録を自動で作るツールなどを導入していますが、ChatGPTを活用して効率化をいっそう進めたいとしています。

▼プレスリリースも素早く

ChatGPTが素案を作ったプレスリリース

今回の活用開始を発表した報道機関向けのプレスリリースの文章も、ChatGPTが素案を作りました。
職員が校正する時間も含めて、いちから人が作る場合の半分の時間で完成したということです。
議会答弁や記者会見用に、資料を分かりやすい文章に変換することも想定しているということです。

実際に使ってみると

試験導入初日の20日の様子を取材しました。

ChatGPTは市役所の職員のほかにも、消防署の署員など、市の職員全員が使えます。
説明会では利用方法や、注意点などが解説されました。

ゼロカーボン政策などを担当する都市戦略課もChatGPTの利用を始めました。
「マンションに電気自動車の充電設備の設置を増やすにはどうすればよいか」と入力すると、マンションの共用部分のスペースを利用することを案の1つとしてあげました。

さらに対話を続けるとマンションの共用部分を使うには住民の同意が必要と指摘し、自治体からマンションのオーナーに効率的に情報を伝えるための文章の案まで示しました。

都市戦略課小泉智宏主査
入力のこつをつかめばいろいろと活用できそうだ。
特に文章の作成では、私たち職員が作ると堅い表現になりがちだが、やわらかい文章を作ってくれるので、市民に政策を理解してもらうのに役立つと思う。

 政策立案にも活用を

少子高齢化や国際化などで市民のニーズは多様化するなかで、市では政策の立案にも役立てたいとしています。
試しに横須賀市のデジタル化のキャッチフレーズを5つ考えて欲しいと入力すると・・・。

○横須賀をリードするデジタル都市へ
○未来をつくる、横須賀デジタルプロジェクト
○横須賀の変革を、デジタルで実現
○誰もがつながる、横須賀デジタルコミュニティ
○早さと正確さの実現、横須賀デジタル化計画

即座に5つのキャッチフレーズを提案していました。
市ではChatGPTの活用案について、市の職員に募ることにしています。

個人情報漏洩の懸念は?

横須賀市はChatGPTに個人情報や機密情報を入力することを禁止しています。
またChatGPTの開発企業はことし3月、データの利用規約を改訂し、横須賀市のように別のシステムに連携して利用する場合、入力データはAIの学習には使わないとしています。
横須賀市が入力したデータも同様で、外部で使われることはないということです。

正確性に課題も

一方、情報の正確性には課題が残っています。
実際に使ってみた市の職員によりますと、日本語の文章の作成には優れていますが、文章の内容となる日本の情報はアメリカと比べて学習が進んでいないということです。
例えば横須賀市の人口を聞くと、2021年9月時点でおよそ42万5000人と回答しました。
実際の人口は2021年9月時点でおよそ38万5000人で、誤って回答していました。
誤った理由は分からないということです。
横須賀市は情報の正確性はまだ高くないとして、検索目的では極力使わないこととしています。

デジタル・ガバメント推進室・寒川孝之室長
市民のニーズが多様化する一方で、人口減少に伴い自治体職員の数は今後も減ることが予想され、デジタル技術による業務の効率化は欠かせない。
ChatGPTを活用するとこれまで10人でやっていた行政業務が8人でできるようになるという感覚だ。
情報の管理は徹底したうえで、デジタル化を推進していきたい。

  • 古市悠

    横浜放送局 記者

    古市悠

    平成22年入局 大阪局、科学文化部などをへて現所属 科学文化部から新型コロナをはじめ医療分野を継続取材。

ページトップに戻る