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厚木車内放置きょうだい死亡事件 裁判詳報③

審理終結 求刑は懲役8年
  • 2023年03月03日

2022年夏、厚木市で幼いきょうだいが車に放置されて死亡した事件から半年あまり。
きょうだいの母親の裁判が、横浜地裁小田原支部で開かれています。

裁判3日目の3月2日は、亡くなったきょうだいの祖父母で、罪に問われている母親の
実の父母が証人として法廷に呼ばれました。
祖母は当時、きょうだいとその母親と4人で日々の生活を共にしていました。
証言台に立った祖母は、娘がシングルマザーとして幼い2人を育てていた状況を振り返りながら、育児の負担が大きかった娘のサポートのあり方について後悔の思いも述べました。
続いて、検察や弁護士が最終的な意見を述べ、検察は懲役8年を求刑しました。

事件とは

長澤麗奈被告(22)は、2022年7月、厚木市内の交際相手の家を訪ねた際に、駐車場に止めた車の中に、長女の姫梛ちゃん(2)と弟の煌翔くん(1)を放置して死亡させたとして保護責任者遺棄致死の罪に問われています。
当時、最高気温が30度を超える真夏日でした。
車内は高温となり、亡くなった2人の死因は熱中症によるものでした。

きょうだいが放置された車

亡くなったきょうだいの祖父母が法廷で証言

3月2日の法廷には、罪に問われている母親の実の父母、亡くなったきょうだいからみた祖父母が証人として呼ばれました。
このうち祖母(54)は、きょうだい2人とその母親と生活を共にしながら、サポートを続けていました。

横浜地裁 小田原支部

祖母は、弁護士や検察官、それに裁判官からの質問に対してときおり声を詰まらせながら答えていました。法廷で述べた内容です。
●事件前の子育ての様子は

祖母

娘は、一生懸命に子どもを育てていました。子どもが泣くとすぐに駆け寄って「おっぱい?おむつ?」と声をかけていました。食事も「市販の食品はおいしくないから」と言って、手作りしていました。
娘は「予防接種への対応が遅い」と市の保健師から指摘されたこともありましたが、注意を受けたあとはすかさず予約を入れてカレンダーにも印を付けていました。

●祖母のサポートの状況は

祖母

弟がうまれたあと、娘は離婚をしましたが、げっそりと痩せてしまいました。
そのため、私や、娘の妹がサポートしていこうと思いました。私自身も仕事をしていましたが、仕事中も含めて毎日、娘とは電話でやり取りをしていました。多いときは1日に7~8回くらいしていました。娘にとって、相談相手はほぼ私しかいませんでした。

●事件後のいま 思うことは

祖母

事件が起きた日に娘が私に対しても「子どもたちと公園に来ていた」と“うそ”をついていたということを逮捕直後に知ったときは、「裏切られた」と感じました。
しかしのちに、うそをついた理由が“私に捨てられると思ったから”だと知り・・・娘を捨てるわけがないでしょうと。
事件後は、もっと娘に手を貸してあげられなかったのかと自分を責めていました。
私が昔、子育てをしていた時は、助けてくれる人がいました。しかし、娘にとっては私しかいなかったんです。
娘も、私も、もっと多くの人の手助けを周囲に求めるべきだったと思っています

検察の最終意見 懲役8年を求刑

検察官

母親は気温が30度以上になる中、幼い子どもを日光を遮るものがない場所に止めた車に2時間44分間も放置していて悪質だ。
水分補給などもできないまま、幼い命が2つも奪われた結果は重大だ。
母親は子どもを常習的に置き去りにしていた。警察から注意を受けるなどしたことから、置き去りにする危険性や重大性を少なくとも1度は認識していたが、真摯に受け止めず、保護者としての自覚を欠いている。今回の事件は起こるべくして起きた事件だ。
懲役8年を求刑する

弁護士の最終意見 懲役3年を求める

弁護士

母親は日常的な虐待などはしておらず、むしろ、子どもを愛情を持って育てていた。今回の行為は決してしてはいけないことだ。
一方で、母親ははじめから長時間の放置をしようと思っていたわけではなく、前日にけんかをしていた交際相手から引き留められて、もう少し一緒にいたいという自分の気持ちを優先してしまった。
2人の子どもを失い、今回の事件で最大の苦しみを味わっているのは母親自身だ。父母なども更正に協力すると言っており、懲役3年が相当だ

審理終結を前に 母親は

3日間にわたる審理が終結するにあたり、裁判長は、改めて母親に対して何か言いたいことがあるか問いました。
証言台に立った母親は涙を流しながら、次のとおり述べました。

今回このようなことをしてしまって、とっても反省しています。
姫梛ちゃんと煌翔が、これからいろいろなことを学んだり、経験したり出来たはずなのに。
母である私がすべて奪ってしまいました。後悔しています。
姫梛ちゃんと煌翔に、楽しいことをしてあげられなかったこと、小さい命を奪ってしまって本当にごめんなさい。
姫梛ちゃんと煌翔をうんで、育てた時間、最高に楽しかったよと伝えたい。
宝物だよ、大好きだよ、と伝えたいです。

判決は3月8日

予定されていた裁判の審理は3月2日で終わりました。
今後、市民から選ばれた6人の裁判員と、3人の裁判官が話し合いを重ねた上で、刑の重さなどを決めることになります。
判決の言い渡しは、3月8日です。

  • 北村 基

    横浜放送局 小田原支局 記者

    北村 基

    2017年入局。宇都宮局を経て、2022年8月から横浜局小田原支局。県西部の地域の話題を中心に取材に駆け回っています。

  • 田中 常隆

    横浜放送局 記者

    田中 常隆

    2011年入局。初任地は水戸放送局。 2016年から在籍した社会部では検察・裁判など司法分野を担当。 2022年から横浜放送局で警察、司法分野を中心に取材。

  • 小林 奈央

    横浜放送局 記者

    小林 奈央

    2022年入局 県警担当として事件・事故の現場取材に駆け回っています。

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