男子プロバスケットボールリーグのBリーグ。シーズン後半戦に入り、熾烈な戦いが続いています。現在2位の横浜ビー・コルセアーズは、昨シーズンの勝利数を既に超えるなど、昨季から大きく成績を伸ばし、躍進しています。(昨シーズンの成績は22勝35敗)河村勇輝選手の活躍が注目されがちですが、チーム全体で成長を重ねてきた横浜ビー・コルセアーズ。キャプテン・森井健太選手、須藤昂矢選手、キング開選手の3人に、躍進しているチームの状況や、手ごたえを聞きました。
中地区の順位は1位・川崎ブレイブサンダース、2位・横浜ビー・コルセアーズ。どちらも成績は25勝13敗と勝率では並んでいて、首位争いをしています。(3/1時点)
森井健太(もりい・けんた)
石川県出身の27歳(1995年生)。身長178センチ。ポジションは司令塔のポイントガード。今季からキャプテンとしてチームをまとめる。粘り強いディフェンスと味方を生かすアシストが持ち味。
――チームの雰囲気をどう感じていますか?
今シーズンの最初の10試合ぐらいは、なかなか勝ち星も増えず、チームとして試行錯誤した苦しい時期でもあったのですが、11月からここまでは、チームとしてやるべきことが明確になって、全員の力がそれぞれ生かされているチームになっていると思います。みんな一人一人が役割を分かったうえで頑張っているので、本当にいいまとまりができています。競り合った試合で勝つか負けるかは、チームのモチベーションにも、チームが強くなれるかという点でもすごく大切な部分です。前半戦の苦しい時期を糧にして、何か特別なことをやるというより、自分たちのやるべきことを変えずに取り組んで、接戦でも勝てるようになってきています。全員が“勝利”へのメンタルを少しずつですけど身につけてきているのかなと思います。
キャプテンとして苦しい時こそ自分が引っ張る
チームを引っ張っていかないとけない立場ですが、チームメイトが本当にアグレッシブにやってくれますし、コミュニケーションも外国籍選手も含めて全員が常に取ろうとしてくれているので、僕自身が何かやるというよりかは、みんながちょっと下を向いている苦しい時間帯に、声を出して引っ張っていかないといけないと思っています。やっぱりいいときは本当に誰でも声を出せるので、コミュニケーションが取れずに、連携が悪くなったりするときに自分が声を出して引っ張るというのは意識してやっています。
河村選手を生かすことも意識
僕がプレーするときは、チームが良いときでも、悪いときでも、ディフェンスの強度をまず上げること、あとはボールが止まっている時間帯もあるので、ボールを散らして、ボールのムーブを正すことを意識しています。河村選手と同時に出る時間帯は、彼の負担をどれだけ軽減できるかを意識しています。河村選手がずっとボールを運んで最後までいくとなると、疲れやストレスが溜まっていくと思うので、役割分担を明確に河村選手がしっかりパスがもらえるように、味方に指示を出したりしています。いい状態で彼にプレーしてもらうことは本当に大切なことです。河村選手と同時に出る起用も増えてきて、チームとして一つの武器になっているのではないかなと思っています。
チームは昨シーズンとは異なり、地区の首位争いをする躍進を見せています。しかし、森井キャプテンは順位を気にせずに、目の前の試合のひとつひとつに集中すると言います。
まだ試合はたくさん残っていて、いま首位争いの状況だったとしても最後までぜんぜん分からないと思います。ホームでチャンピオンシップを戦うことは、もちろんチームとしてすごく大切なので、順位も大切なのですが、先を見るよりかは、目の前の相手を倒すことが一番大切なことだと思います。チャンピオンシップを目標に、個人としてチームとしても何か特別なことではなく、これまで戦って積み上げてきたことを次にどれだけ多くつなげていくかかが、終盤戦の自分たちの武器を増やすことになると思っています。チームとして崩れることがないように、目の前の試合や、ひとつひとつの練習に全員がフォーカスできるように、まずは僕自身がチームメイトへの声掛けをして、コミュニケーションをとっていきたいなと思います。
須藤昂矢(すどう・こうや)
横浜市出身の25歳(1997年生)。身長186センチ。ポジションはシューティングガード。チームのオフコートキャプテンを務める。昨シーズンは57試合すべてに出場し49試合に先発出場。強いフィジカルとアウトサイドシュートが持ち味。
ヘッドコーチから任命されたという“オフコートキャプテン”の役割を聞きました。
バスケット以外の部分で、オフの期間にチームで集まってコミュニケーションをとる企画を立てて、そういうところで幹事的な役割をやったりします。例えば、シーズン開幕前の合宿の時に、夜にバーベキューをやろうって企画して、スタッフも選手も全員でコミュニケーションをとりました。そういったことが基本的な役割です。でも、オフコートキャプテンだから自分だけがするというよりは、一人一人がチームの雰囲気を良くしていこうと思っているので、全員でチーム作りの活動をしています。
――チームの雰囲気はいかがでしょうか?
チームの雰囲気はすごく良いです。外国籍選手とか、すごく明るいメンバーも多いので、チームの状況も良くなっている気がします。今の良い順位は、試合に出る一人一人が自分の役割を理解して、「自分が」というよりもチームが勝つためにそれぞれが役割を全うすることができているので、今の結果につながっているのだと思います。
――プレーで心掛けていることはどんなことですか?
意識するのはやっぱりディフェンスです。ギアをあげたディフェンスをして、しっかり自分たちのオフェンスにつなげていくことを一番意識してやっています。
後半戦の意気込みを聞きました。
僕自身横浜出身で、横浜のチームでプレーすることには誇りもありますし、横浜のブースターさんはすごく熱いので、そこを自分のホームとして戦えることはうれしいです。地元なので、バスケットボールを教えてくれた方や、関わってくれた方が、試合に見に来てくれて、応援してくださるのも、僕の後押しになっています。
プレーではやはり3ポイントシュートに自信をもっているので、そこに注目してほしいなと思います。チームとしてディフェンスからしっかりとオフェンスに繋げていくという部分と、全員がプレーに関わって、全員が攻めるということを意識しているので、そういうところも注目してほしいです
キング開(きんぐ・かい)
横浜市出身の23歳(2000年生)。身長185センチ。ポジションはポイントガード兼シューティングガード。横浜ビー・コルセアーズのユースチーム出身。専修大を経て、昨シーズン途中からプロ契約を結ぶ。鋭いドライブや高い身体能力が魅力。
キング開選手は2月5日に行われた千葉ジェッツ戦で負傷し、現在はリハビリに取り組んでいます。
――これまでの戦いの手ごたえはいかがですか?
序盤は、セカンドユニットとして出る時間帯が多かった中、なかなかリズムに乗れないこともありました。「自分でやらないと」という気持ちが強くて、周りが見えていなくて、少し空回りすることがあったので、周りを見ながら落ち着いてプレーするようにすることで、プレーの幅も広がって、シュートも自分のタイミングで打てることが増えました。(第3節の)名古屋戦からはリズムがつかめるようになってきて、自分の持ち味である、チームを勢いづけるようなディフェンスやルーズボールのところも、発揮できてきたと思っています。今シーズンは、昨シーズンよりも、もっと得点をすることを目標に掲げていて、勇輝(河村勇輝選手)1人に任せずに、周りも点を取れるというところも見せていかないといけないと思っています。
プレーでは、外も中もバランスよくどちらも攻められる選手になりたいと思っていて、ディフェンスにとって厄介な選手になりたいです。外だけだったら外のシュートさえ抑えれば大丈夫って思われますし、ドライブしかできない選手はちょっと距離をとって守ればいいやってなるので、どこからでも得点できると厄介なはずなので、オールラウンドな選手になりたいです。
――プロとして初めてフルで長いシーズンを戦っていくために、どんなことを意識していますか?
体のケアに関しては、トレーナーさんが、一人一人に合わせてすごくやってくれているもので、トレーナーさんに任せて相談しつつ、家でもストレッチとかは毎日やっていて、そこは続けていきたいと思っています。プロは遠征があっていろんな所に行くので、やはり体調管理は意識して気をつけてやっています。
――リフレッシュにはどんなことをしていますか?
歌を歌うのが好きなので、家でのシャワー中に歌ったりしています。
外に出かけて遊ぶっていうことは無く、家でゲームしたりとかですね。でも結局は、NBAやアメフトだったり、サッカーだったり、スポーツ系のゲームをやってしまいます。
地区の首位争い戦いをしている要因には、チャンピオンシップ出場という目標を持ち、選手の一人一人の意識が上がっていることがあるそうです。そして、キング選手もチームの重要なポイントとしてディフェンスを挙げました。
チャンピオンシップ出場という目標をチームで掲げ、それに向けて選手一人一人のマインドが去年とは全然違います。自分が、今シーズン一番いいなと思っている部分はアグレッシブなディフェンスです。そこを徹底的に練習してきて、その強度がトップチームのクラブにも通用していますし、トップチームにはアグレッシブなディフェンスをしていかないと勝てないと思っています。バスケットはオフェンスに目がいきがちですけど、基本はディフェンスから、流れをつかんでいきたいです。どんなに負けていようが、誰一人諦めずに、10点差や15点差が開いたゲームでも、後半に巻き返して勝ったゲームが何度もありますし、チーム全体が勝ちに向かって貪欲で諦めない、誰一人諦めてないというのは本当に大きいです。自分自身もこのチームでやっていて楽しいですし、チャンピオンシップに行けるというのは信じてやっています。
自分がステップアップしてチームに勢いを
今後、勇輝(河村勇輝選手)とかデビン(デビン・オリバー選手)に対して、相手もスカウティングしてきて、彼らに対するディフェンスがもっと厚くなっていくと思うので、そこで自分がステップアップして、得点をするなり、適切に周りを生かすプレーをするなりして、チームに良い勢いを与えていきたいですし、ルーズボールだったり、リバウンドだったりそういう泥臭いところのチームに勢いを与えるようなプレーを持ち味としてやっているので、そういうところにも注目してほしいなと思います。
躍進を見せる横浜ビー・コルセアーズ、現在首位の川崎ブレイブサンダース、これから両者の直接対決は3戦控えています。神奈川県の2チームが首位争いを繰り広げるBリーグから、これからも目が離せません。