ロシアのウクライナへの軍事侵攻から1年になるのを前に、神奈川県鎌倉市で、世界中の子どもたちが平和を願って描いた絵を集めた展示会が開かれました。戦禍にあるウクライナの子どもたちの絵からは、長引く戦闘が与える影響を見てとることができます。
鎌倉支局・中村早紀
鎌倉市の鎌倉生涯学習センターギャラリーで2月8日から20日まで開かれた絵画展。
日本に加え、ロシアやウクライナ、イランや韓国など、世界各国の子どもたちが描いた絵、およそ500点が展示され、会期中は1000人を超える人が訪れました。
なかでもひときわ目を引いたのは「PEACE RELAY」と名付けられたコーナーです。
2022年2月24日のロシアのウクライナへの軍事侵攻以降に、世界中の子どもたちが平和を願って描いた絵72点が並びます。
黄色に輝くヒマワリ畑で手をつなぐ2人の後ろ姿とは対照的に、青く冷たい戦火の中、ヒマワリの花が戦車に踏み倒される。
ウクライナ国旗の青と黄色を背景に、悲しそうな表情の女性に向けられるミサイル砲。
ウクライナの国花ヒマワリや、平和への祈りを描いた4枚の絵。
ウクライナの子どもたちが戦禍の中、描いた絵も少なくありません。
絵画展を企画した現代美術家の浅野修さんは、子どもたちの声に耳を傾けてほしいと訴えます。
子どもは苦しんでいる姿を絵で正直に伝えています。子どもの声を聞き、それを一番大事にとらえてもらいたいです。
浅野さんは「かながわビエンナーレ国際児童画展」の審査員を務めていたことを機に、世界各国の子どもたちの絵を収集し、保管しています。
ウクライナの子どもたちが軍事侵攻以前に描いた絵を展示するコーナー。
100点以上の作品はどれも色鮮やかで、町並みや生き物、人が生き生きと描かれています。
浅野さんは、そんな子どもたちの作品が軍事侵攻以降に大きく変わってしまったと話します。
ウクライナの女の子が3年前に描いた「MARKET」。
市場でお客さんを呼び込んでいるのか、両手を挙げた女性を中心に、色とりどりの野菜や果物が並びます。
同じ女の子が軍事侵攻後に描いた絵は「未来の人間」と名付けられ、手足を失った人がうつろな表情でこちらを見ています。
ウクライナの男の子が5年前に描いた「my lovely town」。
現代的な建物と歴史的な聖堂が混在するハルキウの町並みを描きました。
同じ男の子が軍事侵攻後に描いた絵では、苦しんだ表情や傷つき血を流す人々の姿が多く見られました。
戦争の悲惨さ、恐ろしさが絵の色や表情に表れていて、子どもたちがどれほど深く傷ついているのかがわかりました。
あの絵を描いた子どもたちは今元気でいてくれているのだろうかと考え、胸が締めつけられました。
ロシアのウクライナへの軍事侵攻から1年。浅野さんは子どもたちの絵を多くの人に見てもらうことで平和を願う機会にしたいと考えています。
今、こうしている間にもウクライナの子どもたちが殺されている現状があることは到底通用せずあってはならないこと。未来を作る今の子どもたちに平和の力をつけて、戦争のない丸い地球をつくりたい。
ウクライナの平和を願う子どもの絵画展は、今後全国各地での開催を計画中だということです。