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神奈川県警の武道始め式を担当記者が取材!

  • 2023年01月31日

「武道始め式」「屯所」・・・あまり聞いたことがない人もいるかもしれません。
いま、全国各地で強盗事件が相次いでいます。逃げる犯人を追いかける、刃物を持って暴れる人に立ち向かう・・・。住民の命を守る警察官の士気を高め、決意を新たにするために、新年に警察署で開かれるのが「武道始め式」です。警察担当記者が取材しました。

警察官の「武道」とは?

警察官の武道をご存じでしょうか。そして、それを披露するのはなぜでしょうか。
▼武道とは?

齋藤記者

武道というと、思い浮かぶのは柔道や剣道だと思います。警察官に採用されて入校するのが警察学校です。ここで、柔道か剣道を選択して、初心者でも段位の取得を目指して訓練します。

▼柔道や剣道以外にも?

齋藤記者

警察官は、警察署にある道場などで日々鍛錬をしていますが、それは柔道や剣道だけではありません。警察学校に入校したあとに警察官が学ぶのが、犯人を取り押さえるための「逮捕術」です。

▼逮捕術とは?

齋藤記者

犯人に与える打撃を最小限度にとどめながら、効果的に相手の動きを封じて制圧するための技術で、拳や警棒で相手の肩や胴を突いたり、相手の武器をたたき落としたりするものです。このほか、空手の練習に日々取り組んでいる警察官も少なくありません。

▼なぜ「武道」を披露するの?

齋藤記者

こうした日々の武道の訓練の成果を、新年に地域の人たちに披露し、警察官の士気を高めようというのが武道始め式です。地元の首長をはじめ、防犯協会や交通安全協会などの関係団体を招いて毎年開かれていましたが、新型コロナの感染拡大により中止が続き、多くの警察署でことしが3年ぶりの開催でした。

逮捕術の披露

「特別訓練員」にとって貴重な機会

栄署の武道始め式

新型コロナウイルスの影響で、武道始め式は中止されてきました。
ことし(2023年)1月、神奈川県内の多くの警察署で3年ぶりに実施されました。
1月27日、横浜市の栄警察署を取材しました。
例年は100人ほどを招待していますが、規模をおよそ5分の1に縮小して開催。
柔道と剣道の団体戦や、1人で5人を連続で相手にする5人掛けが披露されました。
 

5人すべてを一本で制した本田四段

柔道で5人掛けを披露し、一回り以上体格が大きな相手を背負い投げしていたのは、本田慎平巡査(24歳)です。
本田巡査は、2021年に採用され、栄署地域課に所属しています。
警察官であると同時に、柔道の特別訓練員として活動しています。

▼特別訓練員とは?

小林記者

柔道と剣道などの技量で選抜された警察官が、警察業務と訓練を兼務する制度です。柔道や剣道のほか、逮捕術、駅伝、拳銃の特別訓練員がいます。それぞれの体制を強化するために設けられていて、訓練員は将来的には警察官を指導する立場となります。

▼ふだんはどこで練習?

小林記者

警察署にある道場ではありません。ふだんは横浜市保土ケ谷区にある県警の武道館に出勤して練習をしているんです。

本田巡査はふだんは警察署ではなくて、武道館に出勤してほかの特別訓練員とともに柔道の練習をしています。
去年の武道始めは中止となったので今回が初めての参加でした。

本田慎平巡査
「技が決まるたびに大きな歓声が上がりびっくりしました。いつもは泥臭く勝ちにいくのですが、ふだん柔道を見ていない地域の方にも分かりやすいような勝ち方を目指しました。署員にけがをさせて、迷惑をかけないかと緊張もしましたが、署員や地域の人たちに見てもらえてうれしかったです」

栄署 有馬署長

有馬美奈子署長
「3年ぶりの武道始め式で、日頃の訓練を遺憾なく発揮した試合を地域の方にご覧いただき、治安を守るという年始の決意を示すことができたと思います」

剣道のトップレベルの選手も

日々、練習に励む神奈川県警の特別訓練員の中には、全国大会で活躍している選手も少なくありません。
加賀町警察署の高橋萌子巡査長(29歳)は、剣道の特別訓練員です。
全国選手権大会でも2度の優勝経験があり、世界剣道大会にも出場しています。
2022年12月に行われた、警察官の剣道の日本一を決める全国警察剣道選手権大会で優勝したばかりで、出場した68人の頂点に立ちました。

高橋巡査長

武道始め式では、男性署員3人を連続で相手にしました。
素早い身のこなしで相手の攻撃を封じます。
そして一瞬の隙を見逃さずに、面や胴を次々に決めて圧勝し、3戦3勝。
会場からは拍手が上がっていました。

左が高橋5段

高橋萌子巡査長
「1年の始まりを告げる武道始め式に参加し、気が引き締まりました。大会で優勝した後には地域の防犯協会の方などにも声をかけていただき、頑張ろうと思いました。ことしも神奈川県警の剣道のレベルアップに貢献していきます」

加賀町署 森田署長

森田仁志署長
「武道始め式で披露した強靱な体力と精神力を持って、皆様が安全で安心して暮らせる地域社会を実現するため、全力を尽くして、攻めの警察活動を展開していきます」

治安維持の150年のたすきをつなぐ

藤沢警察署も3年ぶりの開催となった警察署の1つです。
1月26日、津軽三味線の演奏で幕を開け、空手の型の披露や柔道や剣道の紅白戦などが行われました。
演奏を披露したのは、青森県出身の成田涼真巡査。
実は、津軽三味線の全国大会で2度の優勝経験があります。

成田巡査

また、この日、藤沢署が去年8月に開署から150年を迎えたことを祝う記念式典が行われました。

式典で挨拶する藤沢署 小林署長

小林仁志署長
「住民の安心・安全を実現するために犯罪と対峙する気概は、駅伝のたすきのように引き継がれてきました。現在の犯罪情勢に視線を向けると、特殊詐欺や自転車の盗難被害、ネット犯罪、男女間トラブルや児童虐待など、社会の変容を反映した犯罪に迅速かつ的確な対応が求められています」

前身は「屯所」

開署から150年の藤沢警察署。
明治にさかのぼるその成り立ちについて取材しました。
▼藤沢警察署の始まりはいつ?

齋藤記者

藤沢署の始まりは、現在でいう警察官の羅卒(らそつ)が詰める施設『屯所(とんしょ)』が開設された明治5年(1872年)8月16日。藤沢本町にある常光寺に設置されました。

▼何番目に古い?

齋藤記者

記録に残る中で、伊勢原署(明治3年)、横須賀署・保土ケ谷署(ともに明治4年)に次いで4番目に歴史があります。

▼屯所から警察署に変わったのはいつ?

齋藤記者

明治10年(1877年)です。全国一斉に『警察署』に名称が変更されました。このとき、今の『藤沢警察署』の名前が誕生。ちなみに、現在の大和署や茅ヶ崎署、海老名署などが管轄する地域は、もともとは藤沢警察署が受け持っていたということです。

屯所の歴史を住職に聞きました

武道始めが行われた道場の隣の部屋では、150年の歴史を知ってもらおうと、開署当時からの変遷の様子について展示が行われました。
警察署の前身の屯所があった常光寺の吉田勝好住職にお話を聞きました。

齋藤記者

なぜ警察署がお寺に設置されたんですか?

吉田住職

当時は何か困りごとがあると住民がお寺に来ていて、そこからそばに警察の組織ができたのではないかとも聞いています。お寺と警察、そして地域の人たちとの結びつきは強かったのではないでしょうか。お寺も去年、設立から450年を迎えたところで、一緒にお祝いできたようでよかったです。

当時の警察署を説明する常光寺の吉田住職
「屯所」の場所には南消防署本町出張所が建つ(右後ろに常光寺)

取材後記

全国各地で相次いでいる一連の強盗事件が連日大きく報じられています。
そうした強盗などの凶悪事件が相次いで発生するなど、不安をいだく住民も多い中で、治安を守る警察官への期待が高まっていると思います。
1年の始まりに、地域の人々に日々の訓練の成果を見てもらうことで、警察官一人ひとりの決意も高まったように感じました。
地域の人たちが警察に期待する安全で安心して暮らせる社会に向けて、今後も取り組んでほしいと思います。

  • 齋藤 怜

    横浜放送局記者

    齋藤 怜

    2016年入局
    初任地の水戸局では茨城県警キャップなどを担当し、2021年11月からは横浜局で県警担当として事件事故の取材にあたる。警察官だった祖父に、強さと優しさを備えるのが警察官だと教わっていました。 

  • 小林 奈央

    横浜放送局記者

    小林 奈央

    2022年入局
    県警担当として事件事故の現場取材に駆け回っています。初めて見る武道始め式の迫力に圧倒されました。犯罪に立ち向かう警察官の強さは、日々の訓練によるものだと感じました。 

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