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パイプオルガンの音色響く町 横浜

  • 2022年12月09日
パイプオルガン「ルーシー」

横浜市にある、横浜みなとみらいホールのパイプオルガン“ルーシー”。このほど、設置以来初めてのオーバーホールが行われました。横浜は日本で初めてパイプオルガンが設置された街と言われています。新たな歴史を刻んでいくパイプオルガンと、関わる人たちを取材しました。

横浜はパイプオルガンの街

1871年(明治4年)、横浜クライストチャーチ(横浜山手聖公会)に、大きなパイプオルガンが設置されました。
以来横浜では数多くのパイプオルガンが設置され、重厚な音色を響かせています。

みなとみらいの“光”に

横浜みなとみらいホールにあるパイプオルガンは、ルーシーと言います。
名前は光を意味するラテン語“lux”に由来するそうです。
その名の通り、輝くような明るい音色が特徴です。
高さはビルの4階にも相当する11.22m、パイプの数は4632本。
「C. B. フィスク社」が設計から建造までをアメリカで行い、一度分解して、船で横浜まで輸送。
延べ7年の歳月をかけ、1998年に完成しました。

ルーシー内部の様子

横浜みなとみらいホールが2021年から2022年に行った大改修工事を機に、設置以来初めてとなるオーバーホールが行われました。
多くのパイプを一度取り外し、解体してから点検・清掃・組み立てを行い、実際に音を出しながら細かく調整していきます。

調整作業

「あらゆる音楽を奏でられる」

“ルーシー”建造時のチームを率いていた、スティーヴン・ディークさんも来日。
調整が続く8月にお話を伺いました。

右:スティーヴン・ディーク氏

スティーヴン・ディーク氏
ルーシーはフィスク社が日本で初めて手掛けたパイプオルガンです。重要だったのは、あらゆる音楽に対応する事。バッハでも、フランス・シンフォニックでも、現代音楽でも、調和する音を奏でられること。そして日本人の体格でも演奏できること。さらに、ホールの顔として他にはない、横浜と日本を意識したデザインにしました。
(演奏台の上などにカモメがデザインされています)

演奏者「ルーシー起きて、輝いて」

ホールオルガニストとは演奏だけでなく、日常的に状態をチェックしたり、コンサートを企画立案したりと、様々な役割を担う、ホール専属のオルガニストです。
ルーシーには、これまで2人のホールオルガニストがいます。
20年余り務めてきた初代の三浦はつみさんと、ことし就任した近藤岳さんです。
おふたりにルーシーの魅力を伺いました。

左:近藤さん 右:三浦さん
三浦さん

工事中はここには全く入れなかったので、1年9カ月ぶりぐらいでしたね。久しぶりに弾くと演奏台自体はそんなに変わらないですが、ホールの響きは変わったのかなという感じはしました。ホール自体はLEDが導入されてすごく明るくなりましたね。

近藤さん

オーバーホール後のルーシーを、とにかくいっぱい弾き込んで鳴らすことにつとめています。いろんな使い方や鳴らし方をしてみて、つぶさに状態を把握することも必要ですし、温度や湿度との絡みもあります。とにかく「起きてルーシー、輝いて」っていう感じで鳴らしています。
いい鳴り方を彼女(ルーシー)に覚えてもらう大事な時期なんです。終わったあとは疲労感がありますが、充実感がある疲れです。毎日弾いてもまだまだ鳴らしてあげたい。

ルーシーの名付け親は初代の三浦さんです。
由来を聞きました。

三浦さん

音が明るいということもありますが、未来を照らす光になってほしいという思いも込めました。横浜は開港して最初に宣教師たちがたくさん来て、外国人居留地ができた街。横浜の人って新しい物に対して、すごくオープンな心を持っているじゃないですか。だからこのホールがオープンした時も、比較的珍しいアメリカ製のコンサートホールのオルガンが入って。新しいことをやるのに合っている街という感じがします。
ホールオルガニストは近藤さんにお任せしましたが、大好きなホールと大好きなルーシーですから、これからもずっと見守っていきたいです。

近藤さん

若い世代がコンサートホールに来て、オルガンを聴いて触れてほしいという願いがあります。刺激的なコンサートをたくさんしたいなとかよりも、ここでオルガンを学んだり触れた方が、10年後20年後にオルガニストになる。そんな人がたくさん出てくると嬉しいなと思っています。横浜は新しいものが好きで、それをそのまま受け入れて楽しめる。だから、皆さんにとっても自分たちにとっても、外向きで楽しいことができるといいなと思っています。

ルーシーの音色を聴きたい方は

11月25日には近藤さんのホールオルガニスト就任記念オルガン・リサイタルが開かれました。
パイプオルガンはホールの顔、宝物だということを実感する素敵なリサイタルでした。
この模様はNHKBSプレミアムの「クラシック倶楽部」で放送予定です。
(BSP「クラシック倶楽部」2023年2月27日 午前5:00~5:55)

12月21日には、クリスマス・パイプオルガン・コンサート2022が開かれます。
また、みなとみらいのクイーンズスクエア横浜にあるクリスマスツリーでは、12月25日まで、
1日6回 (16:00/17:00/18:00/19:00/20:00/21:00)、 約6分間のショータイムに“ルーシー”の演奏が流れるイベントが開催されています。

提供 クイーンズスクエア横浜イベント実行委員会

横浜に響くルーシーの音色、聴きに行ってみてはいかがでしょうか。

  • 満尾智子

    横浜放送局

    満尾智子

    平成11年入局。大阪放送局に配属。松山、大津、東京と音声技術者としていろいろな番組を担当。昨年11月から横浜放送局で勤務。横浜、神奈川のいろいろな事、物を体験中です。

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