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横浜市の山中竹春市長 市政発足から1年 これまで、そして今後は?

  • 2022年10月06日
山中竹春 横浜市長

菅政権の終わりの始まりだったとも言われる去年8月の横浜市長選挙。「コロナ禍」という有事の中、新型コロナに関するデータ分析で突如、脚光を浴び、候補者が乱立する選挙を勝ち抜いた山中竹春氏が、市長に就任して1年あまりがたった。
山中市長は、この1年、みずからが掲げた公約をどの程度実現できたと考えているのか。気になる与党との関係は?そして今後の展望は?

政治家経験ゼロの市長誕生から1年

去年8月に行われた横浜市長選挙の結果は、永田町に衝撃を与えた。過去最多の8人が立候補した選挙は、その顔ぶれも耳目を集めた。3期連続で横浜市長を務め、横浜市が目指してきた、カジノを含むIR=統合型リゾート施設の誘致を訴える林文子氏。IRを推進してきた自民党の閣僚でもありながら、突如、職を辞してIRに異議を唱え、立候補した小此木八郎氏。

そして、政治の世界に初めて足を踏み入れる元横浜市立大学教授の山中竹春氏。データサイエンティストの山中氏は、新型コロナウイルスに関する研究で注目され、立憲民主党が擁立し、のちに市民団体も支援に加わった。

そうそうたる顔ぶれの中、横浜市長選挙を勝ち抜いたのは、「政治家経験ゼロ」の山中氏だった。
あれから1年あまり。節目を迎えた山中市長に、いまの思いなどを聞いた。

この1年

ーまずは、この1年、どのように市政に取り組んできたのか。

山中竹春 横浜市長
「私としては、3つポイントを考えておりまして、1つは初回のワクチン接種の混乱、1回目、2回目ですかね、その時のワクチン接種の混乱からの立て直しを含むコロナ対策に注力してきたこと。2点目が、現場の声を大切にするっていう市政。この実現を目指して行動、実践してきました。3点目がですね、われわれ市役所っていうのは市民の幸せのために、日々取り組んでいるわけなんですけれども、その市民の幸せにつながる、つなげていくための市役所の取り組みの向上っていう事に着手する。この3点を挙げたいと思っています」

関口裕也記者

ことし8月に横浜局に異動してきて、市政の担当となったばかりの私が山中市長を間近で見たのは2か月ほど。ただ、その間、私が抱いた印象は「丁寧そして慎重」だ。

定例の記者会見でも、山中市長は資料を事前に準備し、数値やファクトを間違えないよう確認しながら受け答えをする。インタビューをしたこの日も、市長は、手元に資料を準備して、間違いがないよう資料のデータなども引用しながら答えていた。

記者会見の際に政策の説明をする際には、内容がより分かりやすく伝わるよう自身の両脇にスライドが映し出されるようにして、説明をする。記者から質問を受ける際は、答える前に「はい、ご質問ありがとうございます」と感謝の言葉も忘れない。この、こまやかな配慮も「丁寧」と感じるゆえんだ。

そんな山中市長だが、政治経験がゼロだったこともあり当初は、林文子 前市長に比べて、「資料を見ながら話す姿が目立つ」との声もあったそうだ。ただ、市役所の関係者によると、この1年間で、市長はかなり自分の言葉で発信するようになったという。

それを裏付けるような状況が8月30日に行われた会見であった。

この日は、横浜市内のアパートの部屋で、4歳の男の子に暴行を加えて死なせたとして母親の当時の交際相手が逮捕された事件について質問が出た。事件の前に虐待事案として市の児相が把握していたため市の対応に問題があったのでは、と見解をただすものだった。

これに対し会見に立ち会った市の職員は、「大変重く受け止めている」と答えたものの、市としての対応は問題なかったというスタンスだった。状況を見かねてか、市長が割って入り、

「課題があったことについては認めざるをえないと思います。結果として守れたかもしれない命が失われたことに関して市の責任を受け止めております」とはっきりと答えた。

「責任」の問題について職員の回答をその場で引き取り「問題があった」とはっきり答える姿に1年の重みを感じた。

新型コロナ対策は?

市長になる前は横浜市立大学医学部教授を務めた経験もあり、選挙中、山中市長は新型コロナウイルスの研究を行ってきたことを強くアピールしてきた。そんな市長が、就任後、新型コロナについてどのような施策を行ったのか聞いた。

山中竹春 横浜市長
「コロナ対策については、昨年8月30日に就任して、2週間後にコロナの対策加速化プランを発表しました。それ以降、ワクチン接種計画の見直しを行いまして、予約のしやすさ、それから接種のしやすさ、これら初回接種で市全体で混乱していたことでもありますので、その点に関して大幅に取り組みを行いました」

就任当初、混乱が生じていたワクチン接種の円滑化を実績として1番に挙げた。中でも力を入れたのは予約環境の整備だったという。

山中竹春 横浜市長
「ネット予約についても、就任した時にはかなりできない状況でした。例えば予約できるクリニック数なんかも、市長就任時には横浜全体で53クリニックだけだったんですよね。それを890と約17倍に増やしました。あとは、予約の空き情報が見られなかったり、SNSでの予約ができないといった問題がいろいろあったんですけど、そういったものをかなりてこ入れしました」

こうした取り組みもあって、ことし4月には、ワクチン接種率では100万人以上の都市の中でトップになったという。また、医療提供体制の充実という点でも一定の成果を出せたと話す。 

山中竹春 横浜市長
「病床数は、1年間で135%増にあたる250床近く増加していますので、かなり増やすことができました。それから、私、着任した時に『え?』と思ったのが、自宅療養者と高齢者施設での見守り支援体制というものがそもそもなかったんですね。高齢者施設も、どこかの医療機関と連携しているところはいいんですけれど、そうじゃない高齢者施設もかなり多くありました。なので、この見守り支援の体制というものを医師会と一緒にすぐに作りましたね」

一方で、新型コロナ対策に関して「できなかったこと」についても聞いてみた。すると、「救急搬送」を課題として挙げた。

山中竹春 横浜市長
「第7波で露呈したのが、やっぱり救急搬送の課題です。この救急搬送の課題をいかに減らしていくか。結局119番に電話をされる方の内容の分析等を進めて、必要なものと必ずしも119番でなくてもいいものっていうのがはっきり分けられる場合、119番でなくても済む場合っていうのは、そういう方向に誘導していかないといけません。」

現在はコロナの感染者数はやや落ち着きを見せ始めているが、救急搬送のひっ迫は依然として大きな課題となっている。次に来るかもしれない感染の波に備える意味でも、不要不急の救急搬送依頼をいかに減らすことができるか。課題の解消が山中市政に求められている。

与党との協力について

山中市長は、立憲民主党の推薦を受けて当選した。

これは、みずからが掲げた公約を達成するために、乗り越えなくてはならない壁があることを意味する。議会で多数を占める与党の協力が得られなければ議案を通すことができず、政策の実現は不可能だからだ。

実際、ことし1月にまとめられた今年度予算で、市長は、選挙戦で公約に掲げた
▽地下鉄やバスに乗る際の敬老パスの自己負担ゼロ
▽子どもの医療費ゼロ
▽出産費用ゼロ
の「3つのゼロ」の政策実現に必要な予算を盛り込むことができなかった。

しかしこの「3つのゼロ」のうち、子どもの医療費ゼロについては先日、ついに道筋をつけることができた。市が今後4年間で重点的に取り組む政策をまとめた「中期計画」の素案に、小児医療費無償化が盛り込まれたのだ。

目玉政策がようやく、ひとつ実現に向け前進した。

ただ、簡単にことが運んだわけではない。市議会の関係者などに取材したところ、中期計画案策定にあたり、市長は、自民党や公明党の議員らに事前に説明し、理解を求めてまわっていたそうだ。

どうしても、小児医療費無償化はやりたいんです

中期計画案を市議に説明する際、こう訴えたという。

出産医療費の無償化は、現在、国が補助の増額を検討していることもあり、その動向を見守っている状況だ。また、敬老パスの無償化も、バスの減便や廃便が進む中、現在の交通網自体を見直すなど大きな枠組みの中で議論することになってる。

こうした背景を踏まえ、まずは小児医療費の無償化を実現化したいとの思いが、市長の中にあったのだろう。インタビューでも、政策の必要性についてこう語っていた。

山中竹春 横浜市長
「小児医療費に関しては、就任前から市民の皆様方から多くのご意見頂いてました。例えば、『ほかの市町村では助成を受けられていたのに横浜に転入したとたん受けられなくなった』とか、『少し所得が増えたら助成対象から外れてしまった』とか、そういった声もいただいた。ですので、こういった市民のご意見を踏まえて、子育て世代への直接的な経済支援策である小児医療費助成について、来年度中に開始をしたいと思いまして、中期計画の素案に盛り込んだという次第です」

みずからが推し進めたい政策の実現のため、市議会との関係構築に腐心する山中市長だが、自公との関係について、どう思っているのか。

山中竹春 横浜市長
「これは就任当初から言っている話なんですけれども、“いい横浜市をつくっていく”というゴールは、市会議員の先生がたも私も同じなので、二元代表制のもと、市会議員の先生方と引き続き真摯に議論させていただく、ご相談させていただくっていうことに尽きるんじゃないかなと思っています。就任当初から、そういった姿勢は必要だと申し上げてきましたし、また1年間、そういう姿勢でやってきました。今後もですね、われわれ二元代表制のもとで運営するのが基本ですから、市役所として市政を立案して、それに関して市会といろいろ議論し、ご相談し、監視を受け、そういった関係で市政を進めていきたいなと思っています」

一番聞きたかった「自公」という言葉が出てこなかったので、質問を重ねた。

ー特に、自公に対して、どうアプローチするかということについて考えていないのか?

山中竹春 横浜市長
「自公もそうで、まあ、主要会派というか、全部の議員さんですよね。それは市会と私、あるいは、市会と市という関係で、それが二元代表制のベースだと思いますので、きちんと今までどおりいい関係で進めたいなというふうには思っています」

自民・公明両党に関わらず、市議会全体との関係性が重要であるという認識を繰り返し述べた。重要政策を推し進めていきたい市長にとって議会の多数派である自民・公明両党との関係構築は、今後もクリアしなければならない重要なポイントだろう。

気になる今後については?

インタビューの最後、私は思い切ってこんな質問をしてみた。
ーまだ在任1年ではあるが、2期目についてどう考えているか?

山中竹春 横浜市長
「いやいやいや。いま、任期の4分の1が終わったところなんで、まだ折り返し地点にも入っていませんから。この1年間で、私の方向性に関してはだいぶ打ち出せたと思いますので、今後はですね、さらに中期計画の確実な遂行・実施を含め進めていきたいと、山中市政を進めていきたいというふうに思っています」

取材後記

想定外の質問を投げかけられ、不愉快な反応が返ってくるかと思ったが、やはり、これにも丁寧で慎重な答え。あくまで、今の任期を全力でまっとうしていくと強調した。
確かに、就任1年のこのタイミングで2期目の話をするのは少し早計かもしれない。一方で、政策には継続性が重要なのは言うまでもない。当然、市長もみずからが取り組む政策を長期的に推し進めたいと考える局面が、今後あるだろう。政治家であれば誰もが、「今の任期のその次」について判断する時期が来る。その局面を迎えるまで、山中市長はいまある課題に取り組んでいくのだろう。
丁寧に、そして慎重に。

  • 関口裕也

    横浜放送局 記者

    関口裕也

    2010年入局。福島局、横浜局、政治部を経て、今年8月から2度目の横浜局勤務。横浜市政を中心に取材。

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