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新型コロナと物価高騰 子どもへの食料支援を

  • 2022年09月07日

「心の支えです、“食べるものがある”って」
取材した3人の子を持つ母親のことばです。長引くコロナ禍で収入が減ったり、仕事を失ったりして経済的に困窮する子育て世帯に、物価高や電気代の高騰が追い打ちをかけています。

満足に日々の食べ物を確保するのが難しい世帯が増加。食料支援を行う団体の中には、応募が7倍に増えたところもあり、食料の確保に奔走しています。
横浜放送局 記者 佐藤美月

1人で3人育てる母親 コロナで失職

高橋かなみさん(仮名)

神奈川県の高橋かなみさん(仮名・47)は、小学生から大学生までの3人の子どもを1人で育てています。

ホテルでパートの仕事をして家族を養ってきましたが、新型コロナの感染が拡大すると勤務時間が減り、2021年9月にほかのパートやアルバイトと共に解雇されました。

求職活動を続けていますが、病気で足が不自由なため、再就職先は決まっていません。

今はひと月11万円の失業給付を受けて生活していますが、その給付も、9月末には打ち切られることになっています。

物価高が追い打ちに

生活の苦しさに拍車をかけているのが、物価と電気代の高騰です。

お風呂は毎日入らない。電気をつける部屋は、一部屋だけ。洗濯機は3日に一回だけ。節電を徹底しても電気代だけで月8000円以上かかります。

スーパーでは肉や魚のほか、一部の高騰した野菜にも手が届かなくなりました。

高橋かなみさん
生活はもう全部我慢して我慢して。安いもやしやお豆腐、すごく安い麺類とか、なるたけそれで。先のことは本当に分からないです。『今生きてるのがすごいですよね』って思ってるぐらいなので。

食料支援が心の支えに

今、高橋さんを支えているのが食料の支援です。高橋さんは、ことし7月、初めて都内のNPOが行う食料支援に申し込みました。

また、区役所から、無料で食料を配付している近所のフードパントリーを紹介してもらい、月に数回通って米や缶詰、乾麺などを受け取っています。

支援は、食べ盛りの男の子3人の食を賄うだけでなく、高橋さん自身の精神的な支えにもなっているといいます。

高橋かなみさん
普段買わないお菓子が入っていて、「ママ、チョコが入ってる!」とか、「ジュースも入ってる!」とかって子どもたちがすごい喜んでいました。
支援がなかったら心が折れていると思います。心の支えですね、食べるものがあるって。

収入戻らず7割、食事の量減6割

長引くコロナ禍と物価の高騰は、経済的に困窮する家庭に大きなダメージを与えています。

高橋さんの支援を行う認定NPO法人「キッズドア」がことし6月と7月、全国の困窮世帯を対象に行ったアンケートでは、新型コロナで収入が減り、今も戻らないと答えた人がおよそ7割。物価高で食事の量が減ったと答えた人が6割に達しました。

支援要請7倍 食料確保に奔走

川崎市社会福祉協議会

食料を支援する側の状況も厳しくなっています。川崎市社会福祉協議会では、企業や市民から食料を集め、区役所などの相談機関を通して生活に困っている世帯に届けています。

これまで、毎月平均しておよそ100世帯分を届けていましたが、物価の上昇と給食がない夏休みが重なった7月には、対象の世帯が7倍を越える750世帯あまりに急増しました。

8月中は食料の寄付を受けてもすぐになくなってしまう状態が続いています。
 

川崎市社会福祉協議会 企画調整室 平林秀敏室長

平林秀敏さん
我々の想像以上にニーズがあって、毎日綱渡りの状況です。
これまでなんとか頑張ってきて支援も受けないで自分でやりますっていう家庭も、やっぱり支援が受けられるんだったら受けたいですっていう風に支援を求めてくる声がかなり多くなってきています。

必要な食料を確保するため、職員が企業を回って協力を求めています。

取材した8月22日は近隣の企業から、賞味期限が近づいた備蓄用のビスケット2600食分を受け取りました。

ビスケットを受け取った後も、企業にあらためて窮状を伝えます。

平林さん
本当に助かります。ただ食料のニーズがかなり増えていてどうしても間に合わない状況でもあるので、ご協力今後ともどうぞお願いできればと思います。

企業の担当者
私どもも社員の緊急時の備蓄がありますので、またご協力させて下さい。

苦肉の策で食料持ち寄る

苦肉の策で、職員からの募集も始めました。自宅にある食料品を集めて持ち寄っています。

中には、お米を小分けにして持ってくる職員もいました。物価の上昇が続けば、今後も支援の要請はさらに増えていくと考えています。

平林さん
まだまだ潜在的な、困ってる人でも声に出せないだとか、どこに相談していったらいいのか分からないような人もたくさんいると思うんですよね。住民の方達や企業の方達にももっと呼びかけまして、取り組みを進めていきたいと思ってます。

取材後記
いま、川崎市だけでなく、全国各地のNPOなどの支援団体でも、申し込みが増えて食料が足りなくなる事態が起きていて、国の支援を求める声も上がっています。

一方で、川崎市社会福祉協議会は、困ったときこそ助け合いの輪を広げようと、地域の人への呼びかけを強化しています。

物価の上昇が続く中、育ち盛りの子どもたちが、満足にご飯を食べられるために、私たちひとりひとりに何ができるのか。私はまず、自宅にある食料を寄付しようと思いました。

問い合わせ先・支援窓口
川崎市社会福祉協議会
寄付は、郵送または持ち込みで、常温保存できる未開封の食料品を募集。
問い合わせは 044-739-8718(月~金 8:30-17:00)

認定NPO法人キッズドア
困窮子育て家庭への物資・情報・就労支援「キッズドアファミリーサポート」
寄付を行いたい場合、支援を受けたい場合 ともに以下のアドレスまで
https://kidsdoor.net

  • 佐藤美月

    横浜放送局・記者

    佐藤美月

    2010年入局。甲府局、経理局を経て2021年7月から横浜放送局・川崎市政担当。児童福祉や教育など、子どものウェルビーイングをテーマに取材。

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