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“忍者”を育てる!小田原 観光地を盛り上げる取り組み

  • 2022年04月22日

神奈川県西部に広がる小田原市。お城に、かまぼこ、提灯(ちょうちん)などで知られていますが、いま忍者で街を盛り上げようという取り組みが行われています。その名も“風魔忍者”。剣や黒ずきんなどで忍者にふん装した役者たちが迫力ある殺陣(たて)を演じます。しかも、演じているのは一般から募集した人たちです。小田原に忍者を追いました。

小田原ゆかりの忍者集団 “復活”へ

戦国時代などに諜報や暗殺などいわゆる‘忍び’の活動をしたと言われる忍者。「伊賀」や「甲賀」という名前をよく聞きますが、小田原を拠点とした北条氏につかえていた忍者集団があったと言われています。その名も“風魔忍者”。北条氏が関東一円を支配するにあたり貢献したとも言われています。しかし、どんな存在だったのかなど多くは謎に包まれています。

風魔忍者が姿を消してから400年。いま、忍者は、小田原観光の呼び物のひとつになっています。小田原城の近くには風魔忍者などについて体験しながら学べる施設もあって、連日観光客が訪れています。

外国人にも人気のある忍者を、もっと観光に生かせないか。小田原市観光協会は、地元に根づいた忍者を“復活”させようという取り組みを進めています。
これまで行ってきた忍者ショーでは、東京都内などから殺陣のプロの役者などに出演を依頼してきました。観光協会では、忍者を演じる役者を自ら募集して育てることにしたのです。

小田原市観光協会 齊藤啓光さん
「“地元ですぐに忍者に会える”ということをコンセプトにして、地元から発信できる忍者を育てたいと思い、この取り組みを始めました。風魔忍者、そして小田原をさらに有名にできないかなと」

“忍者”を一から育てる

観光協会では、忍者を演じたい人を去年9月に募集。ベトナムやタイなど海外からも含めて89人が応募してきました。その中から、大人の“忍者”に選ばれたのは、神奈川県内を中心とした18人。 
その多くは、殺陣の経験がないうえ、演技そのものが初めてという人も少なくありません。デビュー公演となる「忍者ショー」の開催までは、およそ半年。専門家のもとで、剣の持ち方から本格的な殺陣の演技に至るまで、週に1度集まって練習を重ねてきました。

参加者の1人、この春、大学を卒業した川崎市の林あやさんは、高校生の時に読んだ本をきっかけに、地元・神奈川ゆかりの風魔忍者にずっと憧れてきたと言います。

林あやさん
「風魔忍者の存在を知ったときには“こんなに近くに忍者がいるんだ”って。忠義を尽くすというところがとても好きです」

演技未経験の林さんが演じるのは、風魔忍者の敵方の“くノ一”。
見せ場となる風魔忍者との戦いのシーンをどう演じるのかが課題となっています。殺陣の先生からは、敵にきられたことを客席に分かりやすく動きで伝えるよう指導を受けました。

殺陣の先生 米山勇樹さんによる指導
米山さん

きられたら正面を向く。正面を向きながら舞台裏に下がろうとしてはダメ。それは演技に照れがあるから。きられたことを見せるのと、舞台裏に下がるのは別のこと。何かしながら何かしちゃダメ。

林さんは、川崎市の自宅でもほぼ毎日自主練習を行ってきました。この日はショーの1週間前。きられる演技を中心に動きを確かめていました。

練習の合間には忍者の専門書を読みながら演技のイメージを膨らませます。
“芝居を通して忍者の魅力を伝えたい” 本番直前の練習をしながら思いを新たにします。

臨、兵、闘、者、皆、陣、列、在、前…これは、“”というおまじないのようなもので、手の組み方で一文字一文字表せます。最後の“”は相手から見えないようにという意味が込められていて、これが一番好きです。

18人の“忍者”のお披露目 

 小田原城に桜が咲き始めた3月下旬。いよいよお披露目公演となるショーの本番です。

小田原市の会場には多くのお客さんが詰めかけました。
18人が演じるのは、「河越城の戦い」の裏で繰り広げられた忍者たちの活躍を描いた10分の演目です。

出番直前「緊張に全部手順が飛んでしまいそう」と話していた林さんも、無事、任務を果たしました。

ショーを見た子ども

かっこいい。
(忍者になりたい?)うん。

林あやさん
「むちゃくちゃ緊張したと言うのと、今までやってきたものを出し切れたかな。感無量です。見ている人に私も忍者になりたいと思ってもらえればいいなと思います。これからも、伊賀・甲賀だけでなく、風魔も頭に置いてもらえるようになってほしいです」

風魔忍者を多くの人に知ってほしい

忍者ショーは休日を中心にイベントなどに合わせて開催されます。今回舞台デビューした人たちも、今後、月に一度程度練習をしていく予定で、タイミングがあえばショーにも順次出演するということです。

小田原市観光協会
「今回の取り組みはお客さんなどから予想以上の反響がありました。参加した18人を引き続き役者として育てながら、機会があれば新たな参加者も加えて、より大きな取り組みにしていきたいと思います。小田原の風魔忍者をより多くの方に知ってもらい、小田原までショーを見に来て欲しいです」

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